Day1「傘」

「嘘ぉ!」


 朝晴れていたので完全に油断していた。

 美術館に篭ること数時間、まさか土砂降りの雨になっていようとは。


 展示品を太陽光から守るため展示室には窓が設置されていない。防音も完璧なため、空模様にも雨音にも気付けなかった。

 何たる。


 デキる女なら、ここでスマートに折りたたみ傘を取り出すところだろうが、こちとら日傘ひとつ持っていない残念な身だ。

 何を望めと。


 こうなったら、もう一周見るしかないか。


 半ば本気で玄関から引き返そうとしたとき、雨で烟った景色を割くように近づいてくる長身が見えた。


 え、何で。


「やっぱり今日もここだったな」


 ほら傘、と差し出されて驚く。


 何でこの人、こっちの居場所と傘持ってないの知ってるの。

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