この偏想(かたおも)いを

金子ふみよ

この偏想いを

会う辛さ会えない辛さ比べよう比べられない愛おしいから


拝啓の後に続く言葉が文字にならず敬具への空欄


私なら乙姫様より鯛になるあなたを舞いでたぶらかせたい


君の声狙撃してきた吾の内はもんどりうつも君は無罪だ


怪物は見たことないけどこの嫉妬(きもち)まぎれもなく怪物である


乳酸菌新商品のヨーグルトそれでも出せぬ宿便の嫉妬


午前五時目が覚めてみてその途端君が屁をするやすらかなるかな


割れろ割れろはりぼてなのかメッキなのか心拍の皮膚ひび入れる狭隘


肩重いそれならきっと生霊の俺のせいだな祓っておくれ


二か月の髪の長さに悶えとかじれったさがあってそれも切る


もうあとはゴミ箱へ行く使い古しのスポンジの傷心


あくびだよ頬伝うのは涙ならミイラになるさ身より心が


一人寝の台風の夜の豆球のまぶしさに消える夢の君


整体で痛みが治る治らない心は一体どこにあるのか


温暖な気候の方が珍しい氷河期の俺まだ溶けもせず


二漕式洗濯機の脱水漕がガタゴト動く未練を見透かし


鍵盤の音域越える絶叫を届けてならぬまた叫ぶけど


せんべいを食うようにして俺を食え枕を濡らす濡れせんべいでも


通い路ようやく気付く花の吾を気付かぬ時のように過ぎ行け


この短歌(うた)は雪合戦と言うよりもガトリングガン君を乱射する

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この偏想(かたおも)いを 金子ふみよ @fmy-knk_03_21

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