第122話

「修学旅行とまでは言わないけど、さすがにちょっと疲れたな」


 ベッドに横になって潤が息を吐き出した。


「特にツアー初日は予定が多いから。ご飯でも食べてあとはのんびりしましょ!」



 夜はポリネシアンショーを見ながらの夕食だった。これもまた南の島といった雰囲気を満喫することが出来る。疲れたと言いながらも潤と私はショーに歓声を上げたりして二日目の夜を楽しんだ。


 実際はグアムに来てから初めての夜だが、日本を夜のうちに出発しているため、ツアーでは今日が二日目ということになる。シャワーを浴びてベッドに横になると大きな息が自然と漏れた。これは日本でもグアムでも同様。ホッとした時に無意識に出る安らぎだろう。


「疲れたでしょ?」


「慣れない場所だから余計に疲れるのかもしれないな。さすがにもう何もないんだろ?」


 すぐには答えずに潤の方を見ていた。


「何かあるのか?」

「ううん。何も‥‥‥ないわ」


 私の言い方に何か感じ取ったらしい。一度鼻で笑ってから潤が口を開いた。


「別のお楽しみは明日ってことにしよう」


 起き上がってから私にそっとキスをする。心地よい眠りに就ける魔法のキスでもあった。




 グアム三日目は『ココス島』への観光である。


 『ココス島』はグアムの南西端にあるメリッソ村の沖合いに浮かぶ島で、メリッソ港からはボートで約十分程だ。送迎用のバスが一日二回ほど迎えに来てくれるらしく、私達は朝をゆっくりと過ごしたいことから二便目に乗ることにした。


 二便目がホテルに来るのは十時。少し時間に余裕が出来たため、海岸を見に行くことにした。白い砂にたどり着くまではものの数分。ホテルの目の前がビーチなのだからすぐだ。


「ガイドブックの写真と一緒で本当に真っ白なんだな」


 砂浜に目を向けてから潤は腰を下ろして砂を手に取った。サラサラと乾いた砂が手から零れ落ちる。そして、私に向けてカメラを構えた。ちょっとお道化たポーズを取ると潤がシャッターを切ってから満足そうに笑う。遥か先には昨日行った『恋人岬』が見えている。それをバックにまたシャッターを切った。


「なんでこんなに白いのか知ってる?」


 割と有名な話だが、もしかするとこれは旅行会社だけの話かもしれないと潤に尋ねてみた。


「ああ。来る前に会社の奴に言われたよ。そいつもグアムに来たことがあるんだって」


 あとで教えて驚かせようという密かな目論みは一瞬で終わってしまった。



 迎えに来たバスに乗り、それから専用ボートに揺られる。伸ばせば届く距離の海は透明度も高くとにかくどっちを向いても奇麗としか言えない。潮風を受けながら乗船した時間はガイドブックにある通り。シュノーケリングやジェットスキーなどマリンスポーツを楽しめる場所でもあるのだが、潤も私もそっちの方には興味を示さず、島内を見て回るだけにした。


 海はもちろんのこと、南の島ならではの高いヤシの木が生えていたりして、見ているだけでも楽しい。潤が少しだけ折れ曲がったヤシの木によじ登り、私がそれをカメラに収めた。

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