第12話 ●萩原 勇 様 竜の卵と3人の小銃士《リトル・マスケティア》を読んで興奮し過ぎちゃいました。前編
◎今回の読書会作品
萩原 優 様
竜の卵と3人の
◎今回の読書会参加者
・加納友美
動物と話しが出来る大学一年生。
どんな状況や作品にも、なりきりスキル発動により対応可能。
・錦鯉の錦ッチ
友美さんの隣人宅の池に住む、熱血教師キャラの錦鯉。昨今の外国人からの人気上昇で価格は高騰して20万→35万になった。解説役。
・神山ゆかり
幼なじみの彼と交際してるクラスメート。爆弾発言の数々は、友美さんを何度も絶句と困惑の嵐に追い込んだ。
・シマリスのクパちゃん
絶対ツンデレのシマリス。
・元野ウサギのウサッチ。
食物連鎖の下位で捕食され続けて来たと言うウサギの歴史も相まって、謝罪ばかりする自虐ウサギ。
ガチャ
「あれ?!今日は萩原様の作品の読書会だよ?メンバー違くない?カメッチいないの?」
私は読書会が開催される自室に入室しましたが、事前に聞かされていたメンバーと全く違う面々が待機している事に驚愕しています。
「キャハ!なんか急遽呼ばれちゃった!せっかく彼とデートの予定だったのに……でもいいんだ!今日は女の子の日だから、何にも出来ないから♪」
「…………」
(ゆかりちゃん……デートの意味知ってる?)
ゆかり航空隊は、相変わらずブリブリしながら地上の私に爆撃発言攻撃。
「べ、別に作者様がツンデレ好きって聞いて、急遽参加してあげた訳じゃないんだからね!」
「…………」
シマリスのクパちゃんは、テーブルの上で夜食の甘栗むいちゃいましたを両手に持ちながら、相変わらずのツンデレ全開。
「ごめんなさい……私も急遽呼ばれたんですが……ごめんなさい……作者様になんの縁もない、元汚れ野ウサギが参加してしまって……25口径のピストルで撃って食べて下さい……あ、耳はトウモロコシパンに挟んで食べて下さい……」
「…………」
ウサッチは部屋の隅っこで、申し訳なさそうにガタガタ震えています。
「おいおい!違うぞウサギさん!今回の読書会のメンバーは、この作品と作者様に因んだ面々に集まってもらったんだ!わかるだろ?おい!」
「……ごめん錦ッチ。全然わからないよ……」
錦ッチは転回するのが困難と思われる程の狭い水槽で、大声を張り上げています。
「わからないだと?おい!仕方ない解説させてもらうが、作者様はツンデレ幼なじみが好きなんだ。この事は、作者様の創作サークル【王立銃士隊】のホームページにも記載がある!萩原様はサークルの主宰でもある!そこで幼なじみとお付き合いしてる、ゆかりちゃんとツンデレなシマリスさんに来てもらった!更に広島カープが好きだと言う事で、広島にはウサギの島があるだろ?そういう理由で急遽集まってもらった!どうだ!おい!」
私はセリフ棒読みスキル【棒姫】を緊急発動。
「うん。わかった。ツンデレね。幼なじみね。広島カープね。すごいね」
「因みにカメッチさんは、事前にこの作品を読んで、あまりの面白さに十回も昇天したらしく、今日は欠席だ」
「…………」
(え?十回も?!カメッチ大丈夫なの?)
一時間後。
「おい友美ちゃん!この作品は……凄すぎる……」
「うん……」
「ごめんなさい……」
「べ、別に……」
私達はこの物語を読み終わりましたが、世界観の深さに絶句していました。
「おい!まずはこの作品のあらすじをシマリスさんが説明してくれるそうだ!心して聞けよ!おい!」
(いちいち、おい!って言うの本当に止めてくれないかな……)
「べ、別にこの作品は、少年少女と幼い竜が……魅力的……なんだけど……白竜の卵を取りに行く様ないかないような……ドキドキする様な出会いと約束の冒険物語なのよ……べ、別にそれだけじゃないんだからね!」
「…………」
(クパちゃん……混乱し過ぎて、よくわからないキャラになってるよ?)
「おい!この作品は、魔法なども登場して、ファンタジー作品だと思っただろ?」
「うん!」
「馬鹿者っ!」
「え?」
(ちょっと……ビックリするから急に大声出さないで……)
「この作品は、ただのファンタジー作品ではない!些細な事から冒険をする事になった、三人の少年少女達の成長物語だ!文芸的な一面もある芸術的な作品なんだ!冒険を通じて変化していく少年少女達の心情、そして明らかになっていく物語の核心と世界観……序盤からしっかりと細かい描写がされていて、しかもその情報量が、読者を混乱させない程度に、段階を踏んで描写されている。もちろん、冒険物語としてのワクワク、ドキドキ感がある。後半は特に少年少女達の成長に、つい読み入ってしまう……とても完成度の高い作品だ」
「ごめんなさい……私もいいですか?成長と言う事では、ヒロイン的な立ち位置のマリアさんの変化に感情移入出来ます。あ、ごめんなさい。私ごときがマリアさんと同列的な発言をしてしまって……私は格下ですから……ブレスで焼かれるべきなんです……」
「…………」
(ウサッチ……ほんとに最近どうしたの?自虐ひどくなってるよ?)
「べ、別にマリアさんは、主人公の隼人さんと冒険に出たい訳じゃなかったんだからね!」
錦ッチはクパちゃんの言葉に反応して、水面から顔を出して話し始めました。
「おい!俺も興奮して何を言ってるかわからないかも知れないが聞いてくれ!最初は作品もほのぼのとした世界観に見える。少年少女達の微笑ましい掛け合いもある!マスコットキャラクター的な竜の子供パフちゃんも可愛らしくファンタジー的な……しかし、気付くと命がけ大冒険になっいる。この段階的描写や、作品そのものの世界観をも自然に変えてしまう表現と優れた構成!文芸的なヒューマンダークファンタジー……いや、物語の舞台でもある、ライズと言う世界自体を将来的に救っていく様な壮大な物語に繋がっていく……そして作者様の別作品である【王立空軍物語】へと繋がっていく……ゴファッ!ゴフッ!ゴホッゴホッ!」
「あっ!ちょ!ちょっと錦ッチ!!大丈夫!?早く水中に潜って!」
「ゴホッゴホッ!グハッ!」
「あ!!錦ッチ!大丈…………え?」
錦ッチは興奮して、水面から顔を出し連続で話をしていたせいで酸欠。
気を失った様子で、目を閉じてゆらゆらと沈んで行きました。
「ゴホッ……」
「錦ッチ!!」
「友美ちゃん!急いで池に戻した方がいいよ!水槽じゃ、水中酸素も足りないみたいだから!」
「べ、別に、は、早く池に戻さないといけない訳じゃないんだからね!」
私はクパちゃんのよくわからないツンデレセリフに、突っ込む余裕もない緊急事態に慌てて、ゆかりちゃんと二人で水槽を抱えて隣の家の池に行きました。
(ちょっと!ほんとにまずいよ!錦ッチは最近値上がりして三十五万……いや、お金の問題じゃないよ!錦ッチが死んじゃったら私……私……)
そして、優しく錦ッチを水槽から出して池に戻しました。
「錦鯉さん!しっかりして!」
「錦ッチ!目を覚ましてよ!お別れなんて嫌だよ……」
気付くと、私とゆかりちゃんの頬には、号泣とも思える程の量の涙が流れていました。
後編に続きます。
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