解像

宇井香夏

解像

定刻の電車に乗った 魔法でした 解ける時だけ薔薇になる縄


つやつやのショートケーキがきみに皿を傾けられたからここに無い


病床のきみが夜露に見えたこと砂漠としてとても嬉しかった


meteor(めておあー)? って、きみが言うから笑っちゃう、ばか、泣きなよ、きょう死ぬんだよ


ゆめだから拡大してもはるかぜに傾くきみが綺麗なままだ


二人だから電車の椅子に座れない みたいに受け入れる大火災


愛されることはさみしく花束に結ぶリボンで圧死する蜂


はじめからなかったことに 送信を 桜の写真を取り消している


(あお)きみが肌に塗りまくる絵の具で(きいろ)虹になる(みどり)切り傷


高校生>2年>6月>文化祭>風つよすぎる中庭.zip


きみの目の奥に《詳細を見る》とあって、好きだからさわれない


ネモフィラの海青すぎてつないだ手離せないまま溺れてしまう


さくら降り注いできみをめちゃくちゃな戴冠式のなかで忘れる


わたし魔物だからその花がいつ枯れるかはわかってて きみのことが好きだった


大事には至らなかった大事故の映像ばかり回転木馬


リビングにいちばん遠い部屋だからきみはいつでも浴室にいる


欠けているところが多すぎるパズルのピースみたいに生きてきたよね


北極星を指して回るきみの傘「忘れなくても過去は過去だよ」


火傷まみれの手でつくる雪玉をいくつも食べてくれましたよね


低解像度のなか生きて手が触れてもうわたしたち一匹の蝶

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解像 宇井香夏 @ui_kyoka

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