第8話 天と地
ホテルの照明は、この世のものでないくらい眩しかった。そう佐藤が思ったのは、ここが高級ホテルだからという理由もある。しかし、主な理由は2軍から1軍に上がった事だろう。天と地とは、まさしくこの事を言うのだろうか。そう考えると、うまく眠れそうになかった。明日の先発を任された、という事実だけがぐるぐると回っていた。相手は長村ライガースのエース、横内俊雄。カムバックとも言うべき登板には、胃もたれしてしまうほどの餞別だった。彼と投げ合うと言う事は、この業界において誰もが避けたがる。エースの高本でさえ、横内と投げ合う日は、いつもの笑顔の中に、僅かに殺気が宿っていた。考えれば考えるほど、なぜ自分なのかと思った。死に場所を用意されたのだろうか。そうも思った。なるべく早くその思考を消そうと、布団を被った。その日、佐藤は眠るというごく単純な行為に、一時間ほどかかった。
反骨のエース 銀華 @ginkaa
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