第20話 嘘をついたのは誰なのか?
今日は1998年12月22日だ。昨日、
「昨日は大騒ぎでしたね」
と僕は軽く話しかける。
「
との葉積用務員の問いに
「今度は僕がお話を伺おうと思いまして」
と微笑みかける。
「大丈夫なの?」
と心配そうに聞いてくる。僕は
「なんでも話してみないと分からないものですよ?」
と、おどけて見せた。
「すみません。お待たせしました。角田校長のことで改めて聞きたいことがありまして」
と僕は葉積用務員に話す。
「俺はなにも知らねぇよ」
と葉積用務員はぶっきら棒に話す。
「知らないと言われても、角田校長を見たって重要な発言されているでしょう?」
と僕は聞いてみる。
「ああ、そのことか。見たさ、間違いない」
と答えた葉積用務員は植木の手入れを続ける。
「分かりました。では事件当日11月24日22時から24時頃に葉積用務員さんは何をしていらっしゃいましたか?」
という僕の問いにも
「前にも話した通り、テレビを見たり好きな小説よんだりして時間つぶしてたさ」
と器用に枝を切りつつ答えてくれる。
「それを証明してくれる人はいますか?」
と型通りの質問に
「いる訳ないだろう。学校には誰もいないんだから」
「誰もいないのに角田校長は見た?」
「あっ、いや。校長とは会ってないんだ。いつ帰ったのかも知らねぇ。俺は帰る。用事があるんだ!」
慌てた様子で作業道具を持ってその場からいなくなった。
僕は当然、須水根刑事にその話をした。
そして須水根刑事は「よくやった!」と大きく頷き、部下と一緒に葉積用務員を探しに行った。葉積用務員から根掘り葉掘り矛盾点を聞くつもりだろう。
葉積用務員を問い詰めるのは、須水根刑事に任せた方がいいと考えた。僕が問い詰めても忙しいからとか何かしらの理由をつけて、きっと逃げるだろう。それなら須水根刑事に任せた方がいいと思った。
僕に残された時間を考える。あと2日間だ。これが僕がこの事件に捜査協力できるタイムリミットだ。事件を解くための手がかり、最後のワンピースがどこからでてくるのか? その予測は不可能だ。だからいつも通り生徒みんなの話を聞いていく。ここで
◇
1998年12月23日は祝日で何も情報を得られなかった。僕はルミール橋から見える夕焼けを眺めていた。地平線がオレンジ色に光り、そこから広がる幻想的な景色に、ほぅっとため息が漏れる。夕食を買おうと考えてデパートに向かう。そこで城鉈先輩の彼女の
「おぉぅ。どうした井波田? 深刻そうな顔してなんかあったのか?」
「えぇ、まぁ、あと1日しかこの学校に居られなくなってしまって」
と落ち込みながら話した。
「なんだそりゃ、そんなにこの学校が嫌いなのか?」
と田魅沢先輩は自分の髪を人差し指でくるくる回しながら聞いてくる。
「そんなことはないですよ。楽しいなって思ってきたところなんですから!」
僕はフンっと気合を入れて、気を取り直す。
「そういえば田魅沢先輩は
墨乃地先生の話はぶっ飛んでいるようでいて、割としっかりと考えられている。それを考察するのも面白かったし、桧山先生のこともある。調べておきたかった。
「墨乃地先生の作戦か……聞きたいか?」
ニッと笑った田魅沢先輩を見て
「聞きたいです!」
これはもしかしたら墨乃地先生の話が聞けそうだと期待する。
「色々あったんだぞ? 落ち込む井波田にあたしからの出血大サービスだ。思い出せるだけ話すから勝手に聞いて元気だせ!」
「ありがとうございます!」
と答え、僕はヨシッと静かに拳を握るのだった。
◇
デパートより話がしやすいと思われる公園のブランコに腰をかけ、ジュースを飲みながら僕たちは話をすることにした。
「どこから話したらいいものか」
と田魅沢先輩は難しい顔をして考える。
「よし、ここから話をしよう。墨乃地先生は『一緒にいる作戦を実行して勉強する習慣をつけさせることに成功したら、
中学男子が考えることなんて、女の裸とかそんなんばっかりだ。城鉈の場合は……そうだな。家に来ないか? なんて誘われたら、
ニヤニヤ笑った田魅沢先輩は
「『こんなことを生徒に言ってたなんて皆に知られたら、割と本気で
公園から地平線に広がる綺麗な夕焼けを見ながら田魅沢先輩は笑ってた。隣のブランコに座る僕も別世界にでもいるような不思議な気分だった。
「結構めちゃくちゃなこと言ってますね、墨乃地先生って」
「そう思うだろう? でもあんまり
どういうことになったんだろうと僕はその続きを待つ。
「そしたら墨乃地先生が『城鉈、お前は学校を首になった俺の面倒をみてでも、田魅沢とセックスしたいのか?』 ってド直球で聞いてさ」
僕は飲んでたジュースでむせてしまった。
「『誰が墨乃地先生の面倒なんかみるかよ!』 って缶太は反論したんだ。そしたら『首になった俺の面倒をみる覚悟すらなく、
相変わらず独特な発想の先生だ。でも僕はそういう思考回路はキライじゃない、とニヤニヤしてしまうのだった。
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