本当、ダメダメお嬢様ですね。高校生執事の俺、お嬢様を全力でサポート致します!

@kanae_kaki

プロローグ 

私の名前は【七瀬ななせ ひかる】。

一般的な家庭で生まれ、そこそこの成績の普通の高校生。

そんな、私のしている仕事のルールは『決して情報を外に漏らさないこと』。


「七瀬、紅茶を入れてきて頂戴」


「お嬢様、承りました」


多くの子会社を抱える超大企業である【早風カンパニー】の一人娘。

早風はやかぜ みなみ】年齢16歳、高校1年生。

俺と同い年のお嬢様、顔は人並み以上であり、一時期はモデルとして活動していたこともある、自他共に認める超絶美少女。


顔は童顔で、いわゆる『可愛い系』をしている。

しかし、言葉遣いや立ち振る舞い、その私生活に関わる全てに対し、大人びている。


小さい頃から、教育はしっかりとしていて、頭も良い。


静寂に包まれる、部屋の中。

俺は静かに紅茶をカップの中に注ぐ。


「ありがと、七瀬」


「では、私はここで」


「ちょっと待ちなさい」


二人には決して身内にも言えない、関係がある。

それは、二人が理解している訳でもなく、ただただ私が勝手に自己解釈をしているだけなのですが。


「七瀬、私の隣にいておきなさい」


「分かりました」


お嬢様から、好意を持たれていると言うこと。


七瀬は無表情を貫き、早風は少し頬を赤らめた。

緊張していたのか、早風の手が少し震えている気もした。


ーーーやっぱり、お嬢様は可愛いですね。


声に出して言えるはずもなく、若干呆れたような気持ちで呟いた。

私が別に好きと言うわけではないのですが。




→ーーー★☆★ーーー←




この仕事は、お嬢様の身の回りの世話をすること。

正直、何もできないお嬢様のお手伝いをするのは給料に見合わないほど、重労働である。

しかし、お嬢様は私がいないと何もやっていけない。


そう思うほど、この仕事を続けなければいけないと思ってしまう。


「今日は体育祭の準備がありますね」


「そうね」


私たち二人は【聖学社中学校・高等学校】という学校に通っており、お嬢様は中等部から、私は高等部からの生徒。

クラスは校長に頼んで、離してもらっている。

正直、色々な面で不安な部分があり、私はこの意見に反対の意を見せたのですが、『いつか自立しなければいけない』そのような、お母様からの意見もあり、クラスを離すことになっている。

クラスが離れても、休み時間などは普通の友達としてお嬢様とは接している。


学校では普通の友達であり、家では使用人として。


この嘘をいつまでつき続けなければいけないのか。


「行ってくるわ」


「行ってらっしゃいませ」


送り出しが終わると、高速で制服に着替える。

そして、朝食は車の中でとり、高校までスマホをいじる。


お嬢様の熱望で、通学も電車になったが、元々は全て車だった。

電車通学に慣れるまで、約2ヶ月がかかるほど覚えが悪く、しかし勉強のことになると、学年一位を二位を30点離して取るほどの優秀さ。


ちなみに、俺の順位は三位。

TOP3から落ちると、お父様から減給と言われているので、超ハードワークな生活を送っているのであった。


「よろしくお願いします」


運転手の人に頭を下げ、乗車。

メロンパンを食べながら、学校へと向かった。


スマホではTmitterを確認し、朝のこの時間と夜の寝る前の時間の、Tmitterタイムが俺の至福のひと時だった。


中学生まではこんな生活じゃなかったのにな。




→ーーー☆★☆ーーー←




「七瀬、お茶買ってきなさい」


「お嬢様、学校ではただの友達ですよ。つまり、お嬢様は俺にパシってるということです」


「どうでもいいわ、買ってきなさい」


「嫌です」


「執事でしょ!」


「だから、学校では違いますって」


校舎裏、昼休みはいつもここで落ち合うという決まりになっている。

近況報告などがメインなのだが、、、。


「お弁当を持ってきたので、一緒に食べましょう」


「そのつもりだったわ」


仕事のことはあまり、プライベートには持ち込みたくない主義なので、基本的には昼食をとる時間となっている。

毎日校舎内では、お嬢様を探している方が多数いるらしい。


聞いた話によると、ほとんどは女子生徒。

同性にもモテモテなお嬢様。

私たちの関係が誰かにバレたら、どれだけの人が羨ましがるのか。


面白そうですね。


「お嬢様、学校ではなるべく話しかけないでくださいね」


「?」


「相手は高校生です、まぁ、私たちもですが、こういう時期は恋愛話が盛んになると聞いたことがあるでしょう。つまり、私たちが付き合っているなどと噂されたらたまったものじゃありません」


「私は別にそれでいいわ」


「え?今なんと」


「だから、私は別に七瀬と付き合っていると噂されても良いと言っているのです」


「お嬢様、不意打ちはやめてくださいませ。私も心の準備というものがありまして」


「何を言っているのか、さっぱりわからないわ」


冷静沈着なお嬢様、それに対し、執事という私が落ち着いていなくてどうする。

小さく咳払いをし、お嬢様を見つめる。


「あのですね。こんなことがお父様にバレたら、お叱りを受けますよ?」


「お父様のバカ、、、」


「え?」


「何も言ってないわ」


お嬢様、その気持ち、私に早くストレートに伝えてくれませんかね?




→ーーー★☆★ーーー←




「お父様のバカ、、、!」


南は大きなベッドにうずくまり、そう叫んだ。

ーーーいつまで経っても、七瀬と付き合えないじゃない、、、。


届かない思い、禁断の恋。

それはいつ実のか。


執事とお嬢様の関係に終止符を打って、恋人関係になりたい、、、。

七瀬なら私のこともきっと守ってくれる。


高校一年の頃。

初めて出会ったあの時、外部との接触をほとんど禁止されていた義務教育時代の私にとっては、頭が良く、性格も良い、それに気遣いまでできる、人間の鏡のような人に出会ったと思った。


あぁ、、、手を繋ぎたい、、、。


キスをしたい、、、。


使用人たちの中で生活してきた彼女は、一才の愛情を受けたことのない。


七瀬を恋人にしたら、私の夢が全て叶う。

大学生になったら、お父様も『自立しなさい』と言っている。


つまり、高校の間に七瀬を私の【お嬢様】という立ち位置から【大切な人】に変えなければいけない。

変えないと、もう会えない人かもしれない。


そう思うほどに、胸が痛くなった。


「「高校終わったら、どうするのかな」」


各々の気持ちを抱えたまま、自室で眠りについた。

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