第3話 ●壱単位 様 ねこのじごく。を読んでお互いの気持ちを理解しちゃいました。

◎今回の読書会作品

 壱単位 様

 ねこのじごく。(カクヨム)


◎今回の読書会参加者

・加納友美 

 動物と話しが出来る大学一年生。

 どんな状況や作品にも、なりきりスキル発動により対応可能。

・セキセイインコのピッピ

 コンプライアンス重視の真面目なインコ。友美さんの家で暮らしている。

・三毛猫のみけっち。

 人間嫌いで、めんどくさい地域猫。

 本編では、全身に腫瘍が転移して友美さんの前で凄絶な最期を遂げた。

 死後の世界から参加。  

・毛ガニの毛ガニッチ

 クール便で送られて来た、純真無垢なちょっと幼い毛ガニ。卵を持てたり、針に糸を通すなどのハサミ芸が得意。


 

 (なんでこんな事に……………)


 私は読書会開始前、今回の作品タイトルを伝えた所、何故か激怒し始めたインコのピッピと三毛猫のみけっちに正座を強要させられ、スキル【キョトン顔のチンプンカンプン友美さん】を発動。ピッピの鳥かごの前で対峙しています。


 「にゃんなの?今回の作品のタイトルは?私に地獄へ堕ちろ!と言う当てつけにゃの?」


 みけっちは毛を逆立てて、時折ネコパンチを私の膝におみまいしながら怒っています。


 「いや、タイトルだけでまだ、読んでな……」


 「友美ちゃん。いくらみけっちさんに嫌われているからって、人として地獄に堕ちろなんて言うのはどうなのかしら?」


 「いや、作品タイトルを伝えただけで地獄に堕ちろとは……」


 「うるさいわね!口答えするんじゃ、にゃいわよ!」


 「地獄?美味しいの?カニカニ!」


 毛ガニッチは相変わらずのマイペースっぷりで、語尾のカニカニ!に合わせて両手のハサミをカシャカシャ閉じたり開いたりしています。


 (毛ガニッチ……何にもわかってないんだろうけど、やっぱりそれおちょくってる様にしか見えないよ?)


 ピッピは遂に鳥かごの入口をくちばしで上に持ち上げ、カゴから出て来ました。


 「冷静に考えてみなさい。みけっちさんが怒るのも無理ないと思うわよ?」


 「いや、本のタイトルだから……」


 「そういう事を言ってるんじゃないわよ!だったら、誤解無い様、みけっちさんに事前にタイトルとあらすじを伝えるべきだったんじゃないの?配慮が足りないのよ」


 「…………」


 「久しぶりに読書会に呼んで、今日の作品タイトルは【ねこのじごく。】よ!な〜んてニヤニヤしながら言われたら、そりゃみけっちさんが怒るのも無理ないと思うわよ」


 「そ、そうだね……」

 (別にニヤニヤなんかしてないし、呼んだ訳じゃないんですが……)


 「みけっちさん。とりあえず作品を読んでみましょ。友美ちゃんへの尋問はそれからにしましょ」


 「そうね。ネコがひどい目に合う作品だったら許さにゃいんだからね!」


 「…………」


 その後皆で作品を拝読。


 30分後。



 「…………」

 絶句する私。


 「……グスン……」

 すすり泣くピッピ。


 「腎臓病ってなに?カニカニ!」

 ハサミをカシャカシャ動かす毛ガニッチ。

 

 「………ニャギャああああっ!」


 そして、みけっちは床に顔を屈伏して号泣。


 ピッピは再び鳥かごに戻り、止まり木の定位置に移動。話し始めました。


 「……とりあえず、泣いているみけっちさんは、落ち着くまで時間かかるから、読書会進めるわね」


 「あ……うん」


 「この作品は……短編で詳しい内容は最低限に留めるけど、腎臓病のネコ視点で書かれた、治療に対する複雑な思いと、飼い主さんに対しての深い愛情が感じられる物語……グスン……駄目……友美ちゃん、代わりにまず感想を言って……グスン」


 「ネコさん!どうしたの?ティッシュあるよ!カニカニ!」


 毛ガニッチは、テーブルの上にあった未開封のポケットティッシュから見事にティッシュを一枚取り出し号泣してるみけっちに差し出しました。


 (毛ガニッチ……悪気はないんだろうけど今はハサミ芸披露する所じゃないから……)


 「と、とりあえず私の感想だけど、段々明らかになっていく事実がとても物語に引き込まれるよね!」


 「グスン……そうね。短編なんだけど、柔らかい独特の文体としっかりとした構成力が素晴らしいわ。起承転結の手法をしっかりと表現した、読みやすく模範的な作品ね……グスン」


 「確かにそうだね!」


 「私思ったの。この作品は普段動物を飼っている人間達が思っている事を鋭く切り込んだ作品だと……」


 「え?ピッピ、どういう事?」


 「例えば犬の予防接種会場で怯えてる動画を見た事あると思うけど、私達動物って病院と言う存在の概念がわからないじゃない?だから、普段飼い主さん優しくしてくれて幸せなのに、なんでこんな所に連れてくるの?って思うと思うの。そしてそれは人間も同じで、必要な事なんだけど、病院に連れて行って痛い思いさせるのはとても辛いと思うの。飼っている動物達に判って欲しいな〜って思う事、誰しも一度はあると思うの」


 「そうだね……」


 「つまり、動物と人間の唯一のすれ違いを埋めてくれた作品だと思ったの。もちろん、一部の動物達は何度も病院に通う内に理解する事もあるわ。でも完全に病院と言う概念は理解出来ないと思うの。この作品が泣けるのは、人間と動物の決して埋められない溝を埋めて具現化してくれた作品だからなの。つまり、夢を叶えてくれたのよ!私、作者様にありがとうって言いたいわ!」


 号泣していたみけっちも、落ち着きを取り戻し、ピッピの言葉に反応。


 「私、野良だから人間は本能的に信じちゃいけにゃいって思うけど、愛情と言うのは絶対に伝わる物だと思うわ」


 「え?みけっち?それって……」


 みけっちの最期は、私が弱っているみけっちを無理矢理連れて行った病院でした。そして腫瘍が全身に転移している事が判明した診察中、みけっちは激しく拒否して診察台から飛び降り、きちんと着地出来ず顔面を強打。ヨロヨロと出て行こうとする、みけっちの最期の言葉は「人間には世話になりたくない」でした。


 私はそれを思いだして泣いていました。


 「友美。あの時はごめんなさいね。でも許してね。本能だから仕方にゃいの。でも、あなたの心配する気持ちは判ってたわ。だから……」


 「みけっち……」


 「な〜んて言うと思ったの?!ふざけにゃいで!」


 「痛っ!何すんの?!」


 みけっちは私の腕を右に左にと強烈なネコパンチのワンツーを放ちました。


 「あなたあの時、無理矢理私を連れて行って!私はあの林の中を死に場所に…………ニャギャああああっ!」


 「え?みけっち?どうしたの?」


 みけっちは再び号泣。

 

 「ニャギャああああっ!あなたは泣いてくれた……真剣に泣いてくれた……心配してくれた……最期があなたの目の前で良かった……ニャギャああああっ!」


 「みけっち……」

 (ありがとね。みけっち)


 「病院?美味しい物あるかしら?カニカニ!」


 「…………」

 (毛ガニッチ……ここは大事な感動的なシーンだから、空気読んでね?)


 「とにかく、この作品は命や愛情の尊さを考えさせられる深い作品だわ。私もインコのじごくに友美ちゃんを連れて行くわね!」


 「じゃあ私も友美ちゃんをカニ地獄でカシャカシャするわ!カニカニ!」


 「…………」

 (毛ガニッチ……カニ地獄でカシャカシャって……それって切り刻むって事かな?)


 「友美。本当にこの作品は素晴らしいわ!作者さん紹介しにゃさいよ!この作者さんになら飼われてもいいわ!あ、でも大好物の煮干しは香川県産の高級な物をお願いしたいわ。言っといて頂戴ね。絶対よ!」


 私はセリフ棒読みスキル【棒姫】を緊急発動。


 「うん。わかった。香川県産ね。高級ね。伝えるね」

 (みけっち……あなた本当にめんどくさい地域猫だね……)


 私達はその後朝まで、この作品について語り合い、みけっちは朝日が登ると同時に死後の世界へ帰って行きました。


 (みけっち……本当にありがとね。あなたの気持ちこの作品のおかげでわかったよ!また読書会来てね!)



作者 壱単位 様

今回はありがとうございました!


今回の作品はこちらからどうぞ!

https://kakuyomu.jp/works/16817330656349173323





 


 




 


 




 






 



 




 

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