あとがき
『青春』と聞けば、僕はパブロピカソの「青の時代」を思い起こします。
ピカソは若い頃、友人が自殺をしており、その心象景色がキャンバスを覆っている時代、…つまりピカソの青春は青く、仄暗いそんな景色であるということが、青春とはまさにそうではないかと僕が共感しているからです。
確かに、青春は多くの喜怒哀楽に溢れてることでしょうし、恋にも溢れているのは間違いありませんが、しかし、一方で忘れられない程の心のダメージを受ければ、それを生涯に渡って背負ってしまう時代と言えます。それはその後、大人として心が硬直してしまい、感受性を失ってゆく時代とは違う、柔和で、そして沢山の感情という水分を含んだ土壌のような心の時代が青春時代なのだということを示しているといえます。
そして本作はそうした僕の青春史観が、本作の根本であると言えるかもしれません。
主人公は二人の高校生。
それは四天王寺ロダンと九名鎮真帆。ロダンは難波の空の下をゆく役者志望の一人の若者で、一方、真帆はジャズシンガーを夢見ている高校生。
そんな夢を抱える彼らの前に、事件が起きる。
やがてその事件に青春時代のはち切れない情熱と感受性で二人と、そして多くの若者が加わり、物語を作ってゆき、そしてやがて物語は終わりを迎える。しかし、彼等の青春はどうだったのだろうか?
本作は創元社様の夏企画に合わせて、書き始めたのですが、季節が夏から秋に、そして冬になってしまい、挙句に終わりは作者としてそれでいいのかという疑問を残しつつも、青くていつまで仄暗い青春に生きた彼らの余韻というか優しさが残るように書き終えました。
言葉はいくつあっても足りません。
あとがきを書きながら思ったことは、青春は素晴らしいということを改めて実感したと言うことです。
また執筆中には沢山の応援をありがとうございました。
感謝します。
まずは、ほっとした安堵がありますが、これで本作のロダンの旅をこれからまた書きたいなと思っている次第です。
では、皆さま。
またお会いできるのを楽しみにしています。
2024.1.14
Uru 「振り子」を聴きながら
日南田ウヲ
四天王寺ロダンの青春 日南田 ウヲ @hinatauwo
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