第48話 くだらない/くやしい(4)
ジョンは、血と
賊を見下ろす。
”そこの賊、
過失に
言葉を、
立ち上がる。よりにもよって、こんなくだらない奴に、くだらない奴呼ばわりされて、放置せざるを得ないなんて。実にくだらない始末だった。
「腕一本だったか。もういい。どうせ、このご時世だ。そんなあからさまな
ジョンは、
「―—おい、若造。まだ起きてるか、返事、できるか」
グレゴリが屈み込んで、声をかける。仰向けに寝転がった賊。虫の息ながら、小さく首肯した。
「旦那がやらかした詫びだ。とりあえず、その怪我が多少ましになるまで、面倒、見てやる。片腕もらうのは、その後で勘弁してやるよ。済んだら、あとは、もうどこへなりとでも消えてくれ」
ジョンを見る。お好きなように、と投げやりな視線が返る。嫌な目つきだった。
「―—なぁ、な、旦那に、グレゴリの、そこの若えのの扱いだけんども」
控えめに投げかけられた、
声の主は、場に残っていた傭兵の一人だった。
もう随分
白髪の入り混じる頭を掻きながら、ジョンとグレゴリと苦痛に
「なんだよ、アントン。あんたまで話をややこしくしようってか?」
空気を読めよ、とグレゴリが睨みつける。しかし、相手は同郷ゆえ、気心の知れた身。しかも目上とあって、さほどの効果はない。
「いや、いや、そんなつもりはなんじゃけども。そこの若けえのが体張って守ったっちゅう娘っ子がな。どうも、行き場がのうて、ここに置いて欲しいと言うとんのよ」
絶対、ややこしい話だった。今このときは。なんで言うんだよ、今このときに。
「なんでも、父娘二人で行商やっとったらしいんじゃけど、……そこの若けえのの仲間が、ほら、旦那が言うたとおりよ。勢い余って、父親を殺してもうてな。身寄りもろくにないんとよ。盗られた商材も、さっさと流されてもうたみたいで、無一文とは言わんけど、娘一人、生きていける財もないんとよ」
やめてくれよ、と言いたいが、いまさら聞かなかったことにもできない。グレゴリは、当人にとってのみ非常に残念なことに、そういう男だった。
ジョンは、ただ静かに不気味に押し黙って、
「でな、
アントンは、そこで少し悩んだように、言葉を切って。
「――そこの若えのが命張ったいうんに、この始末は、なんというか、儂、いかんと思うんよ」
アントンは、平たく言えば、頭があまり良くない。つまり馬鹿だった。馬鹿と自覚している馬鹿だった。
一番
「なあ、そこの若えの、腕も立つんじゃし、度胸もあるでな。ここで雇って、兵にしてやったらどうかと思うんよ。したら、若えの二人で暮していけるでな、旦那、そのくらいの給金出してくれるじゃろ。見習いの時分は、儂が面倒見るでな」
暗く淀んだ隻眼もなんのその。空気なんて、そんな小利口、彼は、読む以前に認識すらしていなかった。
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