第35話 掘って、掘って、掘る。……大地を、です。変なものは掘りません。我慢の限界だったとしても。(1)



「……さま呼び、なれないよねー」


「そうだね、ホントに」


 ピロートークで僕とリコ……すみません、嘘です。ピローではなく、ただのトークでした。


 あ、いえ、ベッド、のようなものの上で、夜、暗い中で話しているのは間違いないんですけどね。ただ、ピロー、ではないトークです。アレはしてませんから。ピローになれないトークです。残念すぎる……。


 実際のところ、リコも僕も、寝床が一緒ということについては、すっかり慣れてしまっているので、夜、寝る前の会話は完全に二人きりで、僕としては楽しんでいます。


 ……それは恋人というよりも、もはや『ソフレ』なのでは? だと?


 当然、僕自身も、そのように感じております。


 ええ、そうですとも。


 現在、僕とリコの経験回数は1回。1回だけ。1回のみ。1回、しか! 1回、だと!?


 そして、毎晩、むにゃむにゃに至ることなく、同じ寝床で並んで寝ているワケなんですよね。まさに添い寝。添い寝フレンド。ソフレ。


 いや、恋人だから添い寝恋人か。


 ……まあ、言い訳ですけど。全部、言い訳ですよね。はい。


 正直なところ、妊娠は怖いんですよね。出産は命懸けって言うじゃないですか。それをリコにさせるのかって、話なんですよね。


 だったら、妊娠しないようにすればいい、と思うでしょう?


 でもですよ?


 初めての時にですよ? その、痛いのを我慢しているリコの中に入った途端、暴発事件を起こした僕としては、ですね。まあ、なんというか、その、まさにアレですよ、いわゆるひとつの、そう、ロウ! というやつなワケでして。


 暴発なしで達成できる自信なんて皆無ですよ!? 1回しかしたことないのに! 自家発電とは全然違うんですから! ガチでびっくりするくらい気持ちいいから! だからこのままだと事故発生なワケですよ!? いや、そりゃリコとの間に子どもができるのは事故ではなくて幸福だとは思います。でも、それにリコの命を懸けるワケなので……。


 したくないんじゃないんです。


 いわゆる性春期の男子としてはですね、したいワケですよ。もちろん。


 はっきり言いましょう。


 したくてしたくてたまらないんです。それはもう、ものすごく。


 そして、ですよ?


 毎晩、こうして、添い寝状態にあることで、ですね。


 まあ、なんとういか、その、自家発電もできない状態なワケでして。


 したくてしたくてたまらないのに、めちゃくちゃタマってるという、ですね。


 もう、シャレにならない状態なんです。わかります?


 いや、ホント、どうしよう。


 2回目の誘い方とか、入り方とか、そういうのもわかんないってのもありますし、暴発しないようにどうすればいいのかわかんないってのもありますし、悩みは尽きないんですよ、僕も。


 特に今日は、なんとなく、辛いんです。はい。


 実は夕食時に、奴隷ではなく村人男子のみなさんがですね、まあ、3人ほど増えたことで、その、とある順番を決めてまして。


 奴隷お母さんたちは、一晩二人の相手をするという契約なので……その、順番っていうのは、まあ、そういうことです。あけすけにそういう話をしてくれるなよ、とは思うんですけどね。


 いや、もちろんそれはリコにも聞こえてて、顔を真っ赤にしていたのはめちゃくちゃ可愛かったんですけどね!


 聞こえてくる話でいろいろと想像してしまうじゃないですか! しかもタマってるというのに! これはもう翌朝の暴発事案ですよ! 夢の中で! 自家発電できないからそれでいいんだけど……。






 ……というワケで、朝はリコが起きる前に泉でこっそり下着を洗って、全力で絞ってから戻るという、まあ、僕にとってはある意味で朝のルーティーンですね。これが平常運転です。


 とりあえず、今日から開拓村建設開始!


 女性と子どもはリコと一緒に実験畑で、落ちたイチゴからの種とりです。いや、正直なところ、水魔法を使ったあの生い茂った状態は、このまま放置してもずっとそこにイチゴがあり続けるような気はしないでもないですけど。


 リコが一緒なのは、『直感』で逃げるため、ですね。必要なこと。


 ……リコたちが食べすぎないかどうか、ちょっとだけ心配。ま、ほどほどにね。


 僕たち男組は、力仕事。当然ですね。


 まずは石造りの鍛冶場を建てるということで、半分以上がそっちへ。もちろん、土木建築職人のサイゼラさんと鍛冶職人のナラさんはそっち。


 サイゼラさんの弟子は製材作業です。丸太を板材にしていくというやつ。


 僕は、穴掘り、ですね。正確には、溝掘り、かもしれません。


 まずは下水道なんです。


 第一防壁は空堀付きと決まり、第二防壁には水堀もありで。完成すればいわゆる環濠集落に近い状態へ。


 おそらく背後の山々で吸収された雨などが溢れ出ていると考えられるここの泉。その泉から流れ出る小川。ここがこの開拓村の命綱。それを守る。


 だから、泉も含んで、僕とリコの家、食堂、娼館が第一防壁の中、の予定です。畑なんかもスペースは確保しています。第一防壁内と鍛冶場は冬までに完成させておきたい。


 鍛冶場やその他のみなさんの家なんかは、第一防壁の外で、第二防壁の中、の予定。ちなみに娼館は、いずれ第二防壁内に建てて、第一防壁内の娼館は迎賓館みたいなやつにする予定です。その用途変更ってどうなんでしょうかね……。


 ……まあ、今はあくまでも防壁予定箇所、でしかないけど。





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