五枚目『そういうもの』
チアカさんが指摘した通り、
肉体が巨大化した影響なのか、それとも地球外知的生命体がたまたま昆虫に似ているだけなのか。
彼等が出現し、僕らから大地を奪って千年経った今も明らかになっていないのだから、僕にわかるわけが無いし、興味もない。
とにかくそんな
空中にその身を
だが知性なら、僕だって持っている。
「…………ギッ……?」
巨大樹に向かって真っ直ぐに突き進んでいた筈のバッタ
が、それだけなら、慣れない土地で道に迷ってしまっただけの事と、二秒も掛からずにまた彼等は走り出していただろう。
しかしそれも、向かうべき前方から別の仲間達がやってきたとなると、話は変わる。
「ギッ……!!」
異変を感じた群れの一匹が後退しようとしてももう遅い。
僕はバッタ
「『
僕は格子状の天井で彼等の頭上に立ちながら、飛んで火に入る金の
これが僕の──『
まるで人類の天敵である
僕の左胸に咲く花は、
だからかは知らないが、僕の能力は念じさえすれば、蝋細工で出来たあらゆる物を咲かす事が出来た。
バッタ
何故、形も色も大きさも思い通りの状態で咲くのか、何故鋼鉄に匹敵する強度を持つのか、そもそも蝋はどうやって生成されているのかを、僕は説明する事が出来ない。
僕だけでなく、
肉体から植物が咲き、その植物に由来した何か特別な力を得ている存在。
そうとしか言いようがない。
──謎が多いという意味では、僕達
「ギッ! ギィッ! ギュィィイイイッ!!」
「……いや、無いな」
頭上で生殺与奪の権利を完全に掌握している僕に向かって、ギィギィと歯が軋むような、耳障りの悪い鳴き声で
中に居る
少し経てば、外傷を負わせる事無く、比較的状態のいい遺体が手に入るだろう。こんな事もあろうかと、酸素欠乏危険作業主任者の資格を持っていて良かった。
「さて、これで道中狩った
是非狩りたい所なのだが、これだけ狩り続けても一向に姿を見せない所を見るに、左右に分かれた部隊の方に居るのかもしれない。
そうだとしたら、負けはしないだろうが、最悪売れる所一つ残さずに消し飛ばしてしまう可能性があるので、そうなったらどの道見つけてないも同然である。
それにもし左右に居ないとなると──
もう一つ、最悪を超える大損害が起きてしまう可能性が、僕の頭の中を過ぎる。
「…………ああ、クソッ」
僕が悪い想像をすると、大体想像通りになってしまう。
もしもの為の保険を用意してあるとはいえ、それを使う状況になってしまうことは極力避けたい。
そんな風に考える内、段々と心配になって、チアカさんが向かったであろう避難所へ、確認を兼ねて向かおうとした──その時。
「──うっぎゃあぁぁあああッ!?!?」
向かおうとしていた巨大樹の方角からこちらに向かって、絹を裂くような悲鳴と、凄まじい破砕音が響いてくる。
恐らくは逃げ遅れた住人だろう。音だけで察するに、
「はぁ……僕以外にも
そんな愚痴をついこぼしてしまいながらも、人として、紳士として
「しかし、バッタ
しかも、気の所為でなければ、今朝アレと似たような悲鳴を聞いたような……。
と、僕が嫌な予感をした時点で、大抵その予感は的中する。
そういう不幸な星のもとに、僕は産まれたのだ。
実際、それを証明するように、大通りを出た僕が目にしたのは──
「あっ、ノブ〜〜〜〜ッ!! ヘル〜〜〜〜プ!!!!」
僕に助けを求めながら、満面の笑みでこちらへ走ってくるチアカさんと、家屋を破壊しながらそれを追い掛ける、バッタ
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