第48話 審議タイム


「どのレースも興奮させられる展開でした、ただ今の順位はこの通りになります」


モニターには上からNo.2・No.5・No.1・No.6・No.3と表示されていた。


「レースそのものは全て終了しました。しかし、ここで終わらない!終わるわけがない!!ここからは審議タイムに入ります。


審議タイムとは、今まで繰り広げられたレースに対しての疑問や不満と言った、異議申し立てを精査する時間の事です。つまらないと思った方もいると思いますが、この精査の結果によって、タイムの変動を行います。順位が大きく変わる事がありますよ~ただのレースではない、最後まで目が離せません。詳しくは課長さんにお願いします」


課長がマイクに顔を近づけ咳払いを一つ。


「おほん。え~我々、トットファーレ艦外活動部署はその名の通り、艦の外。惑星探査を含めた宇宙空間での作業が主な活動内容になります。


そこはまさに、これまでの常識が通用しない世界が広がっています。


勿論、専門家が研究しますが、一番に赴く我々としても判断が求めらる事が非常に多いので、部署内でも普段から不測な事態の対処、答えを導き出せるよう訓練を重ねています。これから行われるのもその一環と思って頂ければ良いと思います。


皆さんからも気になった事があればコメントを受け付けますよ~」


レース終了後、そのまま開始した為、宇宙空間に皆残ったまま聞いている。


「それでは審議タイムスタートです」


課長の言い終わりと同時にテテルが審議タイムの口火を切った。


「フォード君のレースは最後にするとして、誰からいこうか?」


課長が切り出すと「俺から良いか?」アレーグ・クワーテの声が皆に向けて響いた。


「まず俺達のレースだが、『5秒間のロックオンで撃墜』だろ?ロックオンされている間の警告音が無かったのは仕様か?それともジャミングをされていたのか?」

うんうんと課長は頷きながら


「ディー君、どうかな?」


実質、ディフリーフォール・シーとアレーグ・クワーテの班のみのレースだった為、2人で言い合う展開になった。


「アレーグさんの機器への干渉は行っておりません、レース前の整備に不備は?」


「無い!!」


宇宙空間への準備は抜けが無いようにする。当たり前だ。と言わんばかりに即答した。


ピピピピピ!・‥‥


アレーグ・クワーテの宇宙船から警告音が鳴り響いた。ディフリーフォール・シーがロックオンしてみせていた。


「・・・分かった、俺の整備の確認不足だ」腑に落ちないがそこで話を終わ「じゃっ、じゃぁディーのスタート直後から狙撃・・・というか攻撃するのは有りなのか?」


話題を切り替え、ディフリーフォール・シーのレースへの疑問をぶつけてきた。それについては多数の同意見の声に、ディフリーフォール・シーは落ち着いて答えた。


「妨害側の攻撃可能ラインと言うだけで、こちらから攻撃してはいけないルールは無かったので違反はしていないかと、視認できる所で待ち構えていれば無防備としか言いようが無いと思いますが」


「宇宙空間で遭遇する未知の存在が、危害を加えてくるか分からない事に対して先に手を出すのは・・・」


「【妨害側】と銘打っている時点で敵ですよね?」


ディフリーフォール・シーが間髪入れずに反論してきた。

早合点ではないのか?と言う前にディフリーフォール・シーに遮られてしまったアレーグ・クワーテは口をパクパクして言葉に詰まった。


「は~いディー君の勝ち~」


手詰まりとの判断をした課長が話を終わらせた。


「ご理解頂けましたでしょうか、つまりはこういう事です。状況判断能力・交渉力などを問われる事もあります。


自分を信じて仲間とぶつかりましょう。


それでは他にご意見はありますか?」


あたかもデモンストレーションの形となってしまったが、他の異議申し立てを募るテテルはモニターを注視していた。


「他のチームのレースにおかしな所は無い様に思えますが、このままNo.2チームに移ってもよろしいでしょうか?」


テテルがしばらく様子を見ていたが誰の声も出てこないので本命に移った。


「それでは皆さん、早速ですがお待ちかねのNo.2チームのレースについての審議タイムになります。


あの高速航行を可能にしているフォード・山岡選手とは一体何者なのか・どのような経緯でイグニスを駆る事になったのか・その操縦技術に引けを取らないアウロラは何者なのか?


それではみなさん、どうぞLet’s異議申し立て!!」


「僕と同期の息子の彼が免許を取った頃から、僕がみっちりシゴいて・・・もうかれこれ十数年になるのかなぁ、彼の父親から預かっていたイグニスを返してからは腕に磨きが掛かってきてねぇ、それでもまだ父親には程遠いけど(笑)


まぁレースに関係ない事は省こうかな。アウロラについては内緒」


アウロラについては質問するだけ無駄だよと、課長が釘を刺しにきた。


「先に俺から言っておきたい事がある。補給船とポッド以外は使用禁止、メイン機とサブ機の指定はルールに無かった。つまり、ルール違反ではない事を伝えておくからそれ以外で頼む」


フォード・山岡の先手でほとんどのメンバーが傍聴側に回り、見届ける形になった。

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ユナイテッドバース こころもち @KitagawaAkira

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