第10.5話
枯れ木ばかりの公園でベンチに座っている男がいた。待ち合わせをしているのかと考えて、どこか様子がおかしいことに気付く。俯いていて顔色を窺えないが悲哀に満ちた空気を感じ取った。
そんな男の前に
「今日も見舞いに行ってきたのか?」
男は反応を示さない。ずっと俯いて顔すら合わせようとしなかった。数秒待ち、再度
「
「……お前に言われなくてもわかってる」
――夢だ。
覇気のない声を聞き、直感的にそう感じた。しかし男が顔を上げたところで確信に変わる。あのベンチに座っているのは僕だった。どうやら僕と
「なんで
その声は震えていた。初めて見る光景のはずなのに自然と状況が理解できる。
……本当に、初めて見る光景なのか?
記憶を補完するようにどんどん情報が流れ込んでくる。いつもは自然と受け入れる情報なのに、今回は夢と意識しているせいか不可思議に思えた。
「なんで、僕なんかを助けたんだ!」
悲痛な叫びは僕に『予知夢』の記憶を思い出させる。車に轢かれそうになった僕を
いや、それは本当に『予知夢』の記憶なのか? 僕はクリスマス・イヴに
何かがおかしい。『予知夢』と現実の区別が曖昧になっていく。入り混じる記憶に戸惑う僕なんて気にせず、
「
「……いくらお前でも、次そんな冗談言えば殴るぞ」
「マウスで魂の抽出、保存に成功したらしい。そして意識を失ってすぐのマウスに魂を戻すと蘇生したという話もある。これを人間に応用できたら……」
「それに何年掛かるんだよ」
苛立ちの籠った呟きが
そう判断したのか夢の僕が立ち上がる。足は出口に向かって進んでいた。
「
「――被害者家族で協力を志願している人たちがいる」
「
その言葉に目を見開く。ずっと頭の片隅で引っかかっていた何かが取れたようにクリアになった。
僕はこの光景を見たことがあった。
――僕は、この記憶を経験していた。
次に発せられるのは今の僕になるきっかけの言葉。それがきっと『予知夢』を見る原因になった言葉。
「
瞬間、謎の浮遊感に襲われる。ゲームのバグのように地面をすり抜け、二人を置いていくように落ちていった。真っ暗な世界に放り込まれる。
どこだ? なんて考える時間すら与えられない。
着地したと思った時には病院の一室にいた。夢の僕は患者服を着ており、ベッドで仰向けになっている。しかし顔つきが明らかに違う。ベッドの横で立っている
どうやら夢の僕は
「本当にいいんだな」
それでも夢の僕は怯むどころか、真剣な眼差しを
「言っただろ。僕は
「相変わらず
「嘘だらけの世界で、
夢の僕が笑い、つられて
「もう仮想世界の準備はできてある。あとは
「その実験も兼ねてるんだ。心配すんな。重々理解してる。早く始めてくれ」
「……分かった。後は俺に任せてくれ」
そこで視界がぐにゃりと歪んだ。もう何度も感じたことのある夢の終わり。最近はここで夢の中と気付くことも増えてきた。
それでも未だに胸のつっかえは取れない。
本当にコレを夢と片付けてもいいのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます