第4話 世界の終わる最後には
そうして、朝はやってきた。千紗は相変わらず抱きついたままだ。
ん〜、どうしようかな。
「うぎゅ、えへへ。」
「千紗、起きてるだろ。」
「……。」
「そうか。なら、キスとか、揉んだり、セッ…。」
「す、ストップ。」
「弱いんだな。」
「何ですか。箱入り娘で悪かったですね。」
「いや、悪いわけじゃないけど。」
「もうやめにしましょう。早く朝食を食べましょ。」
「そうだな。」
〜〜〜〜〜
「そういえば、両親はどこにいるの?」
「さあ、寝てるかもしれないし、朝早くからどこかに行ってるのかもしれないな。」
朝食を食べる最中にそんな話をしていた。
「それにしても、よくこんな種類のサンドウィッチを作れたな。」
「一応、昨日確認しなかったチルド室の中に、ハムとかチーズとかがありましたからね。」
「そうだったのか。まあ、夕食を作る上ではあまり使えないから当然だけど。」
「そうですね。でも、缶詰はうまく使えたんじゃないですか?」
「ま、まあ、そうかもね。」
流石にそんな自炊能力はないですけどね!
「浮かばなかった私も悪いので。」
「気にしてないから大丈夫だよ。それにしても、この後どうする?」
「思い出の場所でも巡りましょうよ。最後だけど、知っておきたくて。」
「そ、そうか。僕はあんまり千紗のことをしれてない気がするけど。」
「じゃあ、世界が終わるまでずっと話を聞いてる?」
「い、いや。大丈夫です。」
〜〜隕石落下まで2時間〜〜
「いや〜、久しぶりに来たなこの公園。」
「公園?」
「ここは都内だけどルールが緩い公園でスケボーしたり、サッカーしたり、虫取りしたりしたからね。」
「でも、遊具は少ないわね。」
「そうだな。でも、あそこのコンクリートの地面があるだろ、あそこには、コーヒーカップみたいに回して遊ぶ遊具があったんだけど、無くなっちゃたみたい。あれは、すごい高速で回って、その後吐いたんだったけな。ちょっと忘れたけど、気持ち悪くなったときもあったな。流石に危ないと思われたんだろうね。」
「そんなことがあったんのね。」
やっぱり、好きになって付き合い始めたけど、健介のことは知らなすぎるし、知るには時間がないわね。
「ブランコで話でもしましょう。」
健介には私のことを知ってほしいの。
====
話って何だろう。
「私の過去よ。今は大丈夫だけど、心のダメージは大きかったからね。」
どういうこと?やっぱり、惹かれていっただけじゃわからない。
「私はね。小3のときに誘拐されたのよ。」
「誘拐!?」
「そうよ。近所のおじさんで登下校をするときに挨拶をしてて、正直、よく見かけるな。って思ってただけで気にしてもいなかった。だけどね、ある日の下校時に突然顔を覆われて、少し首を絞められて意識を失ったわ。」
狙ってたってことか。
「流石に捕まった状態を見れば私を狙っていたのはわかるわ。そして、おじさんが全裸だったこと。ふう。」
「無理しなくていいからね。流石にある程度は想像がつく。」
「そうね。じゃあ飛ばすわ。その後から人間不信になったのと男性恐怖症になった。流石に仕方ないとしかいえないけど。一時期は不登校になった時もあったわ。」
不登校、そうか、そうもなるか。
「中学生になったときには、人間不信は無くなっていたけど、男性恐怖症は少し残ってた。その上、この容姿。男子によく見られて、学校を休むってことも少なくなかった。そうなると、恋愛なんて遠いもの、そもそも人間不信になったときの癖で、相手の狙いを伺ってしまうのもあった。」
なら、どうして今。
「でも、高校生になって男性恐怖症はだいぶ薄れ、癖も抜けてきた。それで、健介の何か目的のあるわけではないけど、裏でしっかりやっているところ。そこが惹かれたし、一緒に仕事をする中で安心した。」
これを聞けば、惹かれた理由がそれだけって感じるわけがない。
彼女なりの葛藤があったのは当然。それも、初めて知った魅力。
「だから、好きよ。大好き。」
そうして、キスをしていた。
「嬉しかった、楽しかった、この2日間。健介はどう?」
「もちろん。最高だったよ。」
「そうね。ありがとう。あなたを好きに、そして、好きになってもらえて嬉しかった。この人生に悔いはないわ。」
彼女は少し泣きながら話し、そして、本当の最後のキスをした。
「千紗、大好きだよ。」
世界の終わりに恋愛を 学生初心者@NIT所属 @gakuseisyosinsya
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