第7話 神様が相手だと、なぜだか気楽に話ができるのは、自分でも不思議。(2)
ちらりとイケメン神様に言われた、スキルの表示を見る。
まるでプロジェクターによって映写されているような感じで、僕の目の前に、横長の長方形の枠があって、そこに、9個のスキルが示されている。
雷魔法、火魔法、水魔法、身体強化、情報収集、体術、料理、説得、仮病、か。
魔法関係が3つ、先にあるのは、レアスキルだからか?
あと、料理はまだしも、説得と仮病ってなんだこれ? なんか、最近、頑張ってたことと、関係がありそうなものなのか?
いや、説得を頑張った覚えは……まさか、佐々木さんや野間さんとのメッセ交換が説得なのか?
それにしても仮病スキルって何? 役に立つの?
ネタスキルでウケを狙えと? 確かに最近仮病はよく使ったけど!
「もっと、たくさんのスキルから選ぶようなイメージでしたけど、9つですか」
「ああ、それは、本人の適性によって、そうなっています」
……人によって、選択肢が違うのか。え? 本人の適性? この9つが? これが僕の適性ってこと? 魔法とかもあるのに?
そうだとすると、レアだと言われた魔法スキルが3つ、最初にあるのは、まるでそこへと誘導されてるような気がする。
魔法スキルが地雷パターンか? それとも……。
「……魔法の希少価値は、ひょっとして、僕たちみたいな転移者しか使えないから、なんでしょうか?」
「鋭いですね。正解とも言えますし、そうでないとも言えます。魔法スキルを得た転移者の子には、魔法が使える者も誕生しています。確率は高くない上に、転移者よりも魔法の威力が落ちますが」
……それ、種馬ルートの地雷スキルじゃん。
いや、それでもいいから童貞を捨てたいとか、ヤりまくれるならラッキーとか、考える人もいるかもだけど!
それでも確かに魔法は魅力的ではある。
ラノベ読者、みんなの憧れ魔法無双。
特に、一番にある雷魔法は強力そうな感じがビンビンしてる。エレクトリカルサンダーボルトーーっっ、とか、ライジングインパクトーっっ、とか、叫んでみたい。
でも、間違いなく、魔法スキルがあるとわかれば、呼び出した王国に取り込まれる形で生きていくことになる。しかも、戦力扱いで戦場行き。戦後は種馬人生か。
「……呼び出した理由は、魔王や魔物を倒せとか、もしくは戦争、ですか?」
「後者が正解ですが、一部、前者も含まれますね」
……人殺しの覚悟を決めとかないと、こっちが死ぬパターンだ、これ。いや、中世ならそれは当たり前か。下剋上の弱肉強食なんだから。
転移後、どうにかしないと、いろいろ、難しい問題があるかも。隷属系のアイテムとかあったら怖い。
「……召喚先の国で、支配する首輪とかで、無理矢理戦場へ行かされるとか、そういう感じですかね?」
「いいえ。そういう道具が開発できるような、魔法的なことはリーデスガルドではあまり発展しておりません。古くから残されてきた勇者召喚の魔法陣くらいでしょうか。その魔法陣も、偶然、別の世界から渡ってきたものでしかないです」
「奴隷とか、いない感じですか?」
「奴隷はいますが、魔法による強制などではなく、まあ、焼き印とか、鎖とか、後は契約です」
うーん。強制が、絶対に逆らえない魔法的な、呪術的なタイプじゃないなら、魔法スキルもありか。魔法スキル持ちなら、戦場へ行かされるのは確定だけど、たぶん後方で、盾役に守られて動くことになるだろうし。
戦闘系スキルゼロで完全に後方支援? 料理で? ありと言えばありだけど。
情報収集だと後方とは限らない気がする。逆に敵陣とか敵国への潜入まである。
そもそも弱肉強食の中世社会で、弱さはイコールで死、だろうから。
どうしたもんか……。
シンプルにいくなら、これしかないとは思うけど……。
「あの、神様。この中から、3つ、選べるんですよね?」
「ええ、そうですよ」
「なら、この中のひとつを、3つ、ください、というのも、あり、ですよね? それも、この中から、3つという条件には、当てはまりますし」
「はい?」
「この中のひとつのスキルを、3つ分、重ねてもらえますよね?」
「……あなたは、なかなか、おもしろい考え方をなさいますね。このようにたくさん質問をなさったのも、私が担当した中では、あなたぐらいです」
「それで、できますか?」
「……確かに、条件を外してはいませんが」
「なら、『身体強化』を3つ、重ね掛けでください」
「『身体強化』か……2倍を3つで8倍……まあ、問題はない範囲に収まりそうですね。では、あなたの能力は『身体強化』、それを3つ、重ね掛けするということで」
「ありがとうございます」
脳筋的思考かもしれないけど、何が起きても力で解決というのは、弱肉強食の暴力社会なはずの中世なら、絶対的な解決策になり得る。
「では、転移します。元の世界でそのまま生きられなかったあなたに、どうか、幸せがありますように」
そうして、神様が手をかざすと、僕はどんどん、光に包まれていき……。
「あれ? 『身体強化』って2倍じゃなくて5倍なの? え? ということは、ひょっとして重ね掛けだと……」
最後の慌てた神様の言葉は、光に包まれた僕の耳には届かなかった。
この後、天界において、二柱の神様が処罰を受けたかどうかは、神ならぬ人の身にある僕には知る由もない。
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