突然の クラス転移に 物申す 神様お願い ちょっと戻して ~準備のいい僕と、カンのいいあの子の、ちょいラブ異世界生活~
第11話 王城での研修期間は自己鍛錬の時間だと思いますが、え? なんで? メイドと?(2)
第11話 王城での研修期間は自己鍛錬の時間だと思いますが、え? なんで? メイドと?(2)
あとは王城内の部屋とか、食事の回数は朝夕の2回だとか、研修期間中には週に1日の休息日だとか、研修期間は王城の外へは出ないだとか、細かいこともいろいろと決まった。そして、王様に内々に謁見して、それからグループごとに割り当てられた部屋へと移動した。王様の存在、なんか軽くないかな?
あと、元の世界の教室だとカーストトップだった陽キャグループが全然ダメな感じなのがおもしろい。
ラノベとかだと、勇者になるのってイケメンだったりするけど、実際にはオタの方が頑張るとか、まあ、そういうものなのかも。すごいぞ異世界クラス転移オタ。
僕たちの部屋は男子3人、女子4人。もちろん、爛れた生活をするつもりはないので、当然のマナーを守っていく。
あの優しい佐々木さんや野間さんに汚物を見るような目で見られたら軽く死ねる。
王城暮らしで最初にみんなが戸惑ったのは、トイレ。
「と、トイレが……トイレが……」
とか言いながら、泣きそうな顔でみんなのところに姿を見せた陽キャ女子によって、異世界トイレのすごさが伝わった。
なんと、まず、個室ではなかった。
しかも、横に水が流されてる溝の上に石で小さな橋をかけて、その橋の上に足を置くようになってて、足場が5人分ぐらい横並びにあるけど、足場と足場の間には壁も衝立も、何もない。お隣が丸見え。
しかも、お隣が出した一品が横から流れていくというお笑い仕様。いや、文化の違いだけど。
トイレットペーパーはなくて、おしりを拭くための布がある。
杉村さんが僕たち転移者のトイレルールを作って、誰かがトイレに行く時は、入口に同性が2人以上で見張りに立つことに決まった。
あと、おしり用の布は各個人で専用の物を用意してもらった。洗って干して個人専用を使い回し。
そりゃ、その程度の対策もしないってんなら、疫病にもなるか。怖いな、中世社会。
でも、中世段階の社会で、一応は水洗便所なんだから、すごいよね?
お風呂を希望したら、なんか猫みたいな足がついた湯舟が部屋まで運ばれてきて、そこにお湯を入れて、その中に入るとメイドさんがいろいろと洗ってくれるという、お嬢様仕様。
もちろん、女性陣が入浴する場合は、僕たちは部屋の外、廊下で待機。
ちなみに、僕たちがお風呂を利用する時、遠慮しても遠慮しても、メイドさんたちがどうしても洗うというので、仕方なく洗って頂いたんだけど、佐々木さんや野間さん、もちろん杉村さんからも、冷たい視線を頂きました。うう、軽く死ねる……。
メイドさんたちがあまりに大変そうだったので、お風呂は3日に一度、という僕たちルールを杉村さんが決めた。
ブーイングは陽キャ女子グループから出てたけど、あの子たちはこのルール、守ってなかったし、まあ、関係ないか。
最初の訓練で、何人かの男子が、落ちてた石を握って、力を入れて2つに割ってた。たぶん、『身体強化』スキル持ちだと思う。
僕も、こっそり、バレないように試してみたところ、2つに割れるどころか、まるで砂のように粉々になってしまった。
それ以降、僕の訓練はどれだけ手加減をするか。
つまり、『身体強化』スキルをどれだけ自在にコントロールできるか、というところに焦点を当てることになった。
常時発動のパッシブスキルではないのが救いだったかも。
剣道部の山中くんとか、オタなのに中学までは剣道をやってたという宮本くんは、剣の訓練で、新人騎士たちと互角以上に打ち合って、降参させてた。
あれは絶対、剣術とかのスキルがあるはず。スキルってすごいな。
ちなみに僕は『身体強化』でなんとなく、相手に合わせて戦うことができた。とにかく力業だけど、戦闘力は剣術とかのスキルがなくても十分だと思う。逆に、力をどれだけ抑えるのかが難しいくらいだ。
他の『身体強化』持ちだと思われる石割の男子たちも、新人騎士を相手に力業でなんとか戦えるみたいだった。やっぱり『身体強化』は汎用性が高いスキルだった。
魔法の訓練は、魔法部隊の隊長の魔法使いさんの説明や実演をしっかり聞いたり見たりして、いつか自分でも使えるように、イメージを高めた。
もちろん、クラスメイトのみんなが魔法を使う姿も穴があきそうなくらい見学した。
そして、夜のトイレでこっそり、僕は指から火を出すことに成功した。
やっぱり、適性があれば、スキルがなくてもできるんだと証明できた。でも、使えることは隠し通す。
でも、『火魔法』だけじゃなくて、『雷魔法』と『水魔法』も意識してこっそり訓練しておく。
特に『水魔法』は、飲み水の確保につながるから、ある意味では生命線でもある。『雷魔法』については、訓練で見る限り、クラスメイトの誰一人として使えなかった。持ち主が隠してない限りは。
ありがたいレアスキルなので、こっちも隠し続けたいと思います。
3つのスキルに頼るだけじゃなくて、自分を伸ばそうと努力すれば、たぶん、この異世界なら……。
いや、そもそも僕はひとつしかスキルがないけどね。『身体強化』だけ。
寝る前の筋トレと朝のランニングは、こっちでも継続して実施した。
僕が、こっちに来る前からの日課だからと説明したら、由良くんが「おれたちも、やった方がいいだろう」と言って、同じ部屋のメンバーは、ぼっち女子の高橋さんも含めて、みんな、筋トレとランニングに参加した。
もちろん、筋トレの回数とか、ランニングの距離とかは個人差があったけど、一緒に頑張ることで、部屋のメンバーの一体感みたいなものが高まったと思う。
僕の筋トレ回数が各50回ということに、佐々木さんと野間さんがすごくびっくりしていたことが、ちょっと嬉しかった。
少しくらいは男らしいと思ってもらえたかな、と。
ちなみに高橋さんは最初、腕立てが1回もできなかった。ぷるぷるしながら腕を曲げようとしてそのままパタンと倒れる。
そういう女子って、ちょっとかわいいよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます