Day9「肯定」

「これも絵、なのか?」


 隣で彼が呆然としている。


 大きなキャンバスに一色だけドーンと塗られた作品は、初見だと確かに戸惑うかもしれない。


「万人に理解される作品って、わたしは存在しないと思うのよ」


 絵の見方に「正解」はない。もしかしたら作者自身「正解」が分かっていない場合もあるかも。

 絵が完成して作者の手を離れた時点で、その絵の解釈は見る人が自由に考えればいいとわたしは思う。

 好き嫌いも、絵なのかと戸惑うその心も否定されるべきではない。それもまた鑑賞の面白さだ。


「だから、わたしはその意見も肯定するよ」


 欲を言えば、同じ絵を見て同じように好きと思ってくれる方が嬉しいけれど。



 まあ彼にそこまで期待するのは無理かな。

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