第127話
「私は見てるだけでいいから。潤だけやって」
ホテルを出る際はそう口にした。しかし、女性でも撃てるし、せっかくグアムに来たのだからと潤に説得されたので私もチャレンジすることにした。思いの外、女性の姿が多かったのには驚かされた。
仕切られた台の上には拳銃が三つ置いてあって、その十メートルくらい先に白い紙の的が見える。それを見て刑事ドラマのワンシーンを思い出した。ヘッドフォン型の耳栓を着け横に立つ潤の顔を覗き込む。
緊張よりもワクワクしてる感じが伝わって来る。銃は左側から撃つように指示された。口径が小さいからというのが理由らしい。弾はすでに充填済みとのことなので、レクチャーされたように構えて的を狙う。
周囲からパン!パン!という音が耳栓越しに聞こえ、それが合図のように私も引き金を引く。
パン!
先ほど耳にした音と共に手と身体に衝撃を感じる。
凄い!私本物の拳銃を撃ったんだ。驚きというよりもどちらかというと感動に近かった。見ているだけで良いなどと言った自分をすっかり忘れてしまっていた。弾はどこへ飛んで行ったのか的が揺れた気配はない。きっと外れたのだろう。
音も撃つ感覚もすぐに慣れた。慎重に狙って二発目を撃つ。そして三発目。充填済みの弾はあっと言う間に終わった。六発撃ち終わると遠くにあった的の紙が徐々に近付いて来て係の者がそれを交換してくれる。
外した紙を受け取るといくつか穴が開いているのがわかった。穴は四つ。ちゃんと当たっていたのだと私はそれを潤に見せた。
潤の的の穴は五つで、私よりも弾は中心に近い。ちょっと悔しくなった。
次に手にした銃は最初の銃よりも撃った時の手ごたえが大きかった。弾が違うのだろう。的の紙が少し揺れるのがわかる。一番凄かったのは最後に撃った銃で、一発一発が身体に衝撃を走らせた。私以外の的の紙も大きく揺れていて当たっているのが遠目からもわかる。
手前に来た紙を見ると貫通しているというよりも引き裂いたように穴が開いている。弾の違いでの威力を感じつつも、見栄えの悪さの方が私には気になってしまった。
「どうだった?」
ホテルの部屋に戻ってから的の紙を見ながら潤が尋ねて来る。まだ興奮冷めやらぬといった感じだ。
「最初はびっくりしちゃったけど、思ってた以上に楽しんじゃった」
そういう私の手にもまだ感触が残っている。これもまたいい思い出になると思った時、潤が私の隣に身体を寄せて来た。それから唇が塞がれる。何が起ころうとしているのか私はすぐに理解した。
―――「男の人のアレって鉄砲って感じよね。弾も出るし」
高校の同じクラスの子が大笑いしながら言っていた言葉を思い出す。その時は厭らしいことをいうのだと聞いていたけど、今は何となくその意味がわかる。潤も本物の銃に触れて触発されたに違いない。
瞬く間に着ているものを脱がされ、潤が生まれたままの姿で私に覆いかぶさって来る。潤自身のものを私自身が感じた時、いつもとは違う感覚が脳に伝わって来た。
所要時間は射撃よりも長かったが、気になる音も一切出さずに潤は私の上で身体を震わせていた。
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