第11話 地球での48時間
僕はイルが言ったように“逃げて来た”。そうだよ。僕は単に逃げてきたんだ。僕は主人公なんかじゃない。普通。普通の大学生だ。ここはMAじゃない。王子なんかじゃない。地球だー。ベアタが「ジョン、さっきから何をぶつぶつ独り言を言っているの」「わーっ」僕は思わず声を出した。そうだ。ベアタがベアタが、ついてきたんだ。いやでもMAを思い出してしまう。僕はブルブル頭を横に振った。いや、ここは地球だ。時空空間が違う。ベアタが「ねえ、ジョン、ここがジョンが今いる星?」そうだベアタは、時空空間移動を知らない。僕は、イルとの7・7出会ってからのいきさつを説明した。「ジョン、すごいじゃない?なんか、かっこいいよね。」ベアタは、軽く言った。このノリは、地球の女子と変わらない。まあ、1人暮しだし、ベアタのことも、まあ、なんとかなるか。僕はMAの記憶も残しつつ、いつもの深く考えない“まあ、いいか”でやり過ごしすことに決めた。それにマンガの主人公がいつもいつも、正しいとは、限らない。僕は主人公じゃない。僕は、頭を切り返した。大学も一週間もすれば夏休みになる。タイミングはいい。明日は土曜日、授業もない。「ベアタ、おなか空かない?」「そうね。おなかすいた。」「じゃ、バーガーでも行く?」「バーガー?」「駅前にあるんだ。行こう」ベアタはうれしいそうに「行く。行く。」ほんとうに地球の女子と同じだ。僕らは歩いて駅前へ向かった。駅までの道、近くに大学がありせいか、すれ違う学生も多い。ベアタの洋服は、演劇部の仮衣装のようだ。少し浮いているが、学生が多い町だ。違和感はない。駅前の短い道のりベアタはキョロキョロ。「ジョン、あれは?」コンビニを指差してベアタがたずねる。「あーあれはコンビニ」「コンビニ?」「学生や大人、いろんな人達が、灯りのお店の中に吸い込まれて行ってるよ。何屋さん?」そうかベアタは、コンビニを知らない。「ベアタ、コンビニに行く?」「行く。」僕らは横断歩道を渡りコンビニへ自動ドアが開く。ベアタが「キャッ」驚いたようで「ジョン、これは魔法?」「魔法じゃないよ。センサー。人の電磁波に反応して開くんだよ。」大事なことをベアタに伝え忘れていた。地球には魔法は存在しない。「ベアタ?」横にベアタがいない。?コンビニのお菓子の棚の前で目をキラキラさせてお菓子を眺めて食べだしているベアタを見つけた。「ベアタ、ダメだよ。お金を払ってから食べようね。」僕は店員さんを見ながらベアタの手を引いてレジへ向かった。ベアタの反対の手からチョコの紙を取ってバーコードを見せながら「ごめんなさい。彼女とてもお腹が空いていたようで。先に食べちゃったみたいで。」店員さんは、口では「大丈夫ですよ」っと言いながら目は、明らかにひきつっていた。僕らは急ぎコンビニを出た。僕は地球の事をなにひとつ教えず、外に出て来てしまった。これも僕の悪い癖だ。“聞くより慣れろ。実践あるのみ。“ベアタは悪くない。僕も悪くない。「ベアタ、次はバーガーだ。おいしいぞー。」「ジョン、おなかすいたよー。」「そうだな。いくぞ。」駅前のファーストフード店に着いた。ベアタは、ここでも初めての食べ物なのに地球の女子学生と変わらず、ポテトにコーラーそしてバーガーをおいしそうに完食。「ジョン、地球のバーガー最高-!私、大好きかも。」「ベアタそれは、よかった。気に入ってもらって。」「ねえ、ジョン、いつまで地球にいるの?私は、このままずっーと地球でもいいんだけどね。でも、ジョン、MAの王子なんでしょう?地球にいて、大丈夫?」「たぶん大丈夫。たぶん。ベアタ、僕はMAの王子だけど時空空間が違う今、ここで王子の実感はないんだ。責任感がないと責められるかもしれないが、今は何も考えたくないんだ。」「正直でいいんじゃない。私も自分のことしか考えられない。余裕はないかな。時々、ママはこういうの人には優しく。自分には厳しくね。あんまりぴんと来なくて他人にやさしく自分にも優しくの方がよくない?」「そうだね。僕も自分には甘い。あえて茨の路を選ばなくてもいいと思うよ。」「だよねー。」ベアタの反応がますます地球人ぽくなる。これでいいんだ。なるようになって流れにのって。ポテトを口にくわえ「モグモグ」僕は急にこんなところで「あーあ。」あくびがでる。目の前のベアタの顔を薄れていき、急に眠気が。音が遠のく。「イル。ジョンは寝た様ね。」「そうだ。ベアタうまくいった。ジョンを確保できた。ベアタ、君は元居た世界MAに戻る?それともこのまま地球の今。この時に転生してもいいよ。僕は時間空間すべてを操ることができる。どうする?」ベアタは少し考えて、地球も珍しいものがあるから、このままいたい気がするけど、”やっぱり帰るわ。”「そう。じゃ目を閉じて。ベアタ、魔道具店の君のパパにもヨロシクね。」「わかったじゃバイバイ、イル。」「あー」ベアタはMAに戻った。「さて、ジョンをどうするかな?」イルは、少し考えた。7・7天の川の僕の元にジョンからの電磁波が届いた。僕も気まぐれで地球に来たけどジョンは、地球人じゃなくて、その昔、時間と空間が違うMAでも僕を呼んだ。ジョン、君はファーストフード店のテーブルで寝ている。僕は君をどの時代に戻した方がいいのだろうか?君の正義感のためMAでさらわれそうなナシル姫を救い、ヒーローになるか。このまま地球でグタグタの普通の大学生をさせるか?君の人生だ。僕は、どうするつもりもない。ジョン、君が目を開けたところが君が願う場所だ。気になることもあるが悪いがジョン、僕は次の依頼人のところへ行くよ。僕が必要ならまた電磁波を飛ばして呼んでくれ。それに7・7日も過ぎたしね。じゃ、また。ジョン。」僕は、ざわざわと川のせせらぎの音で目を覚ました。記憶が曖昧だ。「ぼくは?ここはどこだ?」地球での記憶が薄くなっていく。遠くでベアタが呼んでいる。「ジョン、パパが聖剣
できたって呼んでいるよ。」「ありがとう。」
どうやら僕はヒーローの路を選んだようだ。
・・・君の未来がhappyでありますように。MAの王子ジョンより。
7・7星 時空空間 京極 道真 @mmmmm11111
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