焼肉を箸で摘む
文壱文(ふーみん)
掌編:焼肉を箸で摘む
私はいつものように肉をタレの中に漬ける。壺の中、タレの中を平たく捌かれた肉が泳ぐ。
「これからが大変だぞ……!」
蓋を乗せて一時間。蓋を開けてみればタレの香ばしい香りが強い。しかしまだ、食べ頃ではない。
熟成して二時間、三時間。
ついに時は満ちた。
私は炭火の上に網を乗せ、まずは焔で網を熱する。次にじっくりとタレの染み込んだ肉を網の上に乗せた。
焔はバチバチと音を立て、下から肉を炙る。肉を裏返した頃には、網の跡が明瞭になっていた。褐色のます目が、私の食欲を煽っている。脂がプツプツと弾け、食べ頃がやってきた。
「それでは、いただきます」
箸で肉を摘み、それを隣で座る恋人へ……。
すると恋人は、焼かれた肉を箸で摘む。それを口の中へパクリ、と。
「うん、おいしいね」
私は顔写真の前で優しく微笑んだ。
焼肉を箸で摘む 文壱文(ふーみん) @fu-min12
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