4000字を極めたい

●死のナンバー


 4000字! この文字数制限に何度苦しめられてきたことか!


 KACの文字数制限も4000字なら、書き出し祭りの文字数制限も4000字!


 400字詰め原稿用紙×10枚分と考えるときりがいい数字なんでしょうけど、どうにもこの文字数にふさわしい話を考えるのが苦手で困ります。


 2000字くらいならコントロールが効くんですけど、これが4000字となるといけません。「これなら4000字で収まるはずだ!」という着想を得ても、プロットの段階では「たぶん4000字以内に収まるはずだ……」と弱気になり、初稿を書き終えるころには「いや、4000字に収まるわけねえだろ!」と逆ギレするのが常です。


 4000字前後って、意外と参考になる作例が少ないんですよね。自作でも他作でも。これはわたしの嗜好と守備範囲の問題だとは思うのですけど。


 4000字を極めたいです。そういう趣旨で短編集を新たに立ち上げようと企んだこともあるくらいです。


 長編を書く、という話はどこに行ったのかって? いやいや、短編も書いていきたいと言ったじゃないですか。4000字なんて1日あれば書ける分量ですし、長編の執筆時間を圧迫するなんてことはないはずです。たぶん。



●どんでん返さない話


 4000字に収めるのが苦手な理由をちょっと考えてみます。


 詰め込みすぎ、というのはそうなんですが、ならばとプロットを単純化しても意外とゆとりがなかったりします。たぶん、8000字くらいの文字数で書くべき話が6000字くらいで書くべき話に変わるだけなんですよね。


 ならばさらにプロットを単純化すればよさそうなものですが、そうなると「この話はどこでおもしろさを担保するんだ?」という疑念がポップアップしてきます。その話を書く意義、モチベーションを喚起するのがむずかしくなってきます。困りますね。


 何も凝った仕掛けやどんでん返しがないといけない、というわけではないのですけど、そういうものがあった方が自分の中である程度おもしろさを担保でき、安心して書き進められるんですよね。


 そもそも、はじめて書いた小説がそういう話で、どんでん返しのためにすべてがあるような作品でした。あのどんでん返しのアイディアがなければ、今に至るまで小説を最後まで書き切ることはなかったでしょう。


 そこから徐々にどんでん返しからの脱却を図り作風を広げてきた――はずなんですが、筆が遅くなるにつれ、わかりやすい安心材料がないとなかなか書き出せなくなってしまった気がします。




●盆栽職人


 つまるところ、どんでん返しに頼らないおもしろさが期待できる構想さえ浮かべばいいのです。


 いいのです、と言い切っていますが、言ってできれば苦労はありません。実際、これまでずっとできてないんですよね。例外があるとしたら、KACで何作か書いたおふざけ的な話くらいです。


 つまるところ、ギャグこそが活路! なのでしょうか。一応、真面目な話も書けるようになりたいのですが。


 でも、けっきょくそこなんだよな、と思うのは文章のおもしろさで勝負すればいいんだろうな、ということです。


 ギャグ的な話にしろ、プロットどうこうという以前に文章がおもしろくないと話にならないわけですし。


 わたしは小説を書きはじめた頃の方が文章がうまかったという自覚があるのですが、これはいまほど構成力がなかったゆえだと思うんですよね。文章に依存した創作をしていた。これはどんでん返し系の話でもそうです。


 ただ、そこからかれこれ10年以上、構成力にステータスを極振りし続けた結果、文章への依存度が下がり、結果、今度は逆にプロットに依存する形になってしまった。


 つまり、文章とプロットにバランスよく依存すればいい、というのがいささか理想論的な結論となります。プロット原理主義から脱却し、より広い視野を持ち、文章+プロット――すなわち「語り口」をこそ重んじ高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に執筆するというわけです。


 4000字縛りで考えるなら、極力シンプルなプロットを根幹としつつ、文章で枝葉をわっさわっささせていい感じに貧相に見えない話にしようという感じです。これまでは幹の形をあれこれ捻じ曲げておもしろがらせていたところを、幹と枝葉のバランスに美しさを見出していこうというわけですね。はい。

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第10回カクヨムWeb小説コンテスト超体験記 戸松秋茄子 @Tomatsu_A_Tick

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