エピローグ

1年後。


爽やかな春風が木々を揺らし、軽快な音を立てるのが聞こえる。





......不思議なものだ。

20年近く苦しんだものが、いとも簡単に終わりを告げるなんて。



......



「お父さん、見て見て!」



そこには、新しい学校の制服を着て笑っている、翠の姿があった。


今日は、翠が初めて高校に行く日だ。



「セーラー服、着てみたかったんだ!うわぁぁ、かわいいっ!!」



翠は、鏡を見て目を輝かせている。


あのあと、すぐにでも学校に行かせてやりたかったが、さすがに娘ひとりを育てるとなると、俺なんかの収入では、すぐにどうにかなるものでもなかった。


とりあえず高校1年の勉強は教えてやりながら、なんとか翠が2年生になるまでに、死ぬ思いで金を稼いだ。


翠は、日中することがないのでバイトをすると言っていた。翠いわく、少しでも彼女の学費の足しにしてほしいそうだ。



よほど学校に行きたかったんだろうな。

この時ほど、真面目に勉強しておいてよかったと思ったことはない。



そしてついに今日、翠が2年生になる日だ。


新しい学校で再スタートを切る。

少しの不安はあったが、翠の笑顔がかき消してくれた。



「あっ、そろそろ時間だ!」


「行ってきます、お父さん!」



俺は翠の頭を撫で、背中を押した。



それに俺も、翠と過ごしていて、大きく変わったことがある。


例えば........




















「行ってらっしゃい、翠。」



「うん!」



新しい制服を着て元気に学校に向かう翠の姿は、

世界中の何よりも綺麗だった。

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永遠とも思えた日々は、 @kukushio221

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