第1話 お嬢様、どうかされましたか?

学校では家での私とは正反対。

特別変わったことをしているというわけでもなく、普通の男子高校生。

お嬢様も友好関係はしっかりと保っている様子。


もしも、お友達と喧嘩でもしたら、私がサポートしてやらねば。


「光くん!相談があるの!」


「あ〜ちょっと待って〜今すぐ行くから〜」


涙目で助けを求めるお嬢様、そんな姿までも可愛いと思ってしまう。

私がいないと、何もやっていけない。そんな、箱入りお嬢様なのですから。


ーーー校舎裏。


「お嬢様、最近私を呼びすぎでは?」


「もういいから!」


「早風南はいつでも冷静沈着じゃないんですか」


「そうね」


一瞬で切り替わるお嬢様、流石。


「ご用件は」


「お友達と喧嘩してしまって、、、」


「お嬢様が!?今まで喧嘩なんてしてこなかったのに!」


「お友達が消しゴムを取ってきて、それがしつこかったから、つい怒ってしまったの。「今すぐ返さないと窃盗罪になるわよ。懲役10年以下又は、50万円以下の罰金になるわよ」って」


「まぁまぁ、リアルなとこついてきますね。しかも、お嬢様って法律まで勉強なさっていたのですね」


「まぁね」


そんな関心をしている暇はない。

お友達と喧嘩なんて、今まで聞いたことがない。

正直「消しゴムでそんなことなりますぅ、、、?」と思うが、喧嘩は喧嘩として扱うことを選択した。


「まぁ、私がなんとかする問題ではなさそうですけどね。まずは謝ってみましょう」


「はい、、、」


しょぼんとした表情になるお嬢様の背中をさする。

励ましやサポートも仕事の内。この一年半の間、ずっとやってきたのだから。


「謝る時はストレートに謝りましょうね。自分のプライドを捨てて、まずは謝罪ですよ。お嬢様、たまにまわりくどい言い方して、私のこと困らせるじゃないですか」


「まぁ、、、そうね、素直になってみるのもいいかもだわ」


万事解決です。

まぁ、私のレベルになると、キャリアが1年半でも余裕ですね。

こんぐらいの仕事なら、お手のもの。成功の報告を待つとしますか。


そして、教室に帰った。


「でさ、光その時に犬と猫が突進しあってて」


「マジかよ!その話超面白いな!あははっ!」


「光くん!」


「はいはい!すぐ行きますから!」


「お前、やっぱり好かれてるよな」


「うるさい、お前は黙ってろ」


「へいよ」


お嬢様の話の前に、今さっき話していた相手はクラスの親友である【横島よこじま 俊輔しゅんすけ】。

黒髪の男にしては少し長めのサラッとした髪の毛。性格は優しく、軽音部に属しているギターボーカル担当。

カラオケではいつも主役になるほどの、歌の上手さ。


私にも少し分けてほいいぐらいです。


ーーーそして、再び校舎裏へ。


「解決しなかったのよ!」


「素直に言ったんですよね?」


「言ったわよ!もちろん!」


「どうやって」


「「謝ってあげるから、そっちも謝りなさい」って言ったのよ」


「全然素直じゃないじゃないですか!」


「いや、私の思ったことを素直に」


「そう言われると、言い返せない、、、」


なんともめんどくさいことをするお嬢様、あと相手も相当めんどくさい。

これは強敵ですね、、、。


頭をフル回転させる。

一般家庭で生まれ育った、私ならそんな場面は何度もあった、しかし、お嬢様に私の考えることを言わせると、、、。


「ゴメンナサイ」


的な、気持ちのこもっていない声になる。

じゃあどうすれば、、、。


「あっ!」


「何か、思いついたの?」


「お嬢様、携帯を貸してくださいませ」


「いいけど、、、一体なにをするの?」


「【ボイスチェンジャー】です!」


【ボイスチェンジャー】!

機械を通して、自身の声を全くの別人に変えることのできる機械で、よくドッキリなどの用いられることが多い。


「こんなこともあろうかと、お嬢様の声のサンプルは作ってあるので!」


「アニメでよく聞くセリフじゃない!」


「ラインで電話すればいいんですよね?」


「ラインのトーク画面開くから、ちょっと貸しなさない」


「はい」


高速でスクロールをして、的確な位置でストップ。

そういえば、ルーレットも的確な位置で止めれるお嬢様。これも、流石。


「じゃあ、電話するわよ、、、」


「はい、、、」


通話ボタンを押そうとしたその時だった。

背後から誰かが歩いてくるのに気がついた。

後ろを見ると、お嬢様が喧嘩した相手である【和泉いずみ 菜緒なお】がいた。


こっちに向かって、歩いてくる。

俺はとっさに、逃げようとしたが、お嬢様に背中を掴まれ逃走失敗。


ーーーなに考えてるんですか!?関係がバレますよ!


心の声は届かなかった。


「二人とも、ここで何してるの?」


「あ、あの、、、菜緒ちゃん、、、さっきh」


「さっきはごめん!私が悪かった!低レベルなことしちゃったよね、、、!本当にごめん!」


私は安堵のため息を漏らし、そのままお嬢様の手が離れたところで、空気を読んでこの場を退場。

一件落着ということで。


今日も仕事、疲れましたね。


その後はゆっくりと、教室に戻った。

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本当、ダメダメお嬢様ですね。高校生執事の俺、お嬢様を全力でサポート致します! @kanae_kaki

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