君の笑顔が見たくて
グラフ
君の笑顔が見たくて〜読み切り短編〜
ーーーーーーーーーー
ユキア「やだ!恐い。こっちへ来ないで」
チンピラA「へへへへ。凄いベッピンさんじゃあないですか。金持ちそうな御一行を襲ったかいがあったぜぇ」
チンピラB「このナイフで傷をつけられたくなきゃ、どうすればいいか分かってんだろうな?」
ユキア「やめて…。汚い手で触らないで!」
チンピラA「いってぇな!すぐにそんな生意気な事を言えないようにしてやるんだから!」
ルック「そこまでだ!!〈邪魔鎖線拳〉」
チンピラA「なんだぁ?こっちはお取り込み中なん…ぎゃあ!」
ユキア「え?」
チンピラB「な、何だこいつ!動きが見えなかったぞ!」
ルック「俺の拳が夢へと掴む希望となる!この手でどんな彼方なる夢をももぎ取ってやる!それは誰にも、邪魔させんよ!」
チンピラA「クソッ!油断したぜ!よく分からんが邪魔なのはテメェだ!〈ソニックウェーブ〉!」
ルック「ふっ。それは残像だ。俺を真の意味で捉える事ができるのは、俺と同等の夢を持つ者だけだ!」
チンピラB「なんかコイツ、スゲェ痛いな!だが背中がガラ空きだぜ!」
ルック「ノールック。貴様らには視えないんだな」
チンピラB「ぐはっ!なん…だと」
ルック「〈ステルスカウンター(不可視の反撃)〉。諦めな。夢無き一撃は俺には届かんよ」
チンピラA「なんなんだコイツ!お、覚えてろよー!」
ルック「ふっ。夢無き者なんぞ、俺の魂の記録に刻む事はできんよ」
ユキア「あ、ありがとうございます!」
ルック「ああ、お嬢様。滅相もない。お怪我はありませんか?」
ユキア「え、あ、お嬢様だなんて。ちょっとビックリしちゃったけど、私は大丈夫よ」
ルック「それは良かった。ただ、従者の方々は…、間に合わず申し訳無い」
ユキア「そんな!見ず知らずの私を助けてくれただけでもありがとうございます!あの、どうして私なんかを?」
ルック「そんなの決まってるじゃないですか」
ルック「君の笑顔が見たくて」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ユキア「スケルトンの討伐依頼。このクエストなら出来そうかな」
ギルドの受付嬢「こちら、Aランククエストです。ユキア様はCランクですので、ご受注される事は出来ません」
ユキア「え!スケルトンってそんなに強かったのね!討伐対象が一体だから、簡単かと思ってたわ。せっかく報酬が凄いのに、残念だわ」
ギルドの受付嬢「個体にもよりますが、一般的なBランク冒険者よりも強いと言われております。ギルドとしては安全の為、Aランク以上の冒険者しか受注を許可できません」
ユキア「あら残念だわ」
ルック「困ってるようですね、お嬢様」
ユキア「えっ!?あ、貴方は先日の…」
ルック「ふっ。俺はルック。お礼は不要ですよ」
ユキア「そんな!先日はありがとうございました!」
ルック「滅相もない。それでクエストだけど、俺がこの方の護衛をすれば問題無いよね?」
ギルドの受付嬢「は、はい!勿論です!SSSランクのルックさんがご同伴されるという事でしたら、何の問題もございません!」
ユキア「え、SSSって、あの最強と言われる『黒きカラス』ですらSSランクという噂なのに!」
ルック「ふっ。こんなランクは指標の一つでしか無いよ。それに、本当に『黒きカラス』と戦ったら、俺は勝てない。アイツの夢はデカすぎる」
ユキア「え?まさかあの『黒きカラス』とお知り合いなのですか?」
ルック「まぁな。同郷のよしみだし、ツバメ関係で、昔少しやり合っただけさ」
ユキア「ツバメ?」
ルック「まぁこの話はいいさ。脱線したが、スケルトン退治に行こう!」
ユキア「あ、はい!宜しくお願いします。報酬は山分けでいいですか?」
ルック「報酬は不要さ。なんなら消費アイテムも全てこっち持ちでいいよ」
ユキア「そんな!どうしてそんな優しくしてくれるんですか?」
ルック「君の笑顔が見たくて、さ」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ユキア「ここですね」
ルック「ああ。ここからは油断出来ないから、この袋に入っているポーションを全て飲んでくれ」
ユキア「ありがとうございます!って、ええ!体力超増強に、防御力倍化、魔法防御力超増強、体力自動回復、状態異常無効化のポーションですか!これらのポーションのお値段だけで、一年は暮らせますよ!いいんですか?」
ルック「勿論。君を危険な所へ連れて行って、もし怪我なんかさせたら、俺は一生、自分を許せない」
ユキア「も、もぉ。凄く大袈裟ですねぇ。私達、知り合って間もないですよね」
ルック「そうかもな。だけど俺は、君と永劫の時を共に過ごしてる気がするよ、なんてな」
ユキア「あはは。面白いお冗談ですこと」
ルック「そうだな。面白い、よな」
ルック「ん、この先にいるかな。ポーションを飲んでくれ」
ユキア「えっ、そうなのですね!では、ありがたく頂きます」
ルック「(絶対に、護るから)」
ユキア「ん、何か言いました?」
ルック「いいや、何でもないよ」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ユキア「お疲れ様でした!乾杯」
ルック「ふっ。乾杯」
ユキア「いやー、やっぱりルックさんは凄くお強いですね!最初はスケルトン、それからもゴブリンキングやシャイニングウルフとか、いつもいつもありがとうございます!」
ルック「そんな事は無いさ。夢無き者には負けないよ」
ユキア「あははは。ルックさんは、凄く『夢』って言葉を意識されてますよね。何か、大きな夢とかあるんですか?」
ルック「ん、『夢』か。君の笑顔を見ること、かな」
ユキア「もぉ。ルックさん、もう酔ってるんですかぁ?またまたご冗談を」
ルック「ははは。そうかもな」
ユキア「で、本当はなんなんですかぁ?」
ルック「うーん。最初は、故郷へ帰る事だったな」
ユキア「そうなんですか?たしか『黒きカラス』と同じ所の出身なんですよね?凄く遠い所なんですか?」
ルック「そうだね。凄く、凄く遠い東の島に住んでたんだ」
ユキア「へぇ。そうなのですね。今は帰るためにお金を貯めてるとかですか?」
ルック「んー、とある人に意地悪をされて帰れないから、帰る為にいろいろ足掻いたけど失敗続きよ。で、それは諦めたかな」
ユキア「え!ルックさんに意地悪する人がいるんですね!酷い。あと諦めちゃったんですね」
ルック「そう。まぁ正確には、諦めたというより、君に出逢えて、ここに居続ける事を決めたという所かな」
ユキア「もう!まだ知り合ってから1ヶ月くらいじゃないですか!」
ルック「ははは。俺にとっては、とても濃厚な1ヶ月だったよ」
ユキア「そんな事ばっかり言って!表情は酔ってないようだけど、顔に出ないだけで、凄く酔ってるんじゃないですか?」
ルック「ふっ。あいにく、毒耐性がマックスだから酔えないよ。特に今夜は、酔ってる場合じゃない」
ユキア「今夜、何かご予定があるんですか?」
ルック「ちょっと、ね。今回こそ、君を守り抜く」
ユキア「あははは。ありがとうございます。いつもいつも、ルックさんには守られてもらってますよ」
ルック「ふっ。君の笑顔が見たくて、な」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ユキア「ありがとうございました!」
ルック「ご苦労様」
ユキア「ではでは〜」
ルック「ああ。」
ユキア「はい」
ルック「うむ」
ユキア「いや、なんでついて来るんですか!?」
ルック「ん、そろっとか」
ユキア「え?なんです?」
サギ「アヒャヒャヒャヒャ!」
ユキア「え!どなたですか?」
ルック「俺の後ろに隠れてろ。」
ユキア「はい」
サギ「ルゥゥゥゥクッ!!その反応は、もう何回もスキル『夢の追求』を使ってるようだな!」
ルック「ああ。貴様からしてみれば初見かもしれんが、この会話も飽き飽きだ」
サギ「じゃあいい加減諦めて、女神様の仰るまま動けよぉ!」
ルック「ふっ。狂信者め。アイツの自己満の為に、このスキルを使ったりはせんよ」
サギ「交渉決裂かぁ!そしたらもう、殺していいよなぁ?」
ルック「俺の事はどうしてもいい。だが、ユキアだけは見逃してくれないか?」
ユキア「え?私?」
サギ「そんな事、出来るわけ無いだろ?お前もこの女のシークレットスキルを女神様から教えて貰ってるんだろ?」
ルック「ちっ」
ルック「ならばお前を倒すだけだ!」
サギ「アヒャヒャヒャヒャ!お前の『夢の追求』が発動してるという事は、俺の『ロックディスティニー(固定されし運命)』で、お前の負けは確定してるんだよぉ!」
ルック「俺の夢は、今度こそお前を打ち破る!『ドリームシューティングスター(願いの流星群)』」
サギ「あまい!『ディスティニーウォール』」
ルック「ちっ」
サギ「『ロックジャッジ』」
ルック「それは残像だ」
サギ「と、思うじゃん?」
ルック「グハッ!」
ユキア「ルック!」
サギ「アヒャヒャヒャヒャ!これで終わりだ」
ルック「あああぁぁぁあああ!」
ユキア「ルック!!大丈夫!?ルック!」
ルック「くそぉ。今回も、駄目、なのか」
ユキア「ルック!大丈夫!今ポーションを」
ルック「ははは。そんな、泣かないでくれよ」
ユキア「ルック!やだ…血が止まらない」
ルック「俺は、このタイミングで、君の笑顔が見たいだけなんだ」
ユキア「何を言ってるの!」
ルック「俺は、ハッピーエンドという夢を追いかけてるだけだ」
サギ「アヒャヒャヒャヒャ!なかなかしぶといねぇ。先にユキアからやっちまうか」
ルック「やめ…ろ」
サギ「だぁめ!コイツのシークレットスキルは、超強力なバフだからなぁ。まだスキルが開花してない、今のうちにやっちまわないとな」
ユキア「私にそんなスキルが…?」
ルック「駄目…だ。ヤツの話を聞くな」
ユキア「使えれば、あの人からルックを救える?」
ルック「やめろ、逃げ、て」
サギ「アヒャヒャヒャヒャ!使わせねぇぞ!」
ユキア「きゃぁ!」
ルック「くそぉ!」
サギ「さぁさぁさぁ!貴様は女神様の脅威となる!だからさっさと始末してやるぜ!」
ユキア「あああぁぁっ!」
ルック「ユキ…ア。くっ、意識が…」
サギ「これでぇ、トドメだ!!!」
ユキア「ルック、ごめん…」
ルック「ユキ…ア。君の、笑顔が…」
システム「ルックの『死』を確認。スキル『夢の追求』を自動発動します。今から時を1ヶ月戻します。ルックとユキアのレベル・スキルは引き継ぎ、『強くてコンティニュー』致します。尚、記憶はルックのみしか引き継がれませんのでお気をつけ下さい。それでは、素晴らしき異世界ライフを」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ルック「また、負けたのか。1ヶ月後のユキアの笑顔を見る事が出来なかった…。なんとか、またユキアと仲良くなり、1ヶ月後のサギとの戦いに勝利しなければ。」
ルック「確か、この先の道でユキアが襲われてるはずだ。早く助けに行こう」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ユキア「やだ!恐い。こっちへ来ないで」
チンピラA「へへへへ。凄いベッピンさんじゃあないですか。金持ちそうな御一行を襲ったかいがあったぜぇ」
チンピラB「このナイフで傷をつけられたくなきゃ、どうすればいいか分かってんだろうな?」
ユキア「やめて…。汚い手で触らないで!」
チンピラA「グハッ!」
チンピラB「なんだこの女!?凄く強いぞ!」
ルック「そこま…」
チンピラA「お、覚えてろよ!」
ルック「え?」
ユキア「あれ、私、いつの間にこんなに力が強く?」
ルック「ここ、俺がカッコよく助けるシーンでは?」
ユキア「あれ、貴方はどなたですか?」
ルック「ノールック。気まずいからちょっと見ないで」
ユキア「あははは」
ルック「(ユキアのレベルが引き継がれた事で、遂にチンピラよりレベルが上がったのか?)」
ユキア「ええと、助けて下さり、ありがとうございます」
ルック「滅相もない。今回は助けるからな」
ユキア「ん?何のことです?」
ルック「今度こそ、君の笑顔を見たくて、な」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ユキア「お疲れ様でした!乾杯」
ルック「乾杯!」
ユキア「この一ヶ月、ルックさんのおかげで、凄く力が付きました!ありがとうございます」
ルック「ふっ。ユキアの実力がメキメキと上がってビックリしたよ」
ルック「(もう一ヶ月経ってしまった。今回はユキアの育成に時間を使ったが、サギには遠く及ばない。サギと今夜出会うことは、サギのスキル『ロックディスティニー』により確定している。どうすればいいんだ!)」
ユキア「何か悩んでおられるんですか?」
ルック「あ、ごめん。ちょっと考え事をしていた」
ユキア「もぉー。ルックさん。ちゃんと人の話を聞いてくださいね!」
ルック「ごめんごめん」
ユキア「それにしても、ルックさんが同伴してくださってるとはいえ、最初はスケルトン、それからもゴブリンキングやシャイニングウルフとか、私が倒せるようになるなんて!夢みたいです!」
ルック「本当に、強くなったよね」
ルック「(このまま夢みたいな事が続いて、サギが来なければいいのに)」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ユキア「ありがとうございました!」
ルック「ご苦労様」
ユキア「ではでは〜」
ルック「ああ。」
ユキア「はい」
ルック「うむ」
ユキア「いや、なんでついて来るんですか!?」
ルック「ん、そろっとか」
ユキア「え?なんです?」
サギ「アヒャヒャヒャヒャ!」
ユキア「え!どなたですか?」
ルック「俺の後ろに隠れてろ。」
ユキア「はい」
サギ「ルゥゥゥゥクッ!!その反応は、もう何回もスキル『夢の追求』を使ってるようだな!」
ルック「ああ。貴様からしてみれば初見かもしれんが、この会話も飽き飽きだ」
サギ「じゃあいい加減諦めて、女神様の仰るまま動けよぉ!」
ルック「ふっ。狂信者め。アイツの自己満の為に、このスキルを使ったりはせんよ」
サギ「交渉決裂かぁ!そしたらもう、殺していいよなぁ?」
ユキア「何方か分かりませんが、私がルックさんを守ります!」
ルック「え!?いや、俺が…」
サギ「そうかぁ!まずはユキアからやるかぁ!」
ユキア「大丈夫です!ルックさんには話してませんでしたが、この間、なんか凄いスキルを覚えたんです!」
ルック「なっ!まさか!?」
サギ「なぁぁぁあああにぃぃいいい!?」
ユキア「スキル『神装〈夢の開花〉』」
サギ「ま、眩しい…!」
ルック「なっ!ユキアの姿が変わった!」
ユキア「あまり恥ずかしいので、見ないで下さいね。だから内緒にしてたんです」
サギ「ふ、ふざけるなぁぁああ!先手必勝!」
ユキア「きゃあ!!」
ルック「ユキア!!」
サギ「これでも!くらえ!『ディスティニーウォール』からの『ロックジャッジ』!!」
ユキア「きゃぁあああ!!」
サギ「これでトドメだぁ!」
ユキア「ああああああぁぁぁぁあああ!!」
ルック「ユキアぁぁあああ!」
サギ「アヒャヒャヒャヒャ!なんだ、凄く呆気無いなぁ。シークレットスキルを獲得していたとは。ちょっとビックリしたぜぇ。ルック戦に温存したかったのに、MPがすっからかんだぜぇ。」
ルック「ユキア…。また守れなかった…」
サギ「これは、ルックはまた今度にするかぁ!またな!」
ルック「ユキア。ユキアユキアユキアユキアユキア!!」
ルック「なんで?サギは去ったというのに、ユキアがいないなんて。ユキアがいない世界なんて、君の笑顔が見れない世界なんて…」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
システム「ルックの『死』を確認。スキル『夢の追求』を自動発動します。今から時を1ヶ月戻します。ルックとユキアのレベル・スキルは引き継ぎ、『強くてコンティニュー』致します。尚、記憶はルックのみしか引き継がれませ……………ユキアのスキル『夢の開花』により、ユキアの記憶の削除に失敗。それでは素晴らしき異世界ライフを。」
ルック「もう何回繰り返してるんだ…。ユキア。君と一緒にこのループを抜け出すんだ。今度こそ、絶対に」
ルック「確か、この道の先にユキアがいるはずだ」
ルック「あれ?ユキアは?」
ユキア「あ!ルック!」
ルック「いたいた。というか、なぜ俺の事を覚えて?」
ユキア「そりゃ1ヶ月も一緒にいたんだから覚えてるよ。でも、確か、私はサギ?って人に負けて…」
ルック「ああ。俺のスキルで、君と出会う一ヶ月前に時間が戻ったんだ」
ユキア「そんなスキルがあったのね!もしかして、今まで何回も繰り返してるの?」
ルック「そうだ。もうこの1ヶ月を、何年分も繰り返している。全ては、『夢』を叶えるために」
ユキア「何年分も!?そこまでして叶えたい『夢』って…」
ルック「簡単さ。君の笑顔が見たくて、な」
ルック「俺は今まで、この力を女神の為に使ってきた。だけど、ユキア、君と出会い、君と最初に過ごした一ヶ月で、俺は君に恋をした。だが女神は、君を殺す事を望んでいる。」
ユキア「そんな…」
ルック「だから僕は、君の為にこの力を使う事にした。それに対抗する為に女神が送り込んだ刺客がサギだ。アイツのスキルの前では、何回繰り返しても、決まった運命に終着する。君がいなくなるという運命に。」
ユキア「ちょっと情報が多過ぎて整理出来ないけど、私がサギという方から助からないと、貴方はずっと繰り返すと言うのね。私の為に、本当にありがとう」
ルック「ふっ。滅相もない」
ユキア「でも、私はその…何回もサギと会った記憶は無いわ」
ルック「ああ。今までは俺しか記憶の保持がされなかったが、ユキアの覚えたスキルの効果で、俺のスキルから記憶を護ったのかもしれん」
ユキア「なるほど!という事は、『決まった運命に終着する』っていうサギのスキルに打ち勝てるかもね!」
ルック「なっ!確かに。前回は、ユキアがスキルの熟練度が低かった事と、俺が動揺して共闘出来なかったが、もしかすると、しっかり用意すれば可能性はあるかもしれん!」
ユキア「そうね!一度見せたんだから、もういいわ。一緒にこの一ヶ月、頑張りましょう!」
ルック「ああ!今度こそ、共に運命に打ち勝つぞ!」
ユキア「ええ!一ヶ月後に、笑い合いましょう!」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ルック「ゾンビがそっちに行ったぞ!」
ユキア「ルックさんに負けてられないわね!スキル『神装〈夢の開花〉』!」
ゾンビ「そ、その力は…!」
ユキア「はぁっ!!」
ゾンビ「ぎゃーー!」
ルック「まさか、ゾンビを一撃で葬る程の実力を身に着けるとは。サギは俺より僅かに強いくらいだ。今のユキアがいれば、間違い無く勝てる!」
ユキア「そうかもしれないけど、もっと強く!確実に勝てるくらいに!」
ルック「あっ!そっちはまだ他のゾンビが!」
ユキア「行くわよー!」
ゾンビ「ぎゃーー!」
ルック「…これは頼もしいな」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ユキア「いよいよ遂に、なのよね」
ルック「そうだ。早ければあと三十分もしないうちにサギが現れる」
ユキア「その時によって、来るタイミングが違うの?」
ルック「うん。サギが来るという運命は決まっているが、時間は毎回誤差がある。」
ユキア「でも、サギが来たら、私と言う切り札が、運命を覆す、というわけね!」
ルック「そうだ。明日を迎える君の笑顔が見たくて、ずっと繰り返してきたんだ。今度こそ倒してみせる」
ユキア「任せなさい!今ならルックさんにだって負けないかもよ?」
ルック「言うようになったな。こんな強気なユキアは間違い無く、過去一だな」
ユキア「お望みではない私かしら?」
ルック「まさか。何回も、何十回もこの一ヶ月を繰り返して来て、君には覚えてない君を沢山見てきた。でも全てが君なんだ。俺には、どのユキアも大切で、愛おしい存在だよ」
ユキア「ずっと、そんな恥ずかしい事を言ってきたんじゃないでしょうね…」
ルック「流石に最初は言ってなかったかな。でも、君を失う度に、君への想いが強くなり、もう我慢できないんだ」
ユキア「もう」
ルック「ユキア。俺はユキアが好きだ」
ユキア「え、この大切な時に…もう。そんなの言われなくても分かってるわよ」
ルック「そうだな。俺は今まで何回も気持ちを伝えてきた。だけど、一回も君から答えを貰ったことはない」
ユキア「…そうね。では、今までの私を代表して、お答えするわね。今までの私が、どんな時間を貴方と過ごしたかは分からない。だけど、たぶんずっと同じ気持ち。私は…」
サギ「アヒャヒャヒャヒャ!いい雰囲気のところ悪いねぇ」
ルック「ホントだよ!せめてもう1分くらい待っててくれよ」
ユキア「……サギ、許さない」
サギ「なんか凄い殺気を感じるぜ」
ユキア「最初から飛ばすよ。『神装〈夢の開花・桜花爛漫〉』」
サギ「その姿は…」
ルック「前回と同じ鉄は踏まない。今回は俺も一緒に戦うぞ!」
サギ「アヒャヒャヒャヒャ!」
ユキア「何がおかしい!」
サギ「いや、女神様が言ったとおりだと思ってな」
ルック「なんだと!?女神が何か言ったなんて、今まで聞いたこと無いぞ」
ユキア「え?」
サギ「女神様は『ユキアのスキルが開花している可能性がある』って仰り、俺にスキルを授けてくれてたんだよ」
ユキア「構わず行くわよ!」
ルック「待て!?コイツに未知のスキルがあるという事だ。慎重にいかなければ!」
サギ「アヒャヒャヒャヒャ!ユキアのスキルがまともに使えるようになったのは今回からなのか?開花を確認できるまで言わないように言われてたからなぁ。ルックは繰り返し過ぎて、新しい事へ弱くなってるんだよな」
ユキア「くっ。ルックと息を合わせる算段だったけど、仕方ないわね」
サギ「これは、相手のスキルを奪うスキル。俺のスキル欄がパンクするまで、俺に触れた対象のスキルを奪えるぜ!」
ユキア「ご丁寧に説明ありがとう!触れられる前に枯れ葉にしてあげるわ!」
ルック「気をつけろ!」
ユキア「(後ろへ回り込んで攻撃するわ!)」
ユキア「テレポート!」
サギ「読めてるんだよ!」
ユキア「そんな!?」
ルック「危ない!!」
サギ「もらったぁぁああああ!!」
ルック「ぐぅぁぁぁあああああああ!!」
ユキア「ルック!!」
サギ「ちっ!ルックに邪魔されたか!」
ルック「おっと!まだ離させないぜ!」
サギ「くっ!俺のスキル欄に、次々といらない流れ込んでくる!」
ルック「全部渡して、ユキアを守り切る!」
サギ「だが、スキル欄は人が取得できるアイテム数は、どんなに多くても2,30個!アイテム欄は千個までスキルが入るんだぜ!つまりお前のゴミスキルを全て奪っても…」
ユキア「ルック!無理しないで」
ルック「ふっ。俺がユキアを守るために最善を尽くしていなかったと?」
サギ「もう百個は奪ってるのに、吸収の止まる気配が無いぞ!」
ルック「俺が今まで、何万年分の時間を繰り返して来たと思う?これ以上スキルを習得できないし強くなれないから、ここ最近はずっとお前に負け続けてるんだよ!」
サギ「くそっ!なんだよそれ!次々流れ込んでくるスキルの熟練度が全てマックスなんだが。化物か!」
ルック「それでもお前に勝てないのは情けないがな」
ユキア「ルック!もうやめて!あなたが頑張って習得したスキルたちが!」
ルック「大丈夫だよ。失ったらまた習得すればいい。君は俺より強かった。スキルを全て奪われたとしても、君なら勝てる」
サギ「離れろよ!本当に上限までスキルを覚えていたのか!?やめろ!いい加減離れろ!」
ルック「離れるわけ無いだろ?一ヶ月のうち、一晩しか会えなかったんだ。今夜くらいゆっくりしようぜ」
サギ「ふざけるな!女神様からユキアのスキルを奪うように言われてるんだ!貴様のスキルで一杯にするわけには!」
ルック「ふっ。もうそろっとだろ」
サギ「…嘘、だろ。マジか。」
ルック「これで安全だ。ユキア!後は任せた!」
ユキア「…ルック。その覚悟は無駄にしないわ!後は任せて!」
サギ「ふざけるなぁ!」
ルック「行けーー!」
ユキア「はぁーーー!」
サギ「何か良いスキルは…!」
サギ「ぐはっ!」
ユキア「かっ!?」
ルック「なんだと!?」
サギ「〈ステルスカウンター(不可視の反撃)〉。使い方分かんねぇが、相打ち…か」
ルック「ユキア!ユキア!?」
ユキア「あれ…、、おかしいな。ごめんね」
サギ「ちっ、任務失敗か。女神様にスキルを消してもらわないとだな。さらば!」
ユキア「サギは…、帰った、のかな。私達、勝てたのかな」
ルック「もう喋るな!クソッ!今すぐ『夢の追求』を発動して時を戻すから!」
ユキア「待…って。無駄に命を散らさないで」
ルック「やだ!ユキアのいない世界なんて、嫌だ!君が、この人生で、やっと見つけた生きる希望なんだ!」
ユキア「あははは。最後まで面白いんだか、ら。確率的に、『夢の追求』だって、サギに取られてるでしょ」
ルック「はっ!本当だ。そんな…まさか」
ユキア「あははは。あ…朝焼け、だよ。一緒に、一ヶ月後を迎えられた…じゃん」
ルック「ああ、そうだ。朝だよ。やっと一緒に迎えられた朝だよ。これからも、ずっと一緒にこの新しい朝を迎えよう!」
ユキア「あはは、は。難題を言うなぁ。ルック…」
ルック「ふっ。いくらだって言い続けてやるよ。永劫の時を共に過ごそう」
ユキア「あはは…は。ルック」
ルック「なんだい?ユキア」
ユキア「好きだよ。愛してる」
ルック「俺もだ。愛してる!ユキア!愛してるよ!」
ユキア「………」
ルック「ユキア?ユキア!?ユキア!!」
ルック「ユキアァァァァアアアアアアア!!!」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
チンピラA「へへへへ。凄いベッピンさんじゃあないですか。金持ちそうな御一行を襲ったかいがあったぜぇ」
チンピラB「このナイフで傷をつけられたくなきゃ、どうすればいいか分かってんだろうな?」
少女「やめて…。汚い手で触らないで!」
チンピラA「いってぇな!すぐにそんな生意気な事を言えないようにしてやるんだから!」
ルック「そこまでだ!!〈邪魔鎖線拳〉」
チンピラA「グハッ!なんなんだコイツ!」
ルック「ふっ。もう一度、あのスキルを習得するから」
チンピラB「何ブツクサ言ってんだ!」
ルック「そして、もう一度やり直すよ。君を取り戻す為に」
ルック「もう一度、君の笑顔が見たくて、な」
君の笑顔が見たくて グラフ @graph38
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます