暗黒幻想の国の発見

ユダカソ

とある探検家の手記より

2023年04月23日


私はついに理想の国の手がかりを発見した。


それは今まで「少女の国」と思われていたところだ。


少女の幻想、あるいは嬰児の夢に酷似した理(ことわり)で動く世界なので、少女または「女子児童の国」とも呼ばれていた。


しかし、少女の抱く幻想の中でも残酷、けれども滑稽で悪夢とも地獄とも言い切れない、

だが楽園とは程遠く、絶対的恐怖が存在する世界なのである。


その恐怖は我々が生きる世界で感じられる脅威とはまた違う、想像の外から来るようなものである。


想像の外から来るのだから、想像出来ないものなので、存在しないということになる。


だがそれは我々の生きる世界の道理に当てはめたらの話だ。

それが存在するのが私が求めていた「少女の国」である。


「少女の国」は「幻想の国」とも呼ばれていた。


「ファンタジー」ではなく、ましてや「ファンシー」でもなく、「メルヘン」に近いと言う者もいれば、それもまた全然違うとも言われていた。


しかし私はどうにも幻想だけではない、何か少し足りないものがあると思っていたのだ。


幻想にしても、明るい幻想と暗い幻想がある。

平和な幻想もあれば不穏な幻想もある。


それらを包括して「幻想」であり、「少女の夢(潜在意識)」と言われていたのだ。


何かが足りないと思いつつも、私はそれこそ私の理想の世界なのではないかと、なんとしても「少女の国」に辿り着きたくて、ありとあらゆる資料を探した。


ある時は音楽から手掛かりを探り、ある時は絵画からそれらしきものは無いかと隅々まで眺め、小説や詩の中まで一字一句隈なく探し回った。


映画や漫画、アニメの中にあるのではないかと、それらも鑑賞し、いいところまで近づくことはできた。


だが……なかなかその「入り口」が見つからない。


それがどこにあるのか、誰にもわからないのだ。


石の中か、植物の種子の中か、母の胎内か。

海の底か、地平の果てか、宇宙の終わりか、死後、あるいは生前にしか無いものなのか……。


だが私は諦めなかった。

世界中を探せばどこかにその「少女の国」の入り口があると信じ、そのようなものがあれば調べて回った。


そしてついに見つけたのだ。


それは「少女の国」や「幻想の国」とも近いがもっと薄暗く、柔らかな闇に包まれた「暗黒幻想の国」であった。


ダークファンタジーなどと言う横文字とは違うものである。

ダークよりも暗黒で、ファンタジーよりも幻想に近いのだ。


私が求めていたのはこれだ!

私は直感した。


「暗黒幻想の国」は暗黒と言っても必ずしも薄暗いわけではない。

場所によっては昼よりもずっと明るいところがある。


しかしどこも眠るときに見る夢の世界のような、我々の脳裏を通して映し出されるもの、あるいは脳からでしか観測できない世界なので、どことなく薄暗いのだ。


我々の脳内に存在し、また外側からでないと行くことができない。


それが「暗黒幻想の国」である。


私はこの国に行き着くのをずっと夢見ていたのだ!

その夢が、ついに叶う時が来るとは!


私はこれから夢にまで見た「暗黒幻想の国」に入り込もうと思う。


もしかしたらもう戻って来れないかもしれないので、ここに記録を残しておく。


生きて帰ってこれたら、「暗黒幻想の国」がどんなものであったか報告したいと思う。


それでは。

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