第3章 連続殺人事件の真相
第27話 殺人事件なのか事故なのか
「その忘年会のあとは、みんなセントルミル中等教育学校の先生方や関係者がみんな集まったんですから、それはもう大人数です。それぞれみんな解散して、誰がどこに行ったのかも分からなくなってしまいました」
と僕は話す。
「それのどこが問題だと君はいうんだね?」
と問われるが僕は首を振って否定する。
「問題はあります。大問題です。酔いつぶれた
「そうかね。それがそんなにだいじなことかね?」
無海住教頭は不思議そうな顔をしている。
「ここは本当にだいじなところです。皆さん全て目を瞑ってください。一応、皆さん全員に問いかけます。そして酔いつぶれた墨乃地先生を介抱しながら、アパートに連れて行ったという方は手をあげてください」
目を瞑っているのを確認し、手をあげる人がいないかひたすら待つ。
時間にして3分間だ。それでも誰からも手は上がらない。
「皆さん本当に正直になってくれていますか? この墨乃地先生を殺した犯人が誰か僕は分かっています。それを踏まえた上で手をあげてください。ここで手をあげなければ、僕はこれから容赦を一切しません。いいですね?」
と僕はみんなの顔を見回すのだった。
それから1分待っても、誰からも手は上がらなかった。僕はため息をついて話す。
「残念です。誰も手をあげてくれませんでした。皆さん、もう目を開けてもらって大丈夫です。僕としてもここで手をあげてもらえれば、
最後にもう一度みんなの顔を見回す。
みんな、ちらちらと周りの様子を伺っているようだ。
「さて話を戻しましょう。3年前の12月の忘年会。そのとき墨乃地先生を介抱していたのは無海住教頭です。それならば無海住教頭が墨乃地先生を介抱して、アパートへ連れて行ってあげたんじゃないんですか?」
と僕は話す。
「私がそんなことをする訳がないだろう。なぜそんな親切を私がしなくてはならないんだ?」
その返事に僕は首を大きく縦に振って肯定する。僕も無海住教頭が誰かを介抱するなんて場面は想像がつかない。それくらいひどい教頭だと僕は思っている。だからそれをそのまま言葉にする。
「仮定の話とはいえ無海住教頭が誰かに親切をするなんて、失礼だとは思うのですがあまりにも似合ってないです。無海住教頭が墨乃地先生を介抱するなんて、ちょっと僕には信じられません」
ムッとした顔をした無海住教頭は
「君は私に喧嘩を売っているのかね?」
と聞いてくるけれど、これは僕の本心だ。
無海住教頭が見返りを求めずそんなことをするはずがない。墨乃地先生に親切にしたのは、何か目的があったと考える方が僕の中ではストンと落ちる。
「では何故、墨乃地先生のアパートに行っていたと僕は考えたのか? それは僕が色んな人に墨乃地先生のことを話していた時の
『墨乃地先生のアパートの近くに、無海住教頭が1人でいたのを見た気がする。すごく寒い日だった。墨乃地先生に追い出されたのは終業式の日だけで、その日は田魅沢先輩の誕生日でその夜に墨乃地先生は亡くなった。だから間違える訳がない。それを
これを聞いたみんなの視線が無海住教頭に一斉に集まる。
「そ、それがどうしたというんだね。私が墨乃地先生のアパートの近くに偶然いた。ただそれだけのことじゃないのかね!? それだけで私が墨乃地先生を殺した犯人だ、とでもいうのか!」
語気を荒げてごまかそうとしても、もう遅い。
須水根刑事も聞いているんだから。
「ではその点を詳しくお話していきましょう。そもそも無海住教頭は忘年会解散後に墨乃地先生を介抱したんじゃないですか? と僕が聞いた時『私がそんなことをする訳がないだろう。なぜそんな親切を私がしなくてはならないんだ?』と教頭自身が否定しています。
これがまず大前提です。それを踏まえた上で話していきましょう。僕の予想になりますが、無海住教頭は酔いつぶれた墨乃地先生を介抱し、アパートになんとかたどり着いた。すると無海住教頭は、墨乃地先生に前後不覚になるまでさらにお酒を飲ませた。無理やり飲ませたのかもしれません」
と話ながら無海住先生の挙動を僕は注視する。
「そしてヘビースモーカーの墨乃地先生のタバコの吸い殻を探した。そして首尾よく見つけた無海住教頭は、念のため手袋をしてタバコの吸殻に火をつけ直し布団に置いた。そして墨乃地先生を布団に寝ている布団に、そのタバコの吸い殻が墨乃地先生の手から零れ落ちたように配置したんです」
僕は無海住教頭に怒りをこめて話す。
「墨乃地先生を寝タバコによる火災に見せかけて殺したのは
そう言われ鬼のような形相をした無海住教頭が、声を荒げ僕に掴みかかろうとした。それを
色々と格闘技を習っているからどうってことはない。けれども無海住教頭がもの凄く強いなんていう万が一もある。
「ありがとうございます」
身体を張って守ってくれた5人に僕はお礼を言う。
5人に机に抑えつけられながら無海住教頭は
「ふざけるな! そんなことを私がする必要なんてないだろう! そもそも墨乃地先生を殺す理由がない! そうだ、私には動機がない! 証拠もないんじゃないのか!? そうだろう!」
と、まるで勝ったとでも言うかのように嗤い声をあげ、そう叫んだのだった。
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