第9話世間話

身内は恋人にはなれない、父と子も彼氏と彼女も似てはいけない エミリー・J

・・・・・・・・

帰宅する生徒の中でただ一人こちらを向いて立っている

下手すれば、不審者扱いだろうけど

「こんにちは」

灰色のコートの六綿さんは淡く微笑む

「なんでいるんですか」

「ファミレスでも行きましょう。

、、報告したいことが出来ました」


そこそこ寒い気温の中、家とは正反対の方角

徒歩15分程度

車通りの多い道沿いの歩道をひたすら歩く


突然、前の方を歩いていた六綿さんが

「獅子さん、顔のソレどうしたんですか」

「ん?、、なんですか?車の音で聞こえずらくって」

「顔の絆創膏ですよ」


わざわざ隣に来るなんて

気遣いのできる人だったのか


「ああ、転んでぶつけてしまって。気にしないでください」

「、、そうなんですね。お大事に」


ファミレス、ガーデニア

店舗外

早く帰りたい。

・・・・・・・・


獅子ししさん。ガーデニアはナポリタンが旨いんですよ。

ただ、私はナポリタン派ではないんですけどね」

ふふ。っと白い息で笑う柔和な笑み。


六綿むつわたさん、それに何の意味があるんですか」

私の酷い言いようにも、めげてくれなかった


「誰も擁護する気はないってことで、お願いします」

そう言って六綿さんは不器用に苦笑して見せた

残念だが、詐欺師の笑みに見えてしょうがない。

・・・・・・・・

入店

暖房の効いたオレンジ色を基調とした店内

木の温もりを感じる装飾が印象的。


対応してくれた女の店員さんに六綿さんは<ふたりで>と告げ

できれば広い所お願いできますか?と加える

店員はやや意図を汲んだのか希望の席へ案内してくれた


奥まったファミレスのテーブルと椅子の4つ席


チラリと見えた六綿むつわたの手元

黒いA4の鞄に膨大なファイルの数。きっちりファイル自体の色と

手書きの文字で記してラベルで管理されている


個人情報、、なんだろうか


個人情報そんなのここで広げるんですか?」

「いや、あくまで報告みたいなものだよ

気にしないで、何か一つだけ好きなの頼みなよ」


差し出されたメニューには表紙に堂々と

<ナポリタンスパゲッティー>昔と変わらない味!


とおすすめされている


では、遠慮なく。

「じゃあ、ナポリタン頼みますから」


「獅子さん。あのね、(シャツに)付くと落ちないんだよ」

こっちに飛ばさないで食べられるなら別だけど


「悪かったですね、私昔からナポリタン好きなんですよ」

「、、とにかく麺類はよして、グラタンとかそういうのにしてほしいな」


「じゃあほうれん草とマカロニのグラタン一つ」

「了解」


「一人で食べきれるかい?」

「昔とは違うんで」

敢えて反抗してみたつもりだった


六綿さんはメニューを広げながら答えて

「そ。」

お決まりの反応を示してきた


結局六綿さんはクリーム・ブリュレを一つ頼んだ

カスタードプリンの表面を美味しく炙ってぱりぱり食べるやつ


「で、けっきょく何が言いたいんですか」

グラタンは熱くてすぐに食べられないから暇になった


「エラ《かのじょ》さんは彼氏さんと仲が悪い」

「、、具体的には、どう?」


「男尊女卑これはシミつき。おもに地下繁華街、

アルコールにサイコロ。これはじょう


「そんなトコですか」

「あとは、ドメイン・V《ブイ》これは3。以上」


「よくわかりました、さすが教えるのが旨いですね」

「ほめたって、2品目は出しませんよ」


今の話を翻訳すると


男尊女卑は性格である

女遊びによく行っている

アル中、ギャンブル狂、こちらは常習犯

DVは3回やらかしている、である


「少々長い付き合いをし過ぎたかもしれませんね」

「私が5歳の頃からですもんね」


二人とも

それ以上何も言えなかった


結局、お店を出たのは6時あたりの事になる











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片履きのシンデレラ ヨコスカ @KOUHONE

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