第五話 僕はアンドロイドの君に笑顔を教えたい

「……なぜあいさんは笑顔なのですか?」

「それは、アイと話せたからだよ」

「意味不明です。なぜ私と話すことによって笑顔になれるのですか?」

「えっと、それは〜……」


僕が言葉に詰まっていると、アイはこんな事を言った


「藍さんは面白い人です。」

「面白い!? これが、アイにとっては面白いの!?」

「はい。面白いです。」

「なっなんで!?」

「藍さんは他の人とは違うことで笑っているからです。私は新しいものが大好きですから。」

「そうなんだ……じゃぁ新しい事を教えれば、アイは笑顔を覚えられる?」

「きっと。」

「そっか!」


アイは、少し変わっているかもしれないが、ちゃんとツボがあるようで少し安心した。だって、自信満々に教えると言っていてツボがなかったら教え用がない。


「ところで、今日、藍さんは私に何を教えるのですか?」

「今日は笑顔を教えようと思っているよ。僕が1番好きな感情だからね」

「笑顔とはなんですか?」

「笑顔は、楽しい時に自然と出てくるものじゃないかな?」

「記録しておきます。」

「アイってアンドロイドだとバレた途端に隠す気なくなったよね……」

「藍さんには隠す意味がありませんので」

「ところで、アイは僕のことをいつまでも「さん」づけするつもり?」

「いつまでとは?」

「僕は今、アイのことを呼び捨てにしてるのに、アイは僕のことを呼び捨てじゃないし、ずっと敬語を使っているよね。」

「藍さんは、私に、呼び捨てにして敬語をやめて欲しいのですか?」

「うん。だって、それじゃあ僕たちの仲が悪いみたいじゃない?」

「仲が良いわけでもありません。」

「ひどい!」

「……でしたら、私が仲良くさせて頂けていると自覚を持てたらそうします。」

「そっか! 楽しみにしてるね!」

「笑顔を察知。藍さんは今、幸せですか? 楽しいですか?」

「うーん。楽しいというよりかは、楽しみかな?」

「人間は、楽しみな時にも笑顔になるのですか?」

「そうだよ。遠足が楽しみで眠れない。って話聞いたことない?」

「あります。小学生がよく使用する物だと。」

「そうだね。楽しみすぎると、眠れなくなってしまうんだよ。」

「記録しておきます。」


「ん? お前ら朝はえーな。」

「ああ。おはよう。向井むかいくん」


僕たちは、朝早く来ていた。アイと感情の特訓をするために。

これから毎日、こうやって早く来て、アイに感情を教えると思う。

そうすれば、アイに恋をしちゃいけないことにもっと苦しむかもしれない。

でも、僕は、アイに幸せになってほしいから、アイに笑顔になって欲しいから。

僕は、アイに感情を教えようと思う。

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アンドロイドの君と 落ちこぼれのプリン @purin-ko-hi-

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