この現実は空想に過ぎないと思うのだが、それを証明する方法が思い浮かばない。~変人学者の異世界解析記~

@yuruouka

嗚呼未知よ、我が望みたる探求よ!

「目が覚める」という行為は大概の場合ポジティブなイメージを持つと私は考えている。

しかし今、目が覚めた私はどうあがいてもポジティブという言葉から最も遠いと思われるだろう状況にいた。

眼を開けた瞬間に飛び込んでくる木漏れ日。

首筋から感じる少しちくりとした草の感触。

鼻から感じる、都会などではまずありえないような強い森の香りフィトンチッド。極め付きは遠くから聞こえる水音や、得体のしれない猛獣の鳴き声。


まあ今の状況を客観的に十文字で説明するならば、「しらない森の中にいる」という具合だ。

その森がどこにあるか「」のではない。いやまあ、どこにあるのかも判らないが。

その森の植生から何まで、「」のである。

ここから導き出される自分が思ったことを、結論を正確に言おう。

正確とはいいことだ。私のような人種はそれを拠り所にしないと生きていけないような人間だから。よく言えば合理的である。偏屈ともいうが。

だがその「正確さ」を今この状況においてだけは私は認めたくないし、信じたくもないということを前置きしておこうか。

正確に、的確に今度は主観的に眺めたことを考察を交え言わせてもらうと、いや、そんな考察を交えることもなく、私自身はとっくに気が付いていたのだろう。

先人たちの知恵などを確かめるまでもなく、生物としての本能が叫んでいる。

」と。

つまり何が言いたいのか?そう問われたらこう答えよう。

「おそらくここはおそらく地球ではない」ということを、言いたいのだ。


何を言っているのかわからないだろう?安心してくれ、私も分からない。

学者の真似事のようなことをやっている人間である私だ。それなりに知識はあると自負している。あるいはそう思いたいだけかもしれないが。

『知は力なり』ベーコンが言った言葉だったか、なんにせよ、知識があるに越したことはない。

それにしてもいつか記憶力を増強させてくれるリスクのない便利な薬でもできないものだろうか――などと柄にもない現実逃避をしていたところで、ふいに音が聞こえた。


物体が高速で動くことによって生じる乱気流から発される音波つまり――――

風切り音。

野球のボールなどとは比にならないような速度と質量を帯びて、それはやってきた。

避けられたのは僥倖と言えるだろう。

気配というものがあった瞬間に身の危険を感じて屈むと、先ほどまで頭のあった位置を目にもとまらぬ速さで茶色の何かが幾つか通り過ぎた。

それは私ではなく地面に当たったようで、「ドゴォォォン」とものすごい音を立てながら隕石のように地面にめり込んだ。


「??」


状況が理解できていないが、どうやら攻撃らしい。ならば必然、追撃が来るだろう。

この威力、そうそう連発はできないだろうが、もし二撃目が来たらさすがによけきれない。

ならばと思い、とりあえずうずくまり、手で最重要な頭をガードしながら動くものが見えたらすぐによけられるように辺りを見渡す。

腕が吹き飛ばされようと頭が無くなってお亡くなりになるよりマシだ。

時限爆弾の可能性もあるので、一定以上の距離を取っておく。

その状態でどのぐらいの時間がたっただろうか。だが、待てど暮らせど二撃目はやって来ない。

こんな当たりやすい格好で居るのに追撃をしてこないなんてことがあるだろうか?

しかし事実、いつまでたっても二撃目はやってこない。周囲に敵らしき気配も感じない。

警戒しながらもゆっくりと立ち上がり、少し歩き回る。

すると先ほどの茶色い何からしき物体が地面にめり込んでるのが見えた。

よく観察してみるとそれは少し割れており、中から白いものが伸びている。


「種…なのか?」


そう。まさしくそれは少し発芽している種だった。何の変哲もない。通常の百倍ぐらいの大きさだという但し書きが付くが。

例えるなら角ばったココナッツのような感じだろうか?

今度は種らしきものが飛んできた方向へ、警戒しながら歩いてゆく。

その先に見えたのは、植物だった。非常に大きい植物だった。

私の背丈の1.75倍…つまり3mほどの植物が、そこに鎮座していた。

するとそこで私はある話を思い出す。

植物というのはバクテリアなどを含めなくても約三十万種もあり、それらも多種多様に繁栄している。

植物、というか生物の至上命題というのは、できるだけ広範囲に多く繁栄することで絶滅を防ぐということだ。

そして植物は基本的には動くことが出来ないという縛りがあるのだ、よって種の残し方も他の生物とはやや違った方法をとられることが多い。

例えば綿毛とともに風に乗って遠くまで移動して成長するもの。

例えば動物などに食べられ、糞となって移動するもの。

例えば水流に流されて移動するもの。

そして――例えば自発的に実を弾き飛ばすことで移動してゆくもの。

問題の植物は大きさこそ常識外れだが、地球にある自発的に種を飛ばす植物によく似ていた。

ここから建てられる仮説は、「私が遭遇したのはただの植物の生存戦略である」。という可能性だ。というかほぼそれであっていると思う。

つまりは、因果が逆なのだ。

私に当たるはずだったものが地面に当たったのではなく、地面に当たるはずだったものが私に当たりかけたと。そういうわけだ。

キャッチボールの誤爆のような話だと独り言ちながら、周囲を確認する。


「おぉ…」


そうして目線を上げると、そこに広がるのはやはり知らない景色。

されどそれは確かに――絶景と呼ばれるものだっただろう。

光合成の効率というものを完全に無視したかのような色とりどりの木々。中には逆さまに生えている木や、水晶のような透き通った幹を持つものもある。

空を見上げると、天空の王ケツァルコアトルと呼ぶにふさわしい悠然と滑空する翼竜。

なんでこんなことになったのかはわからない。そもそもこの場が現実なのかすら定かではない。それでもたった一つの抗いようのない事実。

笑われても構わない。認めたくはないが、認めよう。

『やはりここは異世界であり、そしてこれは現実である』そんな荒唐無稽な事実を。

死ぬかもしれない、明らかに危険――それなのに。

柄にもなく拍動が速くなる。アドレナリンにより疲れが吹き飛ぶ。

目を背けようとしていた忌むべき事実が、自分の中で歓迎すべき事態へと変わってくのを感じる。

思わず顔に手をやると、表情筋が勝手に作動し、顔にいびつな笑みが浮かんでいるのを感じる。

なんとも久々――久しく感じぬこの昂揚。


「望むところじゃないか、未開の地。」


ああどうか、夢なら満足いくまで覚めないでくれ。







――――――――――――――――

ここまでお読みくださり有難うございます。読者様にはスペシャルサンクス。

続編は気が向いたら書きます。

あとこの先には作者の自己満足によって生成されたあとがきしかないので読み飛ばしていただいて構いません。(ちなみに千二百文字)

簡単にあとがきの内容を要約すると

・この小説はもし『魔力とかいう成長促進不思議物質がある世界』があるのならって妄想です。

・木っ端文系中学生の手に余るようなテーマだとは思いますが、結構頑張りはしたつもりです。

・有識者の方は実際はこうなるのではないかとかの考察や面白そうな設定を送っていただいたり、誤謬を指摘してくださると幸いです。

…みたいな感じです。

それではアリーヴェデルチ!さようなら




未知との遭遇。なんていうことを書くと某宇宙人ETが出てくるのは私だけではないはず。そんなことを想いながらこの文章を書いておりますどうも作者ででございます。

自分の一人称や文体というものが定期的にバグってしまう私が言うのもなんですが、一貫性というものは大事であると思います。論理が矛盾している人の話なんて最終的には誰も聞かなくなってしまいます。実際やったことがある作者の体験談ですがね。(なお、現在進行形の模様)

今の話で論理が破綻していないかと言われると私にはわかりせんが。(論理破綻)

まあでも小説とか書いていると簡単に誤謬を作ってしまうのはやはり私の記憶不足というか構成が甘いというか…

そんなわけで皆さん、誤字脱字等ございましたら是非指摘してくださいませ。(奥義人任せ)

さて、話は戻りますがその一貫性というものが大事であるのは人間界だけには留まりません。自然界にも必ず一貫性というものが存在しています。それはルールや法則といったもので言い表すことが出来ますがね。

それが最も顕著なのは数学分野でしょうね。2300年前の証明がいまだに基礎となっており、破綻していない学問なんてそれぐらいだと思います。(ユークリッドさん半端ねえって)

まあ法則の発見というのは何も数学のみに認められた特権という訳でもなく。

例えば理科ですね。元素周期表や、生物の生態。「最適化したものは生き残る」進化論の原則です。

『いつの時代も強者は牙を磨き、弱者は知恵を磨く。』生物にはそれぞれの生存戦略というものがあり、日々最適化させることで生き残っています。

最適化させずに生き残っているのは非常に奇特な例と言っていいでしょう。そもそもそういった「生きた化石」と言われる輩は数が少ないのが常ですからね(系統的遺存種のG黒い悪魔はあくまで姿を変えていない最適化なので見逃してください)

まあそんなわけでこの小説はもし『魔力とかいう成長促進不思議物質がある世界』があるのなら、どんな生態系が築かれて、最適化が発生しているのだろうといういわば作者の妄想により書かれた小説です。

私がこの文章に於いて一貫していたのは書いていて楽しいということのみですね。

作者のような木っ端文系中学生の手に余るようなテーマだとは思いますが、結構頑張りはしたつもりです。

有識者の方は実際はこうなるのではないかとかの考察を送っていただいたり、誤謬を指摘してくださると幸いです。

または触発されて己で小説を書いて下さるのが作者としては一番うれしいです。

もし書いたらリンクを感想等で送り付けてください。忙しくなければ読みます。(受験終了最高!)

しかし私は何かを批評するという行為が苦手なので感想は期待しないでください。

さて、行き当たりばったりに書いてしまいましたが、そろそろ幕にしようと思います。

それではまた次の話ないしは別の話で皆様に相まみえんことを。



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