ヒールやピアス、化粧に洋服……。外見を飾るのは楽しみなことである一方、どこか強迫観念を引き起こしたり過度な自己防衛として働く危険なものでもあります。
本作に収録された短歌は全て、己を飾りながらも不安定に揺れ動く心が根底にあるのが魅力です。読み進めながらハラハラする。“わたし”はどこかぶっきらぼうでやさぐれていて、退廃的でやぶれかぶれ。だけどその根底には、「本当の自分を見ないでほしいけれど見てほしい」という切実な思いがあります。
短い言葉で綴られる相反する気持ちが繊細で、そっと優しく手を差し伸べたくなるような、遠巻きに眺めていた方がいいような不思議な心地になりました。