第3話 城光寺の滝
「あっそういえばさ、お前17にもなって夜が怖いってマジwww?」
「はぁぁぁぁぁぁ!?」
あの女!
言ってるじゃねぇか思いっきり!
しかも少し誇張してややこしい方に話してるじゃねぇか!!
「いや。優弥。違うんだ。あっ今日は雨晴海岸綺麗だな!!良い天気だから立山連峰が全部見えてるぞ!」
「快。大丈夫だって。そりゃ誰しも怖いモノは一つや二つあるもんさ(笑)これからは遅くなりそうな時はこのお兄さんに頼ってくれていいんだからな!」
「いや優弥!違うんだって!それは姉さんの悪質な嘘で、全然怖いとかじゃないんだって。」
「強がらなくても良いんだからなぁ〜」
くそっ。
こいつ全く聞く耳持とうとしてないな。
明らかにバカにしてる声色だ。
「あれ〜二人とも自転車乗って何処行くの~?」
前から大きな背負い籠を背負った女の子歩いてくる。
「よぉ!沙希!果樹園行った帰りか?
たっちゃんが沙希ん家のブドウが大好きでな!
楽しみにしてるんだよ!」
「ありがと!!ただ今年はこんな暑いでしょ。
だから収穫時期が早まりそうで毎日行ったり来たりしてんのよ。」
毎日果樹園に行き来しているからか、昔から
沙希は年中日焼けしている。
年齢は俺たちの一個上だけど殆ど同い年のように話せる仲だ。
「あっ沙希そう言えばな!快ってこいつ17にもなって夜が怖いだってよ!ダッサくねぇかw」
「えっ!!それほんと?」
優弥に口止めしなかったことを後悔したが
こいつ口軽い奴だから口止めしても結局喋ってただろうな。。
「いや、だから違くて、、それは昔小さい頃の話だよ」
「強がらなくて良いんだぞ!ちゃんと俺がお前を守ってやるから!ぶふっw」
こいつ俺に恨みでもあんのか。。
腹立つ。
「あんただってクソ垂らしの優弥じゃない!」
「そ!それはお前らが勝手に俺のトイレを覗いてきただけだろ!!クソ垂らしでも何でもあるかぁ!」
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ひなの姉さん:10歳
沙希:6歳
快・優弥:5歳
優弥宅でみんなで遊んでいた時の話
「ねぇ快。優弥何処行った?これからボール遊びしに行こうと思うんだけど」
「さっきトイレ行ってたよ。」
「えっ!さっきって結構前じゃなかった!?
あいつって何かいつもトイレ長いわよね。
何してるのかしら。」
姉さんが悪そうに微笑む。
昔も今も同じ顔だ。
「ねぇ快。ちょっと覗いてみない?
あいつが何やってるか気になるでしょ!
沙希ちゃんも!ほら来て!
少し脅かしてやりましょうよ」
半ば姉さんに無理やり連れてかれて
トイレの前まで来た。
「覗いてやろうって言ったものの普通に考えて鍵掛かってるわよね。
だったら扉をガチャガチャして驚かせてやりましょ!」
姉さんが取っ手に手を掛けた瞬間
扉が開きこちらにお尻を向けて座っている
優弥がびっくりした顔で振り返った。
「えっえっえっ。何で3人ともここにいるの..
てか何で覗いてるの!」
一瞬姉も流石にびっくりした顔したが
直ぐさま楽しそうに
「キャハハハ!くっさ!!ほんとにただトイレしてただけなのね!長すぎでしょあんた!
ほら沙希ちゃんも来てごらん!うんちくさっ!」
「ちょっとお前ら閉めろよ〜」
いつも元気いっぱいな優弥がしおらしく
そんなこと言うもんだから俺も沙希も笑いを堪えられなくなった。
「うわー優弥のうんちくっせぇ!!」
「優弥くんくっさい!うんちうんち!
キャハハ!!」
「やめてくれ〜」
30秒くらい笑ってるところで沙希に異変が
生じた。
笑い過ぎてはぁはぁ言いながら涙を流して
ついに
「はぁはぁ。お腹痛い。もうダメ。。
臭過ぎ。」
....オロロロロロロロロロロロロ
笑い過ぎたからか、臭過ぎたからか
嘔吐してしまった沙希。
みんなびっくりしていたが、本人が一番
びっくりしたようで苦しくて泣き出していた。
更に驚いたことは
泣き声に反応して優弥の母親が飛んできんだけど
何故か一番の被害者である優弥がゲンコツ食らって泣かされていた。
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「あんなに臭いにおい嗅いだの初めてでびっくりしちゃっだもの。仕方ないわ。」
「びっくりするのはいいけど吐くなよ!」
「で。二人ともこれから何処行くの?」
「城光寺の滝の方に行ってくるんだ。」
「もしかしてミツキさんとこ!!!?」
「沙希は連れてかねぇぞ。」
「何でよケチ。」
「俺のうんこ嗅いだら直ぐ吐いちゃうような奴ミツキさんところに連れて行けるか!!」
「あんたがうんこしなければいい話よ。
ねぇ!私も行くわ。ついでにブドウもお土産で渡したいし!
自転車取ってくるから先滝の方行ってて!
私は直接ミツキさんのところ行くからそこで待ち合わせしましょ」
「ちっせっかくミツキさんと会えるのに沙希が来たらお前がずっと喋っちゃうだろうが。」
ボソッと優弥が愚痴を言っている。
「あっ!!快!」
「ん?なに?」
「もしも本当に暗いところが怖かったらお姉さんが側に居てあげるからね♡」
城光寺の滝は雨晴海岸から内陸に入ったところに位置する。
その昔 ここで涼を取るべく滝に打たれていたそうだ。
「昔の看板がそのままあって良かったよな。
これが無かったら絶対迷子になるところだったぜ。」
「イノシシやクマ注意って看板もあったよな。
イノシシは見たことあるけどクマは無いな。」
「ここは昼でも何か薄暗いところだよな。
まぁクマが出たら俺がそこらへんの木の棒を豪速球で投げつけてやるさ!」
「ここはやっぱり気持ちいいな。涼しいし、何より景色が綺麗だ。」
「忘れずにお供物もしないとな。」
滝近くに祀られている不動明王の像の前に優弥はおにぎりをお供えしている。
「優弥は毎回ここに来たらお供物しているよな」
「俺にもよく分からないけど先人への感謝という意味で月にいっぺんは欠かさずにくるようにしているんだ」
「先人への感謝...か。」
滝から流れ落ちる水の音、鳥の声が響く。
「そういえば不思議なことがあってさ。
俺ここに来るたびおにぎりを供えてるんだけど
ここに来るたび毎回無くなってんだよなぁ。」
「ただ後日ここに来た人が腐る前に誰かが片付けてくれてるんじゃないか?」
「でも今まで俺たちここに来て誰かに会ったことないよな。ひょっ・と・し・てお化けの仕業かも〜〜!!その時は俺が快を守ってやるから安心しろよ!!」
「殴るぞお前」
「冗談だって!よし!ぼちぼちミツキさんとこ行こか」
城光寺の滝から出ると強い陽が突き刺さり
じわっと汗が出てくる。
さっきまであんなに静かだったのに、ここは
蝉の声や風の音で賑やかだ。
自転車で駆け降りる中目の前に立山連峰が出てきた。
「立山連峰ってあれ3000mくらいあるらしいぜ
だから上の方は死ぬほど寒いんだと。」
「あっ。。」
俺が指差した方を優弥も見る。
そして数秒後乾いた破裂音が聞こえてきた。
「また落石かよ。立山連峰って元々複数の山が
続いて見えるから連峰なんだろ。今じゃもうただの二つ山に見えるから別モンだな」
真ん中が大きく穴になっており2つに分断されている立山連峰が目の前あった。
「地震か何かで崩れたんだろうな。」
そう口で言いつつも頭に過るのは空に浮かぶ
鯨の存在だった
鯨はまた月へ還る 揚げなすの肉味噌がけ @sweet_tamagoyaki-suki
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