第5話

 彼がいなくなって、私の人生からは新鮮さが消えた。


 色々とどうでもよくなり、街を歩いて彼の真似事をしたりしていた。こうやって殺していたっけ。それとも、こんな感じか。顔を出していると、人ではないものはたくさん湧いて出てきたから、殺す量には困らなかった。


 どの化け物だ。どの化け物が、彼を殺した。出てこい。出てこい。わたしが殺してやる。そうぼんやりと考えながら、人ではないぐちゃぐちゃしたものを、実際にぐちゃぐちゃにしていく。


 よく分からない組織から捕捉された。

 彼が所属していた組織らしい。組織が知りうる限りの彼の情報と引き換えに、組織に入った。

 やることは変わらなかった。日夜、人ではないものを殺し続ける。新鮮さの失われた日々。


 彼は、まだ死んでいないらしい。息をしていなかったけど。血は流れていなかった。人ではないものは、人の感情を食う。彼は、感情を食われたために動かなくなったという説明。彼の感情は大きすぎるため、消化されるまで存在し続ける。だからまだ死んでない。そんな感じ。


 じゃあ、わたしが助ける。


 その、彼の感情を食っているやつを。殺す。それでいい。

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