Day2「透明」

 またか。

 隣にいた筈の彼女がいない。


 仕方なく邪魔にならないよう苦心しながら順路を遡ると、ある絵の前で立ち尽くしている彼女の姿を見つけた。胸の前で手を強く握りしめ無言のまま、寧ろ呼吸まで止めているような静けさで絵を見つめている。


 今の彼女の視界には、他の絵も周囲の人たちも入ってはいないのだろう。

 勿論、俺も。

 二人の距離が空いても気付いてくれない、それが証左。


 その事実が予想していた以上に堪えた。


 何とか彼女に気付いて欲しくて、視界に入れて欲しくて、こうして興味のない展覧会にも勝手ながら同伴させてもらっているが、報われたことは一度もない。


 絵には勝てない。


 隣に立てたとしても、結局俺は透明な存在でしかなかった。

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