目が、覚めた。

 おかしな話だ。食われて死んだはず。

 ここは。

 とこだ。

 わからん。

 謎に小綺麗なベッド。しましまのタイル。透明なテーブル。大きめの窓。やさしい色の壁紙。


「がおー」


「うわっ」


 後ろ。

 リオーネ。


「起きた?」


「どこここ」


「ここここ。私の部屋」


 彼女が、軽い身のこなしでベッドから降りる。しましまのタイル。もこっと沈んだので、軟らかい材質らしい。


「はい。起きました。合ってたらしいです。はい」


 通信。


「殺したのか?」


「うん。わたしが致命傷与えて、後の処理は後続に。でかかったよ」


 あれを。殺せたのか。


「よわってたし。あなたがほぼほぼ削ってたみたい」


「そうか」


 それにしても。


「組織に入ったんだな」


「街中でスカウトされました」


 なぜかモデルポーズ。組織は芸能事務所じゃないから。


「起きてよかった」


 彼女の面影。自分が知っている頃の彼女では、ない。組織に染まり、殺し合いに染まり、生きる張り合いを失った者の目だった。


「ごめんね。あのころのわたしじゃ、なくなっちゃった」


「顔に出てたか」


「うん」


 そうか。寝ている間に気が緩んだらしい。


「うれしいよ。わたしのベッドの中だと安心できてるってことでしょ」


「感情を食われて気が緩んでるだけだよ」


 本当にそうか?


 違うかもしれない。


「いや」


 どうしようか。言葉にするべきではあるかもしれない。


「今のほうが好みだ」


「なにが?」


「おまえが」


「そう。それはよかった」


 平静を装う彼女。耳が真っ赤になってる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

リオーネ 春嵐 @aiot3110

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る