最終話 嘘だらけの世界で僕は
まず目にしたのは白い天井だった。窓から射し込む強い日差しにやられて目を細める。知らない天井で夢の続きかと勘ぐったが、どうやら違うらしい。ベッドに横たわっているのは僕だし、『夢から覚めた』ことを無意識的に感じ取った。
じゃあなんで僕はここで眠って……
「──っ」
轢かれた事実を思い出し、ぼんやりとしていた頭が一気に覚める。
僕はまだ
焦燥感に駆り立てられ、すぐに起き上がろうとする。しかし右腕に力が入らない。視線を向けるとそこに見慣れた腕がなく、白いギプスが存在感を放っていた。肘をちょうど九十度に曲げており、まるで骨折したみたいだ。
いや、コレ折れてるやつでは?
そりゃあそうだ。交通事故で思い切り轢かれて無傷なわけがない。試しに足を動かそうとするが、こちらも何かに動きを制限されていた。
……命があるだけマシか。
腹筋を使ってなんとか起き上がる。そこで状況を確認しようとして、ベッドの傍らに座っていた少女と目が合った。
「
つい最近聞いたはずなのにどこか懐かしい声。
安心した僕に対し、
「
「よかった、本当に……よかったぁぁ」
もう限界だったのだろう。涙声になった
「うわっと……」
どうすればいいか分からず硬直してしまう。そんな僕を置いて
何がどうなってるんだ?
嬉しい反面、恥ずかしさが込み上げてくる。一度引き離そうとも考えたが、今やるべきことは
「そんな泣くことないだろ?」
「だってぇ、目覚めないと、思って……」
「大袈裟だなぁ。ちょっとした事故に遭っただけだよ」
「大袈裟なんかじゃない! 全然公園から帰ってこなくて、そしたら血まみれで倒れてて……私、何もできなくて」
「心配かけてごめんな」
まるで子供をあやす親になった気分だ。それでも
その姿に僕の心は満たされた。
もしもあの夢の内容……いや、それだけじゃない。『予知夢』を含めた夢が現実だったとしたら……
そんなことを考えて、すぐにやめる。僕が生きてるのは『予知夢』の世界ではない。今この瞬間だ。あの夢が現実だとしても何も変わらない。
夢の僕の言葉を借りるなら、そう。
例え、ここが嘘だらけの世界だったとしても、僕は
嘘だらけの世界で僕は君と笑いたい 西影 @Nishikage
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