幼なじみのアイツの恋は

時雨@#

身近な人程好きになる。

  オレ、月宮 叶桗には幼なじみがいる。

「ねぇー叶桗~部活無いから帰ろー。」

日野寺 颯桗。

偶然にも名前の最後の文字の『た』が同じ漢字の『桗』である。

「ハイハイ、直ぐ行くから待ってろ。」

そう答えながら荷物をまとめる。

オレと颯桗はクラスが違う。

オレは2組で颯桗は4組。

オレらの担任である田中はHRの話が長い。

だからいつも颯桗がオレのクラスに迎えに来る。

「田中って話長いねー」

「波野は話短いんだろ?」

「うん。波ちゃん話短いから助かる。」

波野は颯桗の担任。

話が短いから色んな生徒に人気だ。

担任になって欲しい先生No.1と言われている。

オレは良いな~と思いながら

悴んでいる手にそっと息を吐いて颯桗と並ぶ。

「もう少しでバレンタインだね。」

不意に颯桗が口を開く。

「あ~そうだな。ま、オレらは今年も貰えないだろうけど。」

「……オレは貰えるよ。」

少し迷った様に颯桗は告げる。

「………誰に?」

無意識にそう答えてしまった。

聞きたくない。

聞きたくない。

「…彼女。」

聞くと颯桗はクラスメイトの女子と最近付き合ったらしい。

頭の中が真っ白になった。

チョコが貰えない仲間が居なくなった事じゃない。

大好きな颯桗に彼女が出来たことに困惑した。

だが、オレは

「…良かったじゃん。幸せになれよリア充め。」

と、言ってやった。

颯桗は幸せそうな顔をして

「うん。ありがと。」

と答えた。

オレは颯桗の事が好きだった。

幼なじみとしてじゃない。

恋愛感情としてだ。

小さい頃からずっと颯桗が好きだった。

男子同士なのに?

一度はオレでさえそう思った

でも違う。好きなった奴が男子だっただけだ。

…ホントは分かってる。

颯桗がその子の事が好きだったこと。

何回も何回も相談に乗ってあげてたんだ。

その子の何処が好きか。

どうして好きになったのか。

全部全部分かってる。

分かってるけど、この感情は止められない。

「んじゃ、バイバイ。」

颯桗の家に着き手を振りながら彼は家の中にはいる。

オレはそれを確認して、隣の家に入った。

そして、

「…オレの方が颯桗の事好きだし。」 

と呟いた


 時は流れて。

今日はバレンタイン前日。

慣れもしない料理を今からする。

料理と言っても只のチョコだ。

オレは颯桗が好きなミルクチョコレートを溶かし、ハート型の型に流し込んだ。

固めている間にラッピングを用意した。

アイツが好きな紫の袋に赤いリボン。

明日思いを伝える。


 次の日。

オレと颯桗はいつも通り卓球部の部室に向かう。

部活が終わり、帰る頃。

「叶桗。今日は1人でも良い?」

颯桗は申し訳なさそうに言う。

きっと此れから彼女からチョコを貰うんだろう。

オレは迷わず

「良いぜ。」 

と言った。

颯桗は眉を下げ体育館の方に向かう。

彼女がバスケ部だからだ。

きっと颯桗にはオレなんかより彼女の方が似合う。

でも、オレは我慢出来ずについ名前を呼んでしまう。

「……颯桗…!」

「…!」

彼はゆっくり此方を見て

「何…?」

と言った。

オレは鞄から紫色の袋を取り出した。

そして颯桗に突きだし

「コレ…やる。」

と言った。

「………え?」

颯桗は間抜けな声を出した。

「…オレに?」

オレは黙って頷く。

そして颯桗は

「あーあ。先寄越されちゃった。」

と、悲しそうに言った。

「……え?」

今度はオレが間抜けな声を出す番だ。

颯桗は鞄から赤色の袋を取り出した。

リボンは紫色だ。

「ハイ。バレンタイン。」

「……彼女からは?」

つい聞いてしまった。

でも、颯桗は何も無かったかの様な顔で

「昨日別れたよ。」

と、言った。

「何で…」

オレが聞くと颯桗は照れた様に笑い、

「叶桗が好きだから。」

と、言った。

嗚呼、なんだ。御前もかよ。

そう思った瞬間、涙が出てきた。

「ちょ、泣かせるために言った訳じゃ無いんだけど!?」

颯桗はとても焦ってる。

そんなのお構いなしにオレは泣いた。

少しして、落ち着いたオレに颯桗は言った。

「叶桗。1回しか言わないからよく聞いて。」

「叶桗の事が好きです。付き合って下さい。」

オレはまた泣きながら、

「オレも颯桗が好き。」

と言った。


その後、オレらは照りつける夕日に向かっていつも通りの帰路につく。













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