Day31「遠くまで」

「まさか県外までついてくるとは思わなかったよ」

「俺もまさか遠出になるとは思わなかった」


 福引で引き当てた神チケットでもって展覧会を楽しんだ帰り。隣には勿論神の手を持つ彼がいた。


 会場が隣県の大きな美術館だったから、ついて来ないかもと思っていたのだが、なかなかどうして、彼は律儀だった。


 まあわたしとしては交通費だけで見に行けたのだから文句はない。


 ただ彼の懐事情が心配になっただけ。


「絵の魅力に気付いたってことかな?」


 それは喜ばしいことだと頷いていると、彼は心外そうな顔をした。


「何度も言うが、絵に『は』興味ない」

「ここまで来ておいて何を仰るやら」

「俺が興味あるのは別のことだ」


 何だろう。今日乗った電車かな。



*神チケット…Day25「報酬」

https://kakuyomu.jp/works/16817330659678655821/episodes/16817330660883945149

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