動物マスク

グカルチ

第1話

 ある科学者が“動物マスク”なるものを発表した。人間の能力の範囲で制限されているが、そのマスクをつけたものは動物になり切る事ができる。その動物の能力の一部を使うことができる。しかし、あまりに危険だという事で、それは市販はされなかった。


 だがある時動物マスク、の一部が盗まれた。それは銀行強盗、殺人、誘拐などありとあらゆる犯罪で扱われることになった。そして、仕方なく科学者は動物マスクのデメリットを公表することとなった。

「あれはまだ実験品で、あれを長らくつけている次第に人間の感覚を忘れていってしまうのだ、ある国で実験的に絶滅動物の動物マスクを死刑囚につかったところ、彼らは完全にそのの動物となり、その動物の子供を産んだ」

 だが、この警告がうまくなかったのか、動物マスクはむしろもっと闇ルートで人々の手に渡る事になった。

「完全にデメリットとリスクを取り除いた動物マスク」

「人間の感覚や苦痛を忘れられる」

誤った情報がひろまり、人々の中で、それは一台ブームとなった。


 その国でも仕方なく、ほとんど動物となり、半分人の意識が戻っている人間たちを管理しながら、ある計画を実行しはじめた。

 古き良き“里山”を復活させたのだった。人間が管理し、つくり、人里を守るための結界のような役割をした、里山。そこにかれら、半分人間であり半分動物になりかけた人々をすまわせた。


 実のところそれは厄介払いでもあり、かつ実験であり、かつ環境保全の目的もあった。

 しかし、それがまずかった。基本的に野生動物のほうが力が強かったのだ。次第に均衡はくずれ、野生動物が増える。だが極端に進化をとげた“動物マスク”の元人間たち、いわば新種の生物たちもあらわれた。


 しかしその国は土地が小さく、そもそも高齢化が進んでいたために、彼らに対処する力はなかった。やがてその国は“動物マスク”の動物と、自然の動物だけが生き残る結果となり、人々は死滅していった。“動物マスク”の研究者が目指していた“技術開発”による国家の再生と“自然の再生”といったような目的は、あらぬ形で完成することとなった。

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動物マスク グカルチ @yumieimaru

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