第11話 ●しぎ様 理系女子大生、異世界でメートルを作るを読んで、単位を勉強しちゃいました。

◎今回の読書会作品

 しぎ 様

 理系女子大生、異世界でメートルを作る (カクヨム)


◎今回の読書会参加者

・加納友美 

 動物と話しが出来る大学一年生。

 どんな状況や作品にも、なりきりスキル発動により対応可能。

・ヘビのヘビッチ

 中二病気味のコーンスネーク。語り好きで解説役。 

・毛ガニの毛ガニッチ。

 北海道からクール便で送られて来た、ちょっと幼い毛ガニ。ハサミ芸が得意。

・イグアナのイグッチ

 ゆっくり過ぎるイグアナ。

・元野ウサギのウサッチ

 食物連鎖の下位で捕食され続けて来たと言うウサギの歴史も相まって、謝罪ばかりする自虐ウサギ。



 「友美ちゃん。今宵、知識が桜花乱舞した今回の読書会、他のみんなも活字を脳内にはびこらす事象は終結したかな?」


 「あ、うん!みんな読み終えたみたいだよ」


 ヘビッチはテーブルの上でトグロを巻き、舌をチロチロ出しながら、相変わらずの中二病発言で、皆の読了確認をしています。


 「メートル法って何?私も食べたいわ!カニカニ!」


 「…………」

 (毛ガニッチ……メートル法は食べ物じゃないよ。あなたさっきアサリとハマグリ食べたばかりでしょ?)


 毛ガニッチもヘビッチの横で、語尾のカニカニ!に合わせて、ハサミをカシャカシャ閉じたり開いたりしています。


 「ごめんなさい……。やっと読み終えました。破滅的ウスノロな元野ウサギでごめんなさい……」


 「…………」


 ウサッチは定位置である部屋の隅っこで、いつもの様に自虐・謝罪発言をしています。


 「ま……だ…………よ…………み……お…………」


 「あ〜ハイハイ。イグッチはまだ読み終わってないんだよね?大丈夫だよ。イグッチはゆっくり過ぎて朝になっちゃうから、発言しなくていいからね。読む事に集中してて構わないから」


 ゆっくり発言のイグッチが読書を続ける中、ヘビッチが説明を始めました。


 「早速だが、この作品は物理学科の女子大学生が、単位が統一されていない世界へ、10才の少女として異世界転生をする。そして単位統一の為に奮闘すると言う物語だ」


 「そうだね!面白かった!」


 「まず、この作品を語る前に単位の事について少し聞いて欲しい」


 「う、うん。ヘビッチお願い」


 「単位と言うのは長さ、体積、重さなどを測る上で基準となる物だ。現在、世界では約99%の国が公式にメートル法と言う単位を使用している。ここまではわかるな?」


 「うん」

 (なんでヘビなのにそんなに詳しいの?)


 「単位と言うのは他にもある。日本で昔は使用されていた尺貫法だ。寸、尺、間、里などの単位だな。一寸法師と言うタイトルのお話があるだろ?一寸は約3センチである事から、その名前がついてるんだ。その他にはヤード・ポンド法がある。名前くらいは聞いた事あるだろ?現在ではアメリカの日常生活において使用されていると言う。もちろん商用的な取引部分ではメートル法も併用しているらしい」


 毛ガニッチ、ウサッチ、イグッチも気付くとヘビッチの前に横並びになり、話を真剣に聞いています。


 (あなた達、わかってるの?)


 「そして、単位の統一と言うのは医療・輸入・輸出・料理・スポーツ・科学など、日常生活においても必要不可欠なんだ。昔NASAの火星探査機で発生した事故も、メートル法とポンド・ヤード法の勘違いから起きた換算のミスだと言われている。今回の作品もこの単位の統一が、時には人命に関わる事があるエピソードもある。作者様の確かな知識の元に、単位の歴史と必要性がしっかりと描写されているんだ」


 「そうだね!物語と登場人物の心情描写の中で、自然に読者の頭に入ってくるしね!」


 「今回の作品の世界観的には、歩いてもいける地域毎に単位が違うと言う、かなり不便な状況なんだ。わかりやすく言うと、例えば市区町村全てで、公式単位が違ったら不便だし、それを理解・把握するのは難しいだろ?それを統一しようと奮闘するのが、今回の作品の主人公であるシャリーヌさんだ」


 「ごめんなさい……私はあらすじを見ただけで面白いと感じました。作品もしっかりと練り込まれていて、難しい題材ながらも辻褄があっていて、私達読者も納得出来ます……あ、ごめんなさい。あまりに素晴らしい作品だったから、知的の欠片もない元野ウサギが、つい解説家ぶった発言をしてしまいました。ウサギ焼きにでもして下さい……耳は栄養ないので捨てて下さい……」


 「…………」

 (最近ウサッチの自虐、酷すぎてフォロー出来ないよ……)


 「わ……か…………り……や………い……」


 「あ〜ハイハイ。イグッチはこの作品、難しい題材だけどすごくわかりやすいし、読みやすいって言いたいんだよね?イグッチは私達と、時の流れる速さの単位が違うから、発言は極力控えて読書に集中してて構わないからね」


 「この作品、単位いっぱい!美味しそう!カニカニ!」


 「…………」

 (毛ガニッチ……あなたやっぱり全然わかってないでしょ?)


 「この作品はお世辞抜きにして、素晴らしいと言う言葉がピッタリだ!」


 「ヘビッチ、どう言う事?」


 「まず、構成力だ。そもそも単位の統一が何故必要なのか?普段僕達はあたり前の様に使用しているから、すぐにポン!と出てこないだろ?その命題を序盤でしっかりと説明している。ネタバレは極力避けたいから、簡単に説明するが、単位が違う事による、商業的取引での不具合、人命に関わると言う調理においての毒抜きのエピソード、そして主人公シャリーヌさんの苦悩と葛藤。物語序盤で、その辺りを身近で、現実的なエピソードにて描写されているんだ」


 「ごめんなさい……ヘビさんの言う通りです。この作品は章区分けがされていますが、各章においてはっきりと、命題を元に展開が明確化されています。基本的な事なんですが、事前のしっかりとしたプロットの練り込みの様な物が垣間見えて、作品の内容にも、その緻密さがピッタリとマッチしています……ごめんなさい」


 「あ、カマッチとウサッチの言う事わかるよ!ここまで、世界観に引き込まれて、光景が浮かんでくる作品珍しいよね!」


 「ああ。過去読書会で採用させて頂いた作品の中でも、秀逸な作品の中の一つだと思う。だが、この作品は賢いヒロイン中編コンテストにエントリーされている。六万文字以下と言う制限の中で、作者様もまだまだ伝えきれてない内容や想いがあるのではないかと感じた。このコンテストの応募要項の中の一文には、中編の中でしっかりとオチを付ける事、受賞作品は長編化する事を視野に入れ物語が進むに連れて、どんどん魅力が発揮されていく……と言う内容の記載がある。この作品は応募要項の趣旨にもしっかりと沿っている……。シャリーヌさんが10才と言う設定も絶妙だ!一次審査を既に突破している本作だが、もちろん納得だ!」


 「も……っ……と…………シ……ャ…………リ……ーヌ……さ……ん……の……か……」


 「あ〜ハイハイ。イグッチは加筆してもらって、もっとシャリーヌさんの活躍を見たいって言いたいんだよね?イグッチは読むのもゆっくり過ぎるから、終える頃には大活躍だよ。読者みんなが思ってる様な、被りコメントは極力控えてね。あと、小さい【ッ】は前後の文字とくっつけて欲しいのと、わかりにくいから【ーヌ】は分けて発言してね」


 「このコンテストの一次審査突破作品には、まだまだ魅力的なヒロインが魑魅魍魎の如く存在するらしいが、僕達はシャリーヌさん推しとして、しっかりと応援して行こう!」


 「うん!そうだね!ほんとに楽しい作品だもんね!」


 「単位って大切だね?美味しそう!カニカニ!」


 「…………」

 (毛ガニッチはやっぱりわかってなかったね……)


 その後、私達は朝までこの作品を読んで、物語の可能性をワイワイと話していました。


 作者 しぎ 様

 今回はありがとうございました!


 今回の作品はこちらからどうぞ。

https://kakuyomu.jp/works/16817330654752080714



 


 


 


 




 


 


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