Day8「こもれび」

「あ」


 つい声が漏れた。


 何気なく目を向けた先に彼女の姿があった。よく一緒にいる友人と並んで、学食前の銀杏並木の下を歩いている。

 梅雨の合間、貴重な晴れの陽光が木漏れ日となって、彼女と友人の二人を優しく包んでいる。


 彼女たちもこれからこの学食で食事だろうか。


「おい。『あ』って何なんだよ、『あ』って」


 一緒に昼飯を摂っていた同期の奴が、耳聡い上に俺の視線の先に気付くとニヤけた顔をした。


「その顔やめろ」

「オレ何も言ってないけど」

「顔がうるさいんだよ、顔が」

「顔がうるさいって何だよ! こちとら生まれてこの方あっさり塩顔だよ……って、痛ええ!」

「周りの迷惑だからやめろっての」


 デコピン一発。こいつは全く学習しない。

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