6話 わたしは演説する

 あまりの歓声と拍手の大きさに、生きた心地がしないま少し高い檀上に案内される。

ずらーーーっと、何か色んな魔族が、密集しているのが分かる。

赤、黒、茶色、白もいる。

姿、形は、人間っぽいのが多いが気がする。

なんか蛇っぽいのや、ゴツゴツした巨体もいたりする。

集まっている、数は想像を遥かに超えていた、500人ぐらいはいるのだ。


 ここまで飛んで運んできた、あの憎っくきタキシードが壇上の端で、声を張り上げる。

イケメンの魔族だ。


「魔族の同胞たち、我々の魔王が復活した」

「魔王を称える、声援をもう一度しよう」


「魔王!」

「魔王!」

「魔王!」

「魔王!」


それは大声援となり、空間がぼやけるほどの熱気にもなった。

ある程度、声援が続いたのちに、新たにタキシードが声を張り上げる。


「静粛に!」

「魔王様に、我々の歓迎が伝わったと思う」

「さぁ、魔王様からお言葉を頂こう!」


(このタイミングでぇ、言うの? うあぁぁぁーーーーー)

(魔王は、復活したんだね・・・・聞いてねーーー、話を合わせなくちゃ・・・・)

(という事は、は、と同じ存在なんだね)


 すっかりと、部下への挨拶の練習をしていたのに、

頭が真っ白となってしまい言葉がなかなか出てこない。


 あまりにも緊張のせいで、目が回ってくる、

(もうどうにでもなれ!)

意を決して、檀上の上の立派な黒光りした角を持つ、目がクリクリした可愛い羊が、叫ぶ。


「待たせたな」

「我は魔王だ!」

「称えよ」

「怖れよ」

「我に従え」


 口から出まかせ、あれだけ練習したのに、全く違う言葉を話す自分がいる。

(急に復活なんて聞いても、むりぃ)

(何言っているの私・・・・・・ひぃぃぃ・・・・・)

内心はビクビク、ドキドキである。


 その言葉が正解だったらしく。

再度、ごおおおおーーーーと「魔王」コールが続く。

しばし続き、歓声が落ち着きだし、再度叫ぶ。


「復活したが、記憶が曖昧である」

「私の状況を説明出来る者がいたら、説明を求める」


 ザワザワと、魔族たちが騒ぎ出るのを見て、

あれ、何か間違えた?と内心、少し焦る。

そんな中、タキシードが叫ぶ。


「皆の者、魔王様は、復活したてである」

「少しだけ休息が必要となる」

「私から、状況を説明しておくゆえ、安心せよ」

「魔王様は復活されたのだ!」

「皆の者、これにて魔王様の謁見は終了となる」

「解散」


 おおおおおーーー「魔王」コールが再度続く中、

タキシードに、檀上から降りるよう誘導されて、会場を離れて行く。

(助かった・・・・・タキシード、ありがとう)


 タキシードの後に続きながら、話をかけられる。

「実は、前魔王から本を渡すよう言われております」

「マニュアルという物です」

「お城に到着後にお渡ししたかったのですが、お渡しするタイミングがありませんでした」

「こちらを読んで頂くと、分からない事すべてが解決するかと思います」


 そう伝えられ、表紙にカタカナで「㊙魔王マニュアル本1」というタイトルで

書かれたぶ厚い本を渡される。


 ?????????

マニュアルって、どういう事、それも日本語。

1ということは・・・・・続きがあるの?

もう何冊あっても良い、読むよ。

前魔王も日本人だったの?

読みたい、何が書いてあるの!

私の為に用意してくれたの・・・・・


「ちなみにマニュアルは5巻」までございます。

この厚さで5巻あるということは、読むのに時間がかかる。

私は、ほとんど本は読まない方だからだ。

けれど、なるべく早く読んで、今の現状とどうすればいいかを知りたいと

強く思うのである。


 驚きと感激と嬉しさで、何とも言えない感情となり

涙が自然とあふれてくる。

「うぇうぇぇーー、ぅぅぅ・・・」


 タキシードが、前面に立ち、ハンカチで私の顔で涙を拭いてくれる。

「お困りごとは、私にお伝えください」

「私は、魔王様の為に存在しております」

とても優しい表情と声色で語りかけられる。


 そんな優しい言葉を聞くと、余計に涙が出てくる。

もうそんな言葉は、止めてくれと思いながら、しばし涙を拭かれる。

涙も落ち着き、私がタキシードに話かける。


「タキシード・・・・いや違った貴方の事は何と呼べばいい?」

「魔王様、ベルナルドとお呼び下さい」

異世界に来て、初めて魔族の名前を知った、ベルナルド・・・良い名前だ。


「ベルナルド、何か用があればすぐさま、呼んでくれ」

「分かりました、魔王様」


「まずは残りのマニュアル本をお持ちいたします」

「私どもは、一切そちらの本の文字は読めません」


(まぁ日本語だからねぇ・・・・と思ったが、

もし日本語じゃなくて、ポルトガル語とかスペイン語だったら

私・・・・・読めないよね?)

(運が良かったのかなぁ?)

この疑問は、マニュアルを読んですぐ納得する運びとなる。


 そう会話をしている中、私は、先ほどの私専用の部屋まで案内されて

入っていった。
















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可愛い羊(魔王)の愉快な日々 KG(ケージー) @kumekumekume

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