Day6「アバター」

 講義が終わったというのに、彼女がスマホを見つめたまま動かない。確か次のコマでこの講義室を使うことはない筈だから支障はないが、声をかけるべきか。


「あ、お疲れ」


 近付いてみると、彼女の方から声を掛けてきた。美術館にいるときはスルーする癖に、こういう時は気配に敏い。


「講義終わったぞ」

「分かってるけど」


 項垂れる彼女のスマホを悪いと思いつつも覗いてみると。


「……何だその奇妙な生物」

「……アバター」

「は?」


 アバター?


 この軟体動物というかベタな宇宙人のイメージというか、正体不明のへにょへにょした奴が?


「体験型のデジタルミュージアムで作ったんだけど」


 やっぱ変だよね、という彼女の言葉を否定することはできなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る