第5話 黒猫との日々
雨の日の事です。
店休日にララさんと一緒に買い物です。
パンにイチゴジャム、バターにハム、私がおねだりしてコーンスープの材料です。
帰り道は寂しい気分です。私は隠れて桜色のリップを買いました。最新の商品で一部の店でしか買えないレアな一品です。
その後、三階の自室で鏡に向かいリップを付けます。
クルリと一回転して気分は最高潮で、演劇のトップスターになった様です。
『コンコン』
うん?ドアをノックする音です。ララさんだ!
私は急いでリップを落とします。
「カナナさん、コーンスープの準備が出来ました。一緒に飲みましょう」
「は、はい」
私は動揺した様子で返事を返すとララさんと一緒に階段を下ります。でも……何でララさんから隠れてリップを付けていたのだろう。
それは微かな恋かもしれない想いです。
「ララさん、今までお昼の休憩はどうしていたのですか?」
午前中のお客さんが途切れた時に質問する。それは私がお手伝いを初めてからは交代制で回してきたからだ。しかし、ララさんは寂しそうに語りだす。
「一年前のお爺様が死んでしまうまでは二人でこの『にゃんこ族の小部屋』を経営していたの」
私は聞いてはいけないことだと思った。どうすればいい、ララさんを傷つけてしまった。
「そんな顔しないで、にゃんこ族は孤独になる事が多いの。私とお爺様は故郷の村を出て長い旅の末にこのサンディンにお店を開くことにしたの」
「それは私と同じで外の世界が見たかったの?」
「少し違うけれど、似たような理由です」
「そっか……」
「でも、こうして、カナナさんと出会えた」
「えへへへへ、照れるな」
私達は眼が合うと手が絡んだ。
「さ、お昼にしますわね」
ララさんは恥ずかしくなったのか奥に行ってしまった。さて、独りのお仕事の時間だ。私はお客さんが来ると普通に接客していた。
普通って何だ?
プロとして一人前なのか?
私は小首を傾げながら次のお客さんを待つのであった。
***
今日も店休日が近づいてきます。私は予約した魔導キックボード取りに行きます。
ララさんは魔導キックボードを見るのが初めてらしくチラシを羨ましそうに見ています。
「一緒に乗る?」
「二人乗りは危険です」
「ララさんはにゃんこ族なので猫の姿で乗ればいいのでは?」
ほーっと関心するララさんはやはり乗りたそうです。
数日後、店休日になり早速、魔導キックボードを買いに行きます。
「付いて行っていい?」
ララさんはにゃんこ族です。黒猫の姿でならいいですよと条件を付けると。
「はい……」
小さな返事を返してきます。さて、その理由ですが黒猫と、お出かけしたかったからです。ララさんを抱きしめてショップに向かいます。
『でーん』
おおお、魔導キックボードだ。
「ところで店主さん、この黒猫と一緒に乗りたいですがどうでしょう?」
「黒猫、ダメ、ダメ、安全第一」
しょんぼりする。ララさんに私は人型になるように言います。
「店主さん、この女性にも乗り方を教えて下さい」
ララさんの目に輝きが戻ります。
「乗っていいの?」
「はい」
私は快諾すると。
この世界の日常を感じます。
にゃんこ族それは猫であるが人の姿に変身することが出来る。その『にゃんこ族の小部屋』で起きる百合エビソード。 霜花 桔梗 @myosotis2
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