第126話
五日目も自由行動で最終日となる今日は昼夜共にホテルでの食事は無い。この時期の日本では考えられない陽射しにだいぶ慣れては来たものの、ところによって肌はひりひりしている。これもいうなればグアムのお土産だろう。
ガイドブックを見ていた潤が行ってみたい店があるというので、開店時間に合わせるように私達はホテルを出た。
ホテル前に止まるタクシーを横目に『ホテル・ロード』と呼ばれる道を歩いていく。走ってる車は右側通行。これだけ見ても不思議な気分になる。徒歩で移動する人の姿は、日本の田舎を思わせるほどで稀に見かけても大抵は日本人だ。
グアム最大のショッピングセンター『GIBSON’S』に到着したのは十時を少し回った頃だった。アメリカの日常生活が溢れた店内は見ているだけで時間を忘れそうになる。特に日用品や台所用品は目にも新鮮でついつい手に取っては眺め、コーポで使う姿を想像したりもした。
「奥様、何かお気に召すものはございましたでしょうか?」
真剣に見ている私に潤がふざけて声を掛ける。
「日本で見かけないものばかりだから面白いっていうのか―――」
表示してある価格を頭でざっと計算し荷物にもならず使えそうなものを何点か選んだ。
潤も自分の土産にといくつかの商品を手にしている。その一つを掲げながら笑みを浮かべた。
「これは二種類あって奇麗な方が良いかなって選んだんだけど、見た目の悪い方に替えたよ」
持っていたのは自由の女神の形をした栓抜きだった。
「見た目の悪い方に?どうして?」
「だって、ここまで来てメイドインジャパン買ってもしょうがないだろ」潤が嬉しそうに栓抜きを見た。
ショッピングセンターの近くで食事を済ませてから一旦ホテルへと戻る。購入したものを置くと潤が部屋の電話を手にした。
「あ‥‥ハロー‥‥え~‥‥」
耳に英語が届いたからか潤の表情に緊張が灯る。しかし、それは数秒で消え去った。
「ではお願いします」
受話器を戻すと安堵の表情で息を吐き出す。ひとまずは話が着いたようで私達はエレベーターに乗ってロビー階へと向かった。外で待っているとものの数分で青色のバンがエントランスにやって来た。
『SHOOTING PLAZA』と派手な文字がバンの横に綴られている。潤が是非ともグアムでやりたいと言っていた実弾射撃が出来るところの車だ。電話一本で送迎するとガイドブックにも記されていた。
察したように私達の目の前で停止すると横のドアが開き中に居た男性から片言の日本語で名前を訊かれる。そうだと答えてから射撃場に着くまでは五分と掛からず、まるで一分一秒を争うかのようで忙しない。
到着したお店は射撃場と言うよりも雑貨販売店を連想させる外観で怪しいという雰囲気は微塵もなかった。案内された店内には多くの日本人が居る。けっこう人気のスポットらしい。
受付を済ませてからお店の人に説明を受けた。すべて日本語だ。
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