第39話 異世界の結婚とはなんぞや? 異文化理解って難しいです。
どうも、異世界に転移して魔法少女村の村長をやっています、渡鉄心と申します。
いや、異世界って、何が起きるか、予想できないってマジだからね。
この村にふたりの魔法少女と、ひとりの魔法おばさんが誕生してしまいました。魔法おばさんの方は、水やりがちょっとできる、という程度ではあるんだけど。
その水やりの威力がすごいからなぁ。作物がめっちゃ育ちます。なんだろう? 豊穣の女神って感じになるのかもしれません。魔法おばさんな豊穣の女神が爆誕……。
そして、魔法少女の方は……いろいろと、規格外な感じがします……。これはヤバいかもしれない……。
冬の前に、たぶん、食べ物を求めて、やってきたんですよ、いつものクマさんが。しかも、親子っぽいのが3匹も。子どもっていってもデカイんだけど。
それで、村人は防壁の中に籠って、防壁の上から撃退するって話になって。
……僕が倒そうとしたんだけど、ダメだって言われた。それだと、いつまで経っても、この村で安心して暮らせないから、とのこと。自分たちでなんとかしたいってサイゼラさんが言い出して、ですね。
まあ、最終的に、どうにもならなくなったら、僕とリコの出番、ということで。とりあえず挑戦してもらうことにしたワケで。
とにかく、まずは防壁です。これ、すごいね。さすがサイゼラさんがこだわってつくっただけはある。
クマさんが立ちあがっても、一番上まで全然手が届かない。うん、大事だね。そしてクマさんが暴れても崩れない。うん、最高ですね。村人たちの安心した顔が、ある意味では一番びっくりだったかも。
で、村人たちが一方的に攻めるワケですよ。投石とかで。男の子は弓矢も使ってたけど、大人に途中でやめさせられてた。それは矢がもったいないからって理由で。納得しかない。
みんなの投石は、クマさんも嫌がるんだけど、撃退まではできない。まあ、ただの石だもんな……攻撃力が低い……。
「えいっ」
そんな中、魔法おばさんが水をクマさんの顔面に浴びせたんですよ。「えいっ」って、おばさんなのになんかかわいいですよね。ほんと、何が呪文になるか、分からない世界だ、ここ。「えいっ」って。
で、その水が、なんていうか、ものすごくクマさんが嫌がって……たぶん、目つぶし的な効果かな? 顔にかかってたし。
むしろ、投石よりもクマさんを大きく後退させたんですよ。
そしたら、それを真似して――。
「ぐるぐるー、とんがりー」
「ぐるとんがりーっ」
――ミミとイーマの、ふたりの魔法少女が、『螺旋の貫き』を放ってしまったんですよね。
まあ、狙いがクマさんの顔面だったので……。
頭を見事に貫いてしまって、一番高く売れる頭部が売り物にはならなくなってしまったんですけど……。
魔法少女ふたりで、クマさんを1匹、倒しちゃいました。
確か、キッチョムさんたちによると、トップクラスの開拓者が10人くらいで戦うって話だったような記憶があるけど……? あ、一応、ここの村人総出で戦ってはいたのか……。
あれを見た村人の男衆は呆然としてましたね……。
残りの2匹は、そのあとなんか猛ダッシュで逃げていきました。
この村に新たな「クマ殺し」が誕生した瞬間でしたね。とってもかわいい「クマ殺し」ですけど。
あと、村人の男衆の、ミミとイーマを見る目が引きつってましたし。
これでもう、このふたりにえちえちなイタズラしようなんて、考えないのでは?
ま、そもそも、そんなロリコンがこの開拓村に存在していたのかどうか、分かりませんけどね? 僕は違いますよ? 絶対に?
ま、冬眠のための食い溜めをしようとしたクマさんが、逆に僕たちの冬の食料になってくれたってことで。ありがたや、ありがたや。
そんなこんなで冬が始まってしまった。
一日一日、着実に寒さは増していて、さつまいもの芋づるがしなしなになっていくのが分かるという。もちろん、じゃがいものくきとか葉も弱々しい感じになっていって……でも、ハクサイは意外と元気かもしれない。不思議だ。
枝豆なんかも、一部だけ、次の種用に残して、残りは全部収穫していく……。日本から持ち込んだのに、魔法の水やりでよく育ってしまって、オバケ枝豆に。枝豆、だいたい1.5倍くらいのサイズで、とにかくでかいんですよ……。
まあ、いも類とハクサイで、冬を越せるだけの食料は足りそうだというサイゼラさんの判断があったし。
でも、さつまいもの方は、サイゼラさんが酒にしたいから許可がほしいって言い出して……。マジか……。
「これって、お酒になりますか?」
……日本でも芋焼酎とか、あるのは、あるんだけど?
「いや、だいたい、甘みがあるモンは、酒になるって」
「そういうものですか?」
僕は首をかしげた。マジで? 適当すぎないかな?
「そもそも、こっちとしては酒がないのはそろそろキツい。酒があれば、村人もここに居つくぜ、たぶん?」
「あれ? サイゼラさんたちは、1年契約ですよね? 奴隷じゃないし?」
奴隷の人たち以外は、契約が終われば帰るんじゃないのかな……?
「いや、1年契約だが、1年が過ぎても、この村に残るぜ?」
「え? そりゃ、助かりますけど……お金はもう出せませんよ?」
そんな金はない。うん。無理。
「いやいや、金とかどうでもいいって! ここだと食い物には困らねぇし、しかもうまい。塩もたっぷりと手に入る。あとは女だが……テッシンさまからもらえる予定の金で、嫁さんでも買えばいいだろ?」
……ええと? 嫁さんを買う、と?
お嫁さんって、お金で買うものなんだ……。ていうか、売ってんの、それ?
「お嫁さんって、あの町に売ってるんですか?」
「いや、売ってるだろ、奴隷」
……奴隷を買って、お嫁さんにする?
あ、つまり、今とは違って、自分専用の娼婦状態ってこと……?
まさか営業させて金を取るとか、しないよな? 自分のお嫁さんを?
え? どうなの? そこまでやっちゃうの? いや、奴隷との契約内容によっては、夫なのに1回いくら、みたいな可能性もあるのか……?
このへんの文化がよく分からない……。異世界すぎる……。マジか……。
「こっちも、頼む……」
鍛冶師のナラさんもそう言い出した。
……つまり、ナラさんもお嫁さんを買う、と?
「ナラさんも、この開拓村に住むってことですか?」
「ああ、そのつもりだ」
職人さんたちが残ってくれるのはありがたいから、スローライフが進展したと考えるべきか、それともまたひとつ、僕がこの異世界に染まったと考えるべきか……。
苗場くん……こっちでは結婚って、買い物みたいに行われるらしいよ?
異文化理解って、難しいですねー(棒)。
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