第25話 怪文書の共通点
そして不平不満を言っていた
「そして最後に怪文書に書いてあった鬼記島先輩たちです。鬼記島先輩たちと僕の初対面は、
そのあと
と鬼記島先輩たちに、にっこり笑いかける。怯む鬼記島先輩たちを僕はゆっくり確認する。
「そこへ丁度通りかかった
そして話をしてみると鬼記島先輩たちが警察に突き出された、という話を聞きました。中学時代とはいえ鬼記島先輩たちを警察に突き出せるほどの腕っぷしの強さをもつ教師、そして鬼記島先輩たちからは『ろくな先生じゃねえ!!』と評価されたのが……」
「
と田魅沢先輩が呟いた。
「そうです。怪文書に『調べろ』と名指しされた人物を、僕は調べていきました。そして3回目の怪文書がまたしても届きました。今度は『このまま墨乃地康太郎の殺人事件の犯人が捕まらないなら、また人が死ぬぞ』と書かれていました」
一人一人の様子を見る。
「そもそもでいうならこの時点では、墨乃地先生の火災は事故と警察も断定していました。ですがこの怪文書を送った人物は殺人事件と書いています。そしてまた人が死ぬぞ、とも書いてあったんです」
みんな下を向いてしまう。
「どこから調べても結局のところ墨乃地先生にたどり着くんです。でもこの怪文書をだした人物は『犯人が名乗りでなければ、犯人を殺す』とも言っています。これはある事実を示しています」
「事実って言われても、何が分かるって言うの?」
と北倉さんは首を傾げる。
「怪文書をだした人物は、犯人が分かっていないということです。分かっているならこんな騒ぎを起こさずに、犯人をさっさと殺せばいいんです。殺すとアピールすることでむしろ警察の警戒度は上がります。
こんなことをすれば当然、犯人を殺しにくくなるんです。であれば怪文書の人物は何がしたかったのでしょうか?」
怪文書を見ながら、怪文書の人物の思考回路をなぞり説明する。
「この怪文書の共通点は墨乃地先生なんです。でも犯人からすれば、今のセントルミル中等教育学校の高等部の3年生であれば、本当は誰でも良かったんだと思います」
「なぜそう思うの?」
と北倉さんは不思議そうな顔をして、僕に聞いてくる。
「名指しされた先輩方が中等部の3年生だったとき、墨乃地先生は亡くなっているからです。調べれば自然と墨乃地先生にたどりつきます。その中でも特に関わりが深かった城鉈先輩、田魅沢先輩、そして鬼記島先輩が選ばれたんだと思います。
大前提としてこの墨乃地先生の火災は、タバコの不始末が原因の事故として処理されました。これに納得がいかなかった人物が、この怪文書をだした人物だと僕は考えています」
と僕は言ってその人物を見つめる。
「そうね、怪文書をだしたのは私よ」
と僕が見つめた相手は立ち上がり名乗りをあげた。それは
名乗りを上げた桧山先生をみて僕は頷く。
「そうですよね。この怪文書をだしたのは桧山先生です。では何故この怪文書をだしたのでしょうか?」
桧山先生が話しだせばそのまま聞くつもりだし、話さないなら僕が話すつもりでいた。
桧山先生は名乗りをあげたけど、ためらっているように見えた。じゃぁ、僕が話して答え合わせをしていこう。
「まず怪文書の件で言ったのですが、『犯人を殺す』といってしまえば警察の警戒度があがるんです。巡回も警備も増えるでしょう。事実上、誰にもバレずに犯人を殺すのは、ほぼ不可能になります。なのに殺すと書いたのは桧山先生に犯人を殺すつもりがないからです」
僕は桧山先生の顔と挙動を見ながら話をする。
「そうね、私に犯人を殺すつもりは毛頭ないわ。でも
「全ては桧山先生の婚約者だった墨乃地先生のためです」
そういうと桧山先生は誰が見てもわかるレベルで身体をビクッと震わせ
「……それで?」と僕に問いかける。
「僕が
桧山先生は僕を睨んだまま、立ち上がって僕の話を聞いている。
「城鉈先輩を勉強させるための作戦や、田魅沢先輩へのちょっと変わったアドバイス、分からないところを分かるまできちんと教えてあげる姿勢も実にいい先生です。
そして鬼記島先輩たちを警察へ突き出した腕っぷしの強さ、色々調べてもいい先生だなという感想しかでてこなかった。そして良い先生だからこそ恨みを買うことはなさそうだ、と考えました。
だからこそ逆に、誰かに嫉妬された可能性はあると思ったんです。」
桧山先生の目が真剣に僕を見つめる。僕はまだ桧山先生の期待を裏切ってはいないらしい。
「そして色んな人から聞いた墨乃地先生の話を考えました。ヘビースモーカーで職員室の机には、タバコの吸い殻が山のようになっていた。けれどもお酒には弱かった。また男子女子の両方から人気があり、慕う生徒は多かった」
桧山先生に落ち着いてもらえるように、僕はゆっくりと話を続けるのだった。
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