第8話追憶の一番星

学校から春を亡くした冬のように 

灰色の世界の中で、微かに異彩を放つ アルフレット・M

・・・・・・・・

「エラ、お昼、、」

4限が終わりやっとご飯が食べられる。ちょっぴりウキウキして

振り向いた先には、白い百合の花が微笑んでいた

つい、いつもの癖で呼んでいた

・・・・・・・・

食堂前、中庭入り口(通路を挟んで正面の壁)

掲示板にて非公式の新聞が張り出されているのが目に入る


学内新聞:エスペラント(喪中版)

特集☆噂の生徒を追う


仄白 エラ(ほのじろえら)2-2の35番

12/4生まれ 16歳

祖父が偉大なる資産家である。

その割にはSPによる警備は薄い

◎これは、エラ自身の「みんなと仲良くなりたい」

という希望に沿っているためである

その為、

「バレンタインデーは必ず受け取ってくれるし

ホワイトデーにも返してくれる!」

と、男子諸君は歓喜していた。


<文武両道をいかんなく発揮!まさに神童のごとき活躍>

校内では知らぬ者はいない!


品性良好

:A女「この前、道に迷っている人に道を教えていました。

さすが仄白さんだなって」

定期テストの総合の順位は堂々の1位!

:B男「あの人は教えるのもうまくて、自分も仄白さんに数学、教えてもらいました」

体育では特にバレーボールが得意?!

:C先生「何でもできるって良いですよね、、。あの人にスマッシュを撃たせたら

誰もかないませんよ。今年の体育祭は2組が優勝ですね(苦笑い)」


部員コメント

部長:、、などなど、湧き出る噂はどれも華々しく、校内を埋め尽くさん限りの花畑と化していますね

副部長:これほどまで神に愛される人もいませんね。だからこそ、

(しばし間が開く)

部長:うん?どうしましたか副部長。

副部長:、、いえ。惜しい人を亡くしたな、と。

部長:そうですね。


部員一同<心よりお悔やみを申し上げます>20××年12月10日


葬式から1週間が経とうとしていた。

校内におけるエラを失った悲しみは、色あせるどころか更に人々を引き付けている

風の噂によれば、エラは死んだことで神になったとか言い始める人もいるらしい


「バカげてる」

そうとしか言いようがない、こんなのは狂気でしかない

彼女は、ただ一人の人間。それ以下でもない。

以上なんてあってたまるか。


そう思いながら今日を終える。

午後の授業の内容も、今の私の頭には入る余裕なんてなかった。

学校指定のp-コートは黒色か、紺色。


学校から春を亡くした冬のように

アリの巣に帰る惨めなアリたちの下校に先立ち

校門の前では六綿さんが待っていた。



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