Day5「蛍」

「蛍って写真だと途端にチープになるな」


 そうぼやきながら友人がスマホの画面を見せてくれた。暗闇に何かが浮遊している、ような気もするような、何とも説明しづらい抽象画のような写真だった。


「スマホで私の腕だとこれが限界だ」

「こういう絵だと言われれば、まあ、ありっちゃあり」

「あんたはブレないねえ」


 やっぱり自分の目でリアルに見たものには敵わんわ、と蛍を見るためだけにわざわざ自転車をかっ飛ばしたという友人はため息を吐いた。


「分かる! やっぱり好きな絵は美術館とかで間近で、リアルで見たいよね! あの感動は目の前で見てこそ!」

「いや、それで分かると言われても困る」

「何でだ」

「あんたの絵に対する愛と同列では語れんよ」

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